12シトライアル第二章 アンカー番号12番part23
第四十一話 連休中の連日登校 二日目後編
一方その頃、校門前。
「由香里先輩、遅いね。」
「にしても、何が悲しくてあんたと2人でいなきゃいけないのよ!」
「そこは今は我慢して。由香里先輩が戻ってくるまでの辛抱だから。」
「まあでも、たしかに遅いわ。連絡してみる?」
「そうしたいのは山々なんだけど、由香里先輩、スマホ鞄ごとここにあるから…」
「じゃあ待つしかないのね…」
大した喧嘩もなく二人が会話できている。すごい進歩である。
一方その頃体育倉庫。
「その…ゴメンね、とーる。あたしがちょっとヘマしちゃったから…」
「らしくもないぞ、お前がしおらしいのは。」
「だってこれはあたしが悪いし…」
こうもしおらしいと調子狂うな…どうしたものか。
「由香里、スマホ持ってないか?」
「ゴメン、鞄ごと心愛ちゃんに預けちゃった…とーるは?」
「すまん、俺も教室に置きっぱなしだ…」
「どうしようもないね…」
この空気、どうすればいいんだろうか。ん?
「由香里!肘、血出てるけど大丈夫か?!」
「あー、こんなの擦り傷だよ!さっきぶつけた時かな…」
「そこから菌が入ったりして病気になったりするんだぞ!これ、使っていいからとりあえず拭き取れ。」
「なんでスマホは持ってないのにウェットティッシュは持ってるの…?」
そこは、気にしないでほしかった…
閑話休題。
「いやー、ありがとね、とーる!」
「気にすんな、こういう時はお互い様だろ?」
「まあ、あたしまだ何もリターンできてないんだけどね…」
言いつつ由香里が力なく笑う。
「ねえ、あたしたち、いつまでここにいるんだろう…もしかしたらずっと…」
「縁起でもないこと言わないでくれ…」
「でも!誰もあたしたちの存在に気づかなかったら!」
「とりあえず落ち着け。今はとにかく待つんだ。」
だが、ない話かと言われると否定しきれない。あってはいけないが。この倉庫、結構壁厚いから中の音、あまり外に聞こえないんだよな…
「ホントに、ゴメンね…」
「だから気にすんなって…」
「そうじゃなくて!いつも…あたしいつも、とーるにウザい絡み方してるからさ…ついでって言っちゃアレだけど、謝りたくて…」
「ああ…まあ、たしかに普段のお前の絡みははっきり言って超めんどくさい!」
「あはは…そうだよね…」
「だが、いつものお前の方が、今のお前より、よっぽどお前らしい。そんなにしおらしいと、俺も調子狂うんだよ…」
「じゃあ、とーるはさ…あたしがなんで、普段あんな絡み方すると思う?」
「お前の本当の人格の現れ。」
「あたしのことなんだと思ってるの?!」
「閑話休題。」
「それでなかったことにしようとしないで?」
「で、実際のところ、どうなんだ?お前があんな絡み方するのって俺に対してだけだよな。何か、特殊な理由があるんじゃないか?」
「お見通しかー…それじゃあ、はっきり言うね。」
嫌な予感がした。多分俺は無自覚のうちにコイツに何かしでかしたんだろう。そしてその仕返しとしての、いつものあの態度なのだろう。俺の脳内で、演算した結果、俺は全力で謝る準備を整えた。
「あたし…実は…とーるが…」
そこまで言った時、ガチャン!と音がした。そして、
「由香里先輩!徹先輩!大丈夫ですか?!」
「心配しました…よ…?」
下北と金本が現れた。
「どうしてここがわかったの?」
「先輩たちの匂いを辿って来ました!」
「下北…お前は犬か何かか…!」
「実際には、センパイたちが準備のために倉庫に行ってるのは知ってたので、何かあったとしたら倉庫だろうと思って来たんです。」
下北がボケて、金本が訂正する珍しい瞬間だった。
「あれ?由香里先輩、なんか、顔紅くないですか?」
「?!べ…別に、そんなことないよ!早く帰ろ!」
そう言って由香里は後輩2人を連れて、足速に去っていった。
「ちょっ!由香里!跳び箱まだ一個運び終わってないぞ!待てって!」
こうして俺は、残った跳び箱一個を台車で運んでこの日のタスクは終わった。にしても俺、そろそろ本格的にお祓い行った方がいいかもな…
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