12シトライアル第二章 アンカー番号12番part32
第五十話 アンカー番号12番 開戦
「下北、ナイスラン!お疲れさん!」
「ありがとうございます!徹先輩も頑張ってくださいね!!あとはお願いします!」
「ああ、言われずとも全力で行くよ。」
下北がいい走りを見せてくれたお陰で、金本のアクシデントがあったにも関わらず我々黒組は現在二位につけている。残り5人でなんとか白組を抜かして差をキープして勝ちたいところだ。
そうこうしているうちに、十走がもう走り終わろうとしている。残るのは我々黒組だと、十一走の信岡朋美とアンカーの俺、岸徹の二人である。正直俺たち二人のバトンパスが黒組で一番の不安因子であるのは言うまでもないだろう。そんなことを考えていた折、白組がバトンパスを行い、その新たなランナーは我らが図書委員長、大城流唯先輩だった。フィジカルお化けの真凜の先輩ということで、この人も漏れなくフィジカルお化け。白組のバトンパスの直後、我々黒組も信岡がバトンを受け取ったが、みるみる突き放されていく。うちのクラスの女子で最速の信岡でもこのザマになってしまうのか…恐るべし大城流唯…
それだけならよかったのだが、十一走にもなると、各組の最高レベルの俊足が集っているため、信岡のリードもどんどん狭まっていく。ホントになぜうちの組は籤引きで番号を決めたのだろうか。そして遂には大城先輩を除く3人が綺麗にまとまった二位集団となった。抜かされるのだけは意地でも避けたいのか、その後は3人が並走していた。流石の大城先輩も先ほどの騎馬戦の疲れが残っているのだろうか、少しずつだが、二位集団との差が縮まっていく。そしてバトンパスエリア直前、四者の差がほぼない状態になったが、
「キャーッ!!」
そんな悲鳴を上げながら信岡ともう一人ランナーが転んでしまった。どうやら信岡と紅組のランナーの足が引っかかってしまい、共倒れになつてしまったようだ。まさか1レース中に2回もアクシデントに襲われるとは…しかしその間に白組、蒼組はアンカーへとバトンが渡る。こうしちゃいられない!
「信岡!!立て!!バトンを俺に!!」
声をかけたことでこちらを向いた信岡は珍しくしょげているような表情をしていた。普段あんなにも強く当たられている分とんでもない違和感ではあるが、そんなことを思っている暇はない!
「信岡!あとは俺に任せろ!!早く!!」
とにかく声をかけまくった。すると、
「わかったわ!でも、その代わり、負けたら承知しないんだから!!」
そう言いつつ信岡は勢いよく立ち上がり、俺にバトンを差し出してきた。結局憎まれ口か。まあでもその方がよっぽどコイツらしい。それに、バトンの渡し方に棘がない。コイツなりのあとはよろしくという合図だろうか。初めて俺たちのバトンパスが上手くいった。だがそんなの関係ない。俺にはどうしても負けられない理由がある。リレー前のことだ…
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「徹くん、ちょっと…いいですか?」
俺は真凜に呼び止められた。
「なんだ?そんなに緊張した面持ちで…」
「徹くんって、今回アンカーですよね?」
「まあ、そうだけど…」
「実は私もなんです!」
「なるほど、いい勝負しようぜ、真凜!」
「あの…そうじゃなくて…」
何やらまだ真凜が何か言いたげだった。すると意を決したのか、思いっきり俺に言ってきた。
「岸徹くん!!私と賭けをしましょう!」
またそんなことか…コイツ壮絶な駆ケグルイ且つ賭ケグルイだったな…
「で、今回は何を賭けるんだ?」
「今は言えません!でも、もし私が徹くんに勝ったら、私のお願い、一つ聞いてもらいます!」
「つまり、この間の陸上競技場で引き分けだった勝負の決着戦ってことか…」
「そうです!!いいですか?」
そういうことなら、こちらは…
「断る理由はない!その勝負受けて立つ!ただし、俺にも言いたいことはあるからな、俺が勝った場合は俺の言うこと一つ聞いてもらう!」
「お!遂に徹くんも本当に…」
「賭け好きになったわけじゃないぞ?」
「まあ、別にいいんですけど…とりあえず!アンカーでのレース、楽しみにしてますね!」
「改めて、いい勝負しような!」
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そんな約束をした以上、こちらにも意地というものがある。今の差なんて関係ない。ここから捲って必ず真凜も抜かす…!
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