見出し画像

12シトライアル第五章       狂瀾怒濤の9日間part26

第百五十三話 スイパラ談合女子会
 どうも、みなさん。私、岩井杏奈いわいあんなです。今日は私の目線でお送りします。今日は元々、お姉ちゃんのクラスメイトの朋美ともみさんと図書館とスイパラに行く予定でした。そして図書館に着くと、夏休みということもあって、お勉強されてる学生さんがたくさんいて混んでいました。私たちは席を求めて彷徨っていたんですが、そこに救世主、そう、同じくお姉ちゃんのクラスメイトのとおるさんがいたんです。従妹の歩実あゆみさんの付き添いがてら勉強に来ていたようですが、自身は世界史の勉強をしながら、歩実さんに実験の補足などをしていて、文系の徹さんの恐るべき理系力に感服しました!その後、3時頃でしょうか。歩実さんのレポート課題も終わったので、朋美さんと行く予定だったスイパラに歩実さんも交えて行くことになりました。徹さんも来れればよかったのに…

 そして現在。
「それじゃあ二人とも、今日はお疲れ様!」
「「「乾杯!!」」」
私はアイスティー、朋美さんはオレンジジュース、歩実さんはカフェオレをそれぞれ手にしてグラスを合わせる。それにしても、こういう時に選ぶものって、少なからず性格とか癖とか出ますよね。私は紅茶が好きだし、食べるのもケーキとかよりはプリンとかクッキーみたいなライトなものが好き。朋美さんはジュースもそうだけど、フルーツタルトとかゼリーとか、とにかくフルーツが好きそう。歩実さんは…わからない。
「歩実さんってコーヒー飲むんですか?」
「え?ああ、わたしはお兄と違ってブラックは飲めないけど、ミルクとか砂糖入れたりしたやつとか、ラテとかなら全然飲めるんだ。まあ、コーヒー飲むようになったのはお兄の影響だけどね!あと、取ってるスイーツもよくお兄がコーヒー飲む時に食べてるようなやつだし。」
なるほど、歩実さんは徹さんの影響をすごく受けてるんだ…歩実さんにとって徹さんは、大好きなお兄さんなんですね。

「そういえば、杏奈ちゃんは委員長の影響何か受けてないの?歩実ちゃんが兄貴分のきしから影響受けてるみたいに。」
私たちの会話を受けて、朋美さんが尋ねてきた。私がお姉ちゃんから、か…何かあるかな…あ、強いて言うなら…
「味覚とかはそんなに影響受けてないですけど、ちゃんと準備を欠かさないようにすることはお姉ちゃんから学びました。」
「準備?」
「お姉ちゃん、前うちで籤引き作ってたんです。なんで作ってるのか訊いたら、『学校ですぐ席替えあるだろうし、そこで使えるじゃん?』って言ってて。後で徹さんから聞いたんですけど、『見計らったかのようにベストタイミングでアイツが籤引き用意してたから驚いた』って。そういうところはちゃんと見習いくて!」
そう、私のお姉ちゃんは普段抜けているように見せているけど、本当は誰よりも頭の回転が速くて、周りのことをよく見れている。そんな人だと私は思っているし、そんな人だから姉を尊敬しているんです。

「あと、また別のことですし、お姉ちゃんだけから影響されたわけじゃないんですけど、進路についても結構影響受けてるんです。」
「進路?じゃあ、東帆とうはん受けるの?」
「はい、そのつもりです!お姉ちゃんが通ってるのもありますし、同じ塾でよく私と話してくれる徹さんも東帆ですし。進路に関してはお姉ちゃんにも徹さんにも影響されてる感じです!」
「それわたしも!」
私が一通り話すと、歩実さんが乗っかってきた。
「わたしもお兄が東帆だから同じとこ通いたくて、必死に勉強して入ったんだ!」
「ほんとに歩実ちゃん、お兄ちゃん大好きっ子よね。」
「まあ、自他共に認めるブラコンですから!」
果たしてそれは自分で言うことなんでしょうか…

 その後も美味しいスイーツを食べつつ会話が弾んで、気がつくともう1時間が経過してしまっていた。あと1時間…
「あーっ!冷たっ!でも美味しい!」
メロンシャーベットを楽しむ朋美さん。
「ほんとにここ美味しいですよね!羊羹も美味しいですよ!」
先程までとは打って変わり、歩実さんは和のスイーツとほうじ茶に舌鼓を打っている。
「朋美さん、よくこんないいお店ご存じでしたね。」
本日何枚目かもわからないクッキーを食べつつ私は言う。
「まあ、昔はママに連れてきてもらってたからね。たまにだけど。」
それでこんなに詳しいのか…
「二人はどこかおすすめのお店とかないのかしら?」
逆に朋美さんに尋ねられた。おすすめの店…一つあるけど、お二人とも行ったことある場所だしな…などと思っていたら、
「喫茶うなばらとかすごくいいですよ!」
先に歩実さんが答えた。歩実さん、それです!私が言おうとして止まってたやつ!
「喫茶うなばらって、たしか岸たちの大会の後にみんなで集まった店だから…」
「はい!お兄とか真凜まりん先輩が働いてるお店です!」
「そこはあたしも多少はわかるけど…」
だってみんなで集まってますもんね。

「でも朋美先輩、あの時はマスターと真凜先輩…あとちょっと手伝いに駆り出されたお兄が出してくれたパーティー用のメニューでしたけど、普段のモーニングとかランチ、ティータイム、ディナーのメニューは食べたことないでしょう?」
「まああの時以外行ったことないもの。」
「わたし、前紗希さきちゃんとあそこでご飯食べたんですけど、洋食だけじゃなくて、紗希ちゃんが食べたかった和のメニューも急遽出してくれて、めちゃくちゃ美味しかったんです!」
私は思った。そして、おそらく朋美さんも思っているんじゃないかな。喫茶店、とは…?
「それに店の雰囲気も落ち着いててすごくわたしは好きです!」
歩実さんが一通り熱烈な説明を終えたところで、
「実は私も同じ店を挙げようとしてまして…」
便乗させていただきました。
「私、初めて行った時は徹さんが働いてる店だと知らなくて。私もお姉ちゃんも店の雰囲気がいいなって思って。で、ひょんなことから徹さんの職場だって知って、後日行ったらオムライスをいただいたんです。徹さんは練習中だって言ってましたけど、すごく美味しかったんです!あとこの前も…」
「歩実ちゃんも杏奈ちゃんも熱烈にプレゼンしすぎじゃない?」
朋美さんに指摘された。けれど、私は留まることを知らなかった。
「ティータイムに行って、お姉ちゃんはパフェ、私はプリンを食べたんですけど、それもまた美味しかったです!」
とりあえず言いたいことは一通り言えました。結果、多分歩実さんよりも熱烈になっちゃってましたね。

「なるほどね…あたしも今度気が向いたら行ってみるわ。」
「ぜひぜひ!」
「というか、朋美先輩、杏奈ちゃん、せっかくだし次この面々でどこか食べに行く時はうなばらにしちゃいません?」
歩実さんの提案。
「私は賛成です!」
こんなの反対する理由がどこにもないので!
「じゃあ、あたしも乗るわ。一人じゃ喫茶店ってちょっと行きづらいし、知り合いが働いてるところは尚更だけど、みんなで行くんだったらちょうどいい大義名分になるわ。歩実ちゃん、提案ありがとね。」
ということで、私たちの第二回お茶会は早くも決まり、やがて制限時間の2時間が終了した。
「本当に美味しかったですね!」
「このお店、気に入ってもらえてよかったわ!」
「次回は一旦うなばらですけど、また別の機会にはまたここ来ましょう!」
「「賛成!!」」
こうして私たちの楽しい女子会は幕を下ろした。

 帰宅後。
「ただいま!」
「あ、杏奈おかえりー!」
お姉ちゃんが出迎えてくれた。
「あのね!今日朋美さんと図書館勉強しに行ったら、徹さんと歩実さんに会ってね!」
「へー!てっちゃんも図書館で勉強とかするんだね!」
お姉ちゃんは徹さんを何だと思っているんだろう…図書館で勉強なんて、学生なら一度は経験するんじゃないかな…
「で、徹さんが歩実さんに実験のレポートのあれこれを教えてて、なんかお姉ちゃんがまだ中学生の頃に、いっぱい色々教えてもらったこと思い出したよ!」
「そんな時期もあったねー…」
「そういえば最近はあまり教えてくれなくなったよね。どうして?」
高校生になって以来、お姉ちゃんから教わることはほとんどなくなってしまった。そこで私は素直に訊いてみた。すると、
「わたしは…逃げたから。」
お姉ちゃんからは想像できない暗い声でそう返された。そして、
「さ!そんなことはどうでもいいし、ご飯にしよ!」
さっきの一言がなかったかのように、いつも通りのお姉ちゃんが告げた。なんだったんだろう…私は疑問に思いながら、食事の準備に取り掛かった。尤も、スイパラから帰って1時間、まだお腹も空いていないんですけどね。

狂瀾怒濤の5日目fin.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?