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12シトライアル第四章       勝負のX-DAYpart35

第百十九話 最速リベンジマッチ
 大会2日目。今日は午前中にシングルスの上位戦と俺が出る17位決定トーナメント、そして午後にダブルスとミックスがある。午前と午後で綺麗に分かれているおかげで、午後の部の前にそれぞれダブルスとミックスの練習時間がとれることになっている。そのため、朝のアップの時間はシングルスに残っているメンバーだけがアリーナで練習する権利を持っていた。ともなると俺の練習パートナーはもちろん、昨日俺に勝って県大会出場を決めた、部長の桜森さくらもり先輩である。我々東帆とうはん高校に割り振られている台は一台だけなので、女子で残っている由香里ゆかり春田はるた先輩の二人と交代で台を使っている。

女子二人と交代して、休憩中、
とおる、頑張って県大会残ってくれよ。一緒にいこう。」
桜森先輩に話しかけられた。
「大丈夫。意地でもいきますよ。そうじゃないと、先輩も少し責任感じちゃうでしょう?」
「よくわかってるね。」
「伊達に一年半一緒にやってきたわけじゃないですから。」
「そうだね。あっ、そういえば腕大丈夫?」
先輩が俺の包帯を巻いた右腕を指して尋ねた。
「なんかあったらヤバいかなってことで固定する目的と万が一またぶつけたときの緩衝材代わりとして巻いてるだけだし大丈夫です!痛みはそんなないですよ。一応痛み止めも持ってますけど。」
「それは大丈夫って言うのかな?」
正直、俺にもわかりません!

 閑話休題。30分後、アップを終えた俺たち4人は、昨日のように一度観覧席に戻った。するとやはり応援に駆けつける人はいるもので…
「お兄!宣言通り来ました!!」
「お疲れ様、とーくん。」
「まだ何も始まってないけどな。」
昨日言われた通り、従妹の歩実あゆみと幼馴染の紗希さきが来ていた。だけではなかった。
「由香里ー!来たよー!!」
「ご一緒に失礼するわね!」
「僭越ながら私もお邪魔してますー。」
由香里の親友である真凜まりんとその先輩の大城おおしろ先輩、そしておそらくそんな大城先輩に連れてこられたのであろう図書委員の田辺たなべさんが3人で来ていた。

「みんな来てくれてありがとう!!」
由香里が謝辞を述べると、
「正直みんなきしくんとも由香里ちゃんとも親交はあるからね。二人がタッグを組むって由香里ちゃんから聞いちゃったら、来ないわけにはいかないじゃない?」
「私もそう思います!ってことで徹くんも由香里も頑張ってね!」
「岸さん!全力で応援させてください!」
由香里だけでなく俺にもコメントをくれた。
「おい、岸…お前昨日の面々だけには飽き足らずこんなにも女子を侍らせて…」
「だからその言い方はやめろ、ホントに…」
ホントに誰かコイツどうにかしてくれないかな?

 閑話休題。
「あ!流唯るいちゃん!来てくれたんだ!」
突然はしゃぐ声が聞こえて振り向くと、春田先輩が大城先輩の方に駆け寄っていた。
莉桜りおちゃん、それと桜森くんもお疲れ様!今日は二人もタッグを組むんでしょ?楽しみ!」
どうやら部長コンビと大城先輩は友人同士のようだ。
「あと、大城さんも知ってると思うけど、あの二人もミックスで出るから、もしかしたら決勝であたるかもしれない。」
「それも楽しみにしててよ!」
やはり部長の二人は俺と由香里のミックスとの対戦をご希望のようだ。頑張らねば…!

「あ!歩実ちゃんと紗希ちゃんも来てたんだ!」
「まあ、お兄の試合なので!真凜先輩こそ来てたんですね!」
「由香里に誘われてたし、徹くんと由香里のペアの試合観たかったから!早苗さなえちゃんも、元々は流唯先輩に勝手に連れてこられただけだけど、今日徹くんが出るって聞いた瞬間にスイッチ入ってたよね!」
「ちょっ!羽田はねださん?!それ言わないでくださいよ!恥ずかしいです…」
外野はとても楽しそうに話している。みんな意外と関わりあるもんなんだな。世間は狭い。
「ていうか、真凜と田辺さんって関わりあったんだな。」
とりわけこの二人の組み合わせは初めて見たので尋ねてみた。
「まあお互いの共通の先輩が流唯先輩だからね!早苗ちゃんとは今日が初対面だけど!」
真凜のコミュ力の高さには非常に脱帽だ。

 さてさて、そんな和気藹々とした一幕があったのはさておき、続々と試合のコールが始まっている。まず男子のベスト8決定戦、そして女子の準々決勝がコールされる。
「じゃあとーる!あたし行ってくる!とーるも頑張ってね!絶対県大会の枠獲ってね!」
相棒からのエールを受け、俺も準備を始める。
れいちゃんと心愛ここあちゃん!あたしの審判とアドバイザーお願い!好きな方の仕事でいいから!」
俺と割と交流のあった後輩二人は由香里についていくようだ。そうしたら俺の審判とアドバイザーはどうしようか…はやしは心許ないし。

もり!とりあえず審判頼めるか?」
一旦同級生の森に依頼したところ、快く受諾してくれた。流石はあの林を手に取るように扱える男だと感じた。しかしアドバイザーは…と思っていたところ、
「徹!!俺にアドバイザー入らせてよ!」
そう声を掛けてくれたのは団体メンバーの先輩の一人である岡林おかばやし先輩だった。
「いいんですか?上位トーナメントに行ってる桜森先輩の応援した方がいいんじゃ?」
と言うと、
「たしかにあいつの応援もしたいけどさ、徹だってまだ県大会の可能性がある。それに団体戦で徹には散々世話になったから。その恩返しだと思ってほしいかな。」
なんて最高の先輩をもったんだろう。
「じゃあ、お願いしてもいいですか?」
「もちろん!行こう!!」
「はい!!」
ということで、俺は岡林先輩と森と共にアリーナに向かった。

 17位決定トーナメント、一回戦は危なげなく勝つことができた。やはり先輩がアドバイザーについてくれているというのは圧倒的な安心感がある。トーナメント一回戦のみ相互審判なので、審判に入ってくれた森は試合後、
「岸、絶対県大の枠獲れよ!上で応援してる!」
とエールを残して観覧席へと帰っていった。やっぱり林より森の方が次期部長には適任かな。
「徹!今の試合めっちゃよかった!このままあと3試合勝とうぜ!」
「はい!!」
そして時を同じくして、桜森先輩も準々決勝進出を決めたらしい。一方女子は、春田先輩は準決勝進出らしいが、俺の相方の由香里は陽楼ようろう高校の三年生エースに当たって散ってしまったようだ。相方の分まで頑張ろう。

 そしてその誓いの通り、17位決定トーナメントの準々決勝、準決勝は快勝でき、無事ファイナルまで進むことができた。
「徹ー!流石だよ!ここまで勝ち上がってくるなんて!あと一戦勝てよ!」
「ありがとうございます。先輩は今どんな状況です?まだ勝ってますか?」
「いや、ごめん。準決勝で負けちゃったよ。莉桜も準決勝敗退だから、なんやかんや東帆で最後まで残ってるのは徹だよ。」
「敗者復活ですけどね。」
あとは俺だけか。ホントにここは何が何でも勝たなくちゃな。

「それでは、男子17位決定戦のコールです。東帆高校岸くん、陽楼高校楊原やなぎはらくん。10コートで試合です。」
…マジか!ここで団体戦の因縁の相手と当たるとは…史上最速のリベンジマッチだ。必ず団体の借りはここで返す!!

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