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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part33

第五十一話 アンカー番号12番 決着
 (とおるくん、スタートの時点でだいぶ差がついちゃってるけど…いやダメダメ!余計なこと考えない!今はレースに集中しなきゃ…!)
まずいな、信岡しのおかとのバトンパスが上手くいったとは言っても、流石にこの差でスタートなんてな…いくら走りを強化してきたとは言っても…ダメだ!弱気になるな、俺!最後まで喰らい付いてやる!初っ端から全開で行く!!ということで俺はまずは紅組のアンカーを突き放し、蒼組アンカーを猛追中、いや、今抜かした。あとは真凜まりんだけ…!

(徹くん、さらに速くなってる?!本当に追いつかれちゃうんじゃ…そうはさせない!)
しかし真凜もスピードを上げて、最終コーナーに差し掛かろうとしていた。これはいよいよまずいかもしれない…すると、
きしー!!あんた言ったじゃない!!任せろって!!じゃあ最後まで全力で喰らい付いて行きなさいよー!!勝ちなさい!!岸!!」
信岡がげきを飛ばし返してきた。それを皮切りに、
「徹せんぱーーーい!!最後までファイトです!」
下北しもきたも大声で応援をくれた。そして応援席からは
「てっちゃーーーん!まだまだいけるよー!」
「岸くん!!君はもっと強いはずだろ!僕らリレーに出れなかった人間の分まで頑張れ!」
芹奈せりなやライバルで親友の河本こうもとも応援してくれている。こりゃ、やんなきゃだな!この瞬間、俺はスパートをかけ始めて、なんとか真凜のすぐ後ろまで来ることができた。

(え?速っ!応援で速くなるとか徹くん、めちゃくちゃ主人公体質じゃん!でも、絶対負けたくない!勝たせてもらいます、徹くん!)
コーナーを曲がりきる直前、真凜がスピードを上げようとした。そのお陰でインコースにスペースができた。抜かすなら今しかない!!そう思って俺はインコースに踏み込んだ。
(しまった!まずい!でも負けられない!)
そして俺たちは激しいデッドヒートを繰り広げ、結果…

 パァン!とゴールを知らせる銃声が鳴り響いた。
「「どっち?!」」
最後は審判の判定に委ねられた。場内全員が固唾を飲んでその判定を待っている。そして審判は口を開いた。
「第一位…白組!!」
この瞬間、白組は大歓声を上げ、黒組一同は大いに悔しがった。決まってしまった…負けた…あと少しだったというのに…!まさか体育祭でこんなに悔しいと思うなんて…しかし悔しがるだけじゃダメだ。
「よかったな、真凜、おめでとう。俺の負けだよ。ほら、お前の望み、何でも言ってくれ…」
ちゃんと勝者は讃えないと…それに、俺は負けたんだ、約束は守らないとな…しかし、真凜は浮かない表情をして俯いていた。

 俺は一度自陣に戻った。そして、
「みんな、申し訳ない!!あんだけ任せろって言っておいて、俺はホントに口だけ野郎だ!」
しかし、みんなからは盛大な拍手を送られた。
「惜しかった…でもらナイスラン、徹…」
「センパイ、ホントにあたしが無理して出てなんていなければ…」
「怪我ばかりはしょうがない。自分をそう責めようとすんな、よく頑張ったよ、金本も。」
「自分を責めるなってどの口が言ってるんですか?」
ぐうの音も出なかった。
「徹先輩!本当にお疲れ様です!すごく最後までドキドキのレースでしたよ!」
「てっちゃん惜しかったね!いやー、流石てっちゃんだよー!」
「岸くん!最高のレースをありがとう!やはり君ほどの男はそうそういないよ!」
みんなからの言葉がこんなにも嬉しいと感じることはなかった。

「その…岸。今回ばかりは本当にごめん…それに…その…ありがとう…」
「なんでそんなにしおらしくしてんだ。調子狂うだろ。寧ろいつも通りでいろよ。」
「だって、あたしが転んでなければ…」
「逆だ。たしかにお前の転倒がなければ一位獲れてたかもしれない。だがな!あれがなければ、こんなに白熱したレースで場内が湧くこともなかったかもしれない。その点お前もMVPなんじゃないか?」
「ったく!何よ、それ…」
なんやかんやあったが、平和に終われてよかった。こうして、体育祭全体としては、黒組は準優勝という結果に終わり、白組が優勝だった。まあ、ビリになって大黒星がつかなかったのはよかった。黒組だけども!

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