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12シトライアル第一章       13日の金曜日part14

第14話 犬猿の仲
 下北しもきたによる怒涛の多球練をなんとか耐え切った俺の方に下北は近づいてきて、目を輝かせながら言った。
とおる先輩!流石ですね!私の球出しに初見で喰らいついてくる人なんて初めてです!!いつもみんな大体途中でダウンしちゃうんですよー。なんでですかねー?次は先輩が出してください。全力で取りに行きます!!」

ホントに練習になると馬鹿みたいに熱心になるんだな、この子は。あと、なんか心なしか練習前より距離感が近いような…まあいいか。そして俺が下北に球出しを始めようとすると、

「センパイ方、お疲れ様でーす!」
元気よく金本かねもとが入ってきた。かと思えば、
「げっ、なんで心愛ここあがここにいるのよ?!」
下北に苦手意識でもあるのか。考えていると
れいこそ、どうしてここに?」
あっ、これコイツらお互い嫌いあってるやつだ。なんか二人の目線がぶつかり合ってヒバナが散っているように見える。これこそまさに、犬猿の仲ってやつか。

「アタシはこの卓球部の部員だからなんですけど?!」
「私だってここの新入部員。」
「んー…君たち、知り合い?」
重い空気に耐えかねた俺はついそんなアホな質問をかましてしまった。
「知り合いも何も…」
「同中の卓球部同士です。」
「あー、えっと、どうしてそんなにギスギスしてるのかなー??」
コイツも耐えられなくなったか…人と関係を築きやすい由香里ゆかりでさえもこのざまだ。

「単純に、私たち、反りが合わないんです。価値観が違いすぎて。」
「あんたばっかりすぐ強くなっちゃうからじゃない!!」
「玲よりも私の方が努力してるだけ。あなたは上級者用の高い用具使えば自動的に自分も強くなると思ってる節がある。」
「んー、強いやつに対する嫉妬心も努力家の気持ちもわかるが、とりあえず二人の関係がギクシャクしてるってことはよくわかった。ただせっかく今は部活してるんだ。練習しようぜ。金本も今の用具に見合う実力になるように、下北はそんな金本にも負けないような心意気でな。」
「そうだよ!!練習しないと結局何も進まないからね!」
こうして俺たちの新体制での部活は始まったのだった。先が思いやられるな。

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