12シトライアル第一章 13日の金曜日part13
第13話 パッション的新入生
「とーる、お疲れー!」
ある日部活に行くと、由香里が何やら嬉しそうな顔で声をかけてきた。
「お、おう、お疲れ。」
不審に思いながらもそう返すと、
「今日は!とーるに!なんと!紹介したい人がいまーす!」
見ると、由香里の後ろに何やら人影がある。
「心愛ちゃん、出ておいで!」
すると由香里の後ろからひょっこりと一年生と思しき女子が出てきた。
「下北心愛っていいます。これからよろしくお願いします!!」
どうやら新入部員のようだ。新入部員が入ってくれるのは素直に嬉しい。
「こっちは岸徹っていうんだ!とーるは面倒見いいからきっと色々教えてくれるよ!心配要らないよ!あっ、もちろんあたしも心愛ちゃん含めみんなの面倒ちゃんと見るから安心して!」
「はい!!由香里先輩!徹先輩!これからよろしくお願いします!!」
「よろしく!」「よろしくな!」
こうして俺たちの後輩がまた一人増えた。因みに心配させたくないので言っておくが、決してこの部活は俺たち3人とこの間入ってきた金本だけではない。ちゃんとその他、言い方は悪いが有象無象の部員たちがいるし、部長だってまだ俺の一個上の先輩がやっている。
「早速練習しましょう!由香里先輩!多球練やりましょうよ!!」
「おっけー!やろっか!」
まともな子が入ってきてくれたことで心底安堵していたのだが、やはり何かは起こるもので…
「はいっ!はいっ!!はいっ!!!もっと速くです!!まだまだいけますよ!!先輩!!」
「心愛ちゃん、はあ、はあ、あたし、もう、無理、かも…」
「こんな程度でギブアップしてたら勝てる試合も勝てませんよ、由香里先輩?ですよね?徹先輩?」
めちゃくちゃ熱い子だった。面倒を見てあげると言っていた先輩の方が、思いきり扱かれていた。いや、部活としてはありがたい限りだけども!!
「徹先輩もやりますよ!早く入ってください!」
「わかった、すぐ入る。」
「とーる、心愛ちゃんの球出し、コースも、スピードも、半端ないよ…気をつけて…」
「大丈夫だ。」
「先輩、行きますよ!」
「よし、こい!」
こうして俺の多球練が始まった。たしかに、コースもスピードも質と精度ともに高いな。すごいな、何だ、コイツは…
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