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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part4

第二十二話 無限地獄への誘い
 翌日。約束の日曜日。今日はこの陸上競技場で真凜まりんと走りの練習だ。そしてなぜか幼馴染の紗希さきがついてきた。…ホントになんで?にしても、
「ふぅー!ギリギリ間に合いましたね!」
コイツ、ホントに時間ギリギリにしか来れないのか!この前の喫茶店の一件といい今回といいギリギリに到着って…しかも今回に至っては前回の比じゃない。時間の30秒前だ。

「もうちょっと時間に余裕を持って来れないのか、お前は?」
「すみません、待たせちゃって!でも私、こういうギリギリの勝負というか、」
「一か八かの賭けが好きなんだろ。」
「私のこと、とおるくんはよくわかってくれてるんですね!嬉しいです!!」
これでももう半年近い付き合いだ。なんとなくコイツの思考はわかってきたつもりだ。まあ、褒められた思考じゃないがな。

すると、俺の隣からこやつが顔を出した。
「そう言えば隣の方はどちら様で?」
「コイツは俺の幼馴染の古川ふるかわ紗希さきっていうんだけど、なんか、ついてきた。悪いな、コイツ普段何考えてるのかわからないんだけど、今日は見に来たいって聞かなくて…」
「じゃあよろしくお願いしますね!紗希ちゃん!」
「とーくん、この人は?」
「コイツは俺のバイト先のヤツで、羽田真凜はねだまりんっていうんだ。いいヤツだから心配すんな。」
「…よろしく」
紗希がどこか他人行儀だ。まあ割と人見知りなヤツだから仕方ないが。
「じゃあ、早速始めましょうか!!」
「よし、お願いします。」
こうして俺の練習は始まった。

 「じゃあ徹くん、まずいつも通りに走ってみてください!そこから改善点を見出していきます!」
「承知。やるか。」
「いきますよー!よーい、どん!」
俺は全力で走り出した。スタートダッシュもタイミングよく決まった。我ながら完璧な走り出しだ。俺は懸命に腕を振り、脚を回し続けた。そして、
「ゴーーール!タイムは6秒3です!」
「とーくん、速い。カッコいい…」
自己ベストに並ぶ記録が出た。俺としてはなかなかの好感触だ。

「どうだった?」
真凜に聞いてみると、
「そうですねー…基本的にフォームは綺麗なので、それはキープしてほしいです。それと、もう少しだけ前傾姿勢を意識してください。でも、徹くんはかなり筋がいいのであまりこれ以上注意点とかないんですよねー。ホントに卓球部ですか?!」
なんかめちゃくちゃ褒められた。幸先のいいスタートかもしれない。そして一方紗希は何やら踊っている。全く何を考えているかわからん。相変わらずふわふわしたヤツだ。ホントに何だコイツは…

「あとはもう何回もやって自分にとって最適なフォームを見つけて慣らすだけです!ということで、私に勝てるまでやりますよ!!」
前言撤回。何が幸先のいいスタートだ。この発言でわかるとおり、これはもはや、無限地獄へのいざないであった。
「とーくん、ファイト…!」
そしてなんだろう、このカオスは…

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