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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part14

第三十二話 毒味の相乗効果
 今日はポーカーで全敗して、メンタルズタボロにされた。ついでに、時間的に部活には出れずじまいだったので、塾だけは行ってきた。今日は肉体的にも精神的にも疲れたのでゆっくり休みたいところだ。
「ただいまー。」
とは言っても父親は単身赴任でアメリカ出張中、母親は日中は仕事漬けなので、おかえりの一言など聞こえるはずもない…

「「おかえりー。」」
「お兄!」「とーくん!」
…と思っていた時期が俺にもありました。学校から帰ると、だいたいいつもこの従妹か幼馴染が家にいる。だが、今日のように両方いる時はかなりのレアケースだ。そしてそんな時俺は、大抵の場合この二人にその日の残りHPを削り尽くされる。

「お兄、お風呂沸かしてあるよ。入ってきていいよ。」
前言撤回。今日はなんかもてなされている。コイツら、俺の専属メイドじゃないよな?
「じゃあお言葉に甘えて風呂入ってくる。」
紗希さきちゃん、じゃあ作ろっか。」
「とーくんのために、心をこめて、歩実あゆみちゃんと二人で作る…」
「「晩御飯大作戦!!」」

 風呂場に入り、湯船に浸かろうと思い、俺は風呂の蓋を開けた。そして、絶句した。
「歩実のやつ、栓し忘れてんじゃん…」
仕方がないので、今日はシャワーで済ませることにした。今日は疲れてたから湯船にちゃんと浸かりたかったのに…

 俺が風呂からあがると、そこには、
「「おかえり」」
謎の暗黒物質たちが敷き詰められたテーブルがあった。暗黒物質があることは最早慣れたのだが、こんな量の暗黒物質は初めてだ。そして俺は悟った。コイツらに一切の家事をさせてはならないのだ、と。

「ちなみに…これは…何を作ったんだ…?」
「うちはそこのオムライスと、グラタンで…」
「わたしはこのスープとコロッケとサラダ」
…申し訳ないがどれがどれかもう既にわからない…火を通したものが暗黒になるのはまだわからないでもない(実は正直わからない)として、サラダまで暗黒になるか…?生だぞ??

「とーくんに喜んでほしくて…」
「二人で一生懸命作ったんだけど…」
そんなこと言われると食べざるを得なくなってしまうだろ。二人とも、それ以上何も言わないでくれ!!
「「………」」
その上目遣いもやめろ!!ゆるふわ系幼馴染と妹キャラから同時にそんな目線を浴びてしまったら…

「…いただきます。」
自ら破滅を選んでしまう。しかしもう後には引けない。ある種信岡しのおかの締め技と同等かそれ以上の地獄を味わい続けた。いや、もはや味も感じていない。一口目で舌は死んだのだ。何なんだ、うま味だけに許される相乗効果がこの二人が作ったことで、毒味に反映されているではないか!それでも食べ進め…

「ごちそう、さまで、しt…」ゴトッ
「お兄?!」「とーくん?!」
またやってしまった。テーブル中の全ての暗黒物質を食べ切った俺は、その後三日間、原因明白な体調不良で寝込んだのだった。世の中にはこんなDVもあるんだな…自業自得でもあるんだけども…!

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