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12シトライアル第一章       13日の金曜日part5

第五話 週始めの終末
 まったく、金曜は酷い目に遭ったもんだ。掴みどころのない旧クラスメート、手間のかかりそうな新クラスメート、ウザいし前しか見てないダブルスパートナー、重度のブラコン従妹に息つく間も無く絡まれた。これほどついてない日が今まであっただろうか。そう思い、今日も今日とで廊下を歩いていた折、突き当たりから何かがぶつかってきた。割とすごい勢いで。そして何か角ばったものの角が俺の左腕にクリティカルヒット。

「痛ったぁー…」
そう言って座り込んでいるのはリボンの色から推察するにおそらく一つ上の先輩だ。大量の本がそこには散らばっていた。さっき俺に刺さったのは本の角だったのか。痛いのはこっちの方だ。
「君、急に飛び出してきて危ないなあ。」
「あっ、すみません!ああ、拾うの手伝います。」
(凄い勢いで飛び出してきたのそっちなんだけどなぁ…)

それは腹の内にしまっておくとし、とりあえず本を拾って先輩に返した。こうしてしっかり先輩を見て気づいたことがある。とにかくめちゃくちゃ美人である。なんなら後光が射しているようにさえ見える。あれ?この人、集会で見たことあるぞ…たしか去年の委員長選挙の時に演説してた人の中にこんな人いたような…
「図書委員会の仕事か何かですか?」
俺はぼんやりした記憶を頼りに聞いてみた。
「ああ、私は図書委員長の大城おおしろ流唯るい。協力ありがとう。その、ぶつかったのは、私にも責任があると言うか、その、すまないわね…」
「気にしてないから大丈夫ですよ。こちらこそすみません。あ、俺、二年生の岸徹きしとおるっていいます。」

そんな話をしていた折、俺は周りの視線にようやく気づいた。そして何かを察知し、
「えっとー、俺急いでるんで、それじゃあ!」
「あっ、ちょっと…」
先輩が何か言いかけていたような気はしたが、意にも介さず俺は教室に向かって走った。こんな美人と話していると周りからの視線が本当に痛いのだ。だから一刻も早くこの場を離れたかった。それにしても、みんなが羨望の目を向ける美人。年上だけど、何だ、コイツは…

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