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12シトライアル第二章       アンカー番号12番part22

第四十話 連休間の連日登校 2日目前編
 昨日は復帰早々、惨憺さんたんたる目にあった…何が悲しくて、毎度毎度プロレス技をかけられ続けなければならないのだろうか…しかもあれほどダメージを受けた後で、塾にまで行かなければならなかった。本当に生き地獄とはこのことだ。まあ、姉から話を聞いたのか知らないが杏奈あんなちゃんは優しいめちゃくちゃ心配してくれてた。信岡しのおかもこのくらいの優しさ持っててくれてもいいじゃん…

 そして今日は、体育祭前最後の登校ということで、予行と全校での準備が行われていた。予行はなんら滞りなく終わったのでよかった。え?リレーはどうしたって?それは…

 「きし!アンタ、予行でまで足引っ張るのはやめなさいよね!!」
「それはこっちのセリフだっての…」
こんなチンケな言い争いをいつものごとく繰り広げていたところ、
「では、次はリレーなんですけど、今日は入退場とスタートの確認だけやります!」
と、実行委員のアナウンスが入ったので、血を見ずに済んだのだ。ありがとう、実行委員!

 そして、今から始まるのが、前日ではないが、前日準備である。この高校では、例年前日準備は部活ごとに行っている。ということで今年も例に漏れず、
「とーる!早くー!こっちこっち!!」
もちろん俺は卓球部としての準備に入る。今年の俺たちは、
「先輩、綱ってどこに置いておきましょうか?」
「センパーイ、大玉どこに置きます??」
各種競技で使う用具整理の担当だ。

「もっと次期部長の、俺を、頼ってくれてもいいのに…というか頼ってくれよぉ…
後輩たちは、基本俺か由香里ゆかりに色々聞いてくるので、自称次期部長のはやしは些か淋しそうだ。

 閑話休題。準備も大体終わり、残すは障害走に使う跳び箱を運ぶのみとなった。
「おし!じゃあほとんど終わったし、今日はもう帰っていいぞ!」
まだいる三年生を差し置いてなぜかまた林が仕切っているが、正直どうでもいい。
「じゃあ俺、跳び箱運ぶよ。」
「あ、待ってとーる!あたしも手伝う!」
「おっけ、頼むわ。」
ということで俺は由香里と跳び箱の運搬作業を片付けることになった。
「由香里先輩!校門の前で待ってるので、早くしてくださいね!」
「うん、わかったー!」
後輩たちとの仲がよろしいこと…と思いつつ、俺たちは体育倉庫へ向かった。

 5分後、三つ運び終わった。残り一つ。
「いやー、もう終わりだねー!」
「そうだな…」
「じゃあ行こっか!「せーの!」」
と、俺たちが息を合わせて跳び箱を持ち上げたその時、由香里の肘が倉庫内のラックにぶつかり、ドンッ!という鈍い音が鳴った。
「うわっ!」

そして痛みと驚きからか、由香里が跳び箱から手を離し俺も体勢を崩した。さらに、ラックからバスケットボールが何個か落ちてきた。俺目掛けて。辛うじてかわしたが、転がったボールが倉庫のドアを押し、ドアが閉まった。その程度で閉まるようなドアなら早く交換してくれと思ったが、それでは済まなかった。ドアが閉まるや否や、ガチャン!という嫌な音がした。

「由香里…これ、まさか…」
「…やっ…ちゃった?」
試しにドアを前後に揺さぶってみたが、びくともしない。たしかこのドア、閉まると上下でロックされる仕様だった気が…蝶番ちょうつがいはもう死ぬほど弱ってるのに…

「…ピタッ◯ラッスイッチ🎵」
「それは色々ダメだろ…特にこの状況では…」
由香里が何を血迷ったか某教育系番組の耳に残るリズムを軽やかに歌ったが、状況は変わらない。まさかこんなラブコメ漫画でしかあり得ないことが起ころうとは…参ったな…

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