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12シトライアル第一章       13日の金曜日part9

第9話 甘味?毒味?
 「おーい、とーくん、起きてー」
そう言われて目が覚めた。ここ最近色々ありすぎて疲れてたのもあって余程深く眠れていたんだろう。いい目覚めな気がする。
「あ、とーくん起きた、おはよー」
「ああ、紗希さきか、おはよう。…で、お前、何で俺の上に座って起こしてんの?」

俺に座っているコイツは幼稚園時代からの幼馴染の古川ふるかわ紗希さき。因みに家は隣同士だ。高校は違えど、中学までずっと一緒だった名残で、今も仲のいい幼馴染だと言えるのではなかろうか。昔から俺たちだけでなく家族ぐるみで仲がよく、お互いの家に出入りするなんてもはや日常茶飯事だ。8割型、いや9割型紗希の侵入だが。

「何か負荷があった方が、とーくんも起きやすいかなーって思って」
コイツは言ってしまえば天然ちゃんだ。いつもなんかふわふわしてるんだよなぁ。コイツが纏ってる空気感というか。なんだろう…とにかくなんかふわふわしたヤツなんだ!
「お前は軽いから乗られたところで大した負荷にはならん。それにこのベッド、マットレスだから衝撃も吸収されるし」
「??? ???」
紗希がいかにもわからないという顔をしている。天然だし、シンプルにコイツ、そんなに頭は良くない。理解できないのも無理はない。

 「そんなことより、朝ごはん、おばさんに許可もらって作らせてもらったから、食べて」
「…そういうところは抜かりないのな。じゃあありがたくいただくよ。」
俺は「ありがたく」と言ったが、正直に言うと、半分嘘だ。作ってくれてるのは嬉しい。それは本当だ。しかし、嘘の部分はどうせすぐにわかるだろう。俺は登校の準備を整え、ダイニングに向かった。そこにあったのは…

「…ッスー、何これ、ダークマター?」
「…フレンチ、トースト…の、成れの果て」
「その過程を知りたいっ!何が起きた?!」
「ごめん、焦がしちゃったみたい…」
「いいよ、せっかく作ってくれたんだし食べるよ。いただきます。」

 程なくして、
「とーくん?!死なないで…!」
俺は胃を完全にやられた。絶対焦げだけのダメージじゃない!絶対コイツ独特のアレンジ入れただろ…!そう、紗希はオブラートに包まずに言うと有毒物質製造機なのだ。昔からコイツはたまに俺に手料理を振る舞ってくれる。しかしそれを食べたことで体に害を及ぼさなかったことはない。それを知っているのに「ありがたく」なんて軽々しく言って食べてしまう俺も俺で悪い。いや寧ろ俺が悪い!差し出されるとなかなか断れない性格なんだ。遠慮されると申し訳なさで尚更手を出してしまうのだ。

「お前は、俺を、置いて、学校、に…行って、くる…ん…だ。俺、より、も学校…遠い、だ、ろ…?」ゴトッ
「とーくん!!」

 閑話休題。朝から酷い目にあった。ふわふわした幼馴染がつくった終焉のフレンチトーストで体を壊すとは。マジで…何だ、コイツは…

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