12シトライアル第二章 アンカー番号12番part28
第四十六話 借り者競走?!Ⅲ
二年女子、第五走。ここで現れたのは俺の委員会仲間の田辺さんだ。普段はザ・文学少女といった感じなので、ジャージを着ているのはどこか違和感がある。
「それでは第五走、お題は…カッコいいと思う男子です!よーい、スタート!」
可哀想だ…なかなかにハードル上がりすぎだろ!そしてやはり田辺さんもかなり悩まされている。おや?しかし何やら決意を固めたような表情になった。どうするんだ?と、思っていると、こちらに走って来た。この流れは…いや、まさかな。自惚れるなよ、俺。
「岸さん…一緒にお願いします…!」
あれ?マジで?色々と困惑しているが、とりあえずそのままゴールに向かった。結果、二着。
「一緒に走ってくれてありがとうございました、岸さん。」
「それはいいんだけど、お題、俺当てはまってる?」
率直に疑問をぶつけてみた。すると、
「お恥ずかしながら、お友達に男の人、ほとんどいないんです。それで、岸さんなら大丈夫かと…」
まあ、たしかに積極的に男子と関わるタイプではないよな、田辺さんは。と思っていると、
「でも、わたし…岸さんのこと、ちゃんとカッコいいと…思って…ますよ…?」
やや赤面しつつ田辺さんがそう告げた。下北の時もそうだったけど、ストレートに言われるのって割と照れるんだな…
「そっか、ありがとう、田辺さん。」
「いえ、こちらこそです…それじゃあ戻りましょうか。」
ということで俺たちはそれぞれ自席に戻った。
二年女子ラストの第六走。
「お題は…よく一緒に何かをする人!よーい、スタート!」
かなり適当なお題だな。しかし走者はどんどん走り出している…中で一人辺りを見渡している人がいた。そして何やらこちらと目が合った。すると高校生女子とは思えないほどのスピードでこちらに猛ダッシュしてきた。これは…確定演出だな。俺は悟った。そしてその通り、
「お願いします!徹くん!!」
本日7回目のご指名だ。そしてその声の主は、信頼と実績の俊足を持つ真凜だった。俺と真凜は買い出しなどで常習的に一緒に走っているので、お互いのペースはよくわかっている。そしてそのまま一位でゴールだ。
「では判定です!この人はあなたと…」
「同じバイト先で働いてます!」
「はい、文句なしのお題クリアです!」
「ナイスランです!徹くん!」
「それはお互い様じゃないか?」
「それもそうですね!この後の競技も全力で楽しみましょう!!」
「そうだな。」
一番何事もなく終わった。真凜、ありがとう。でも今は敵チームだしな…やっぱ複雑…!
そして二年男子、時間の都合上全ては言えないが、2年連続クラスメートで陸上部の山内、最近親友になった河本の二人から指名を受け、本日9回も既に借り者になった。
三年女子。ここは何事もなく終わる…と思ってた時期が俺にもありました。それが起きたのは第二走だ。
「では、第二走のお題は…面白いと思う後輩です!よーい、スタート!」
三年生とはほとんど絡みがないので何も起きないだろうと高をくくっていた俺は怪我をしている金本の様子を見に行こうとしていた。しかし、二レース目が始まるや否や、目の前に神々しさを放つ女子が立っていた。おわかりだろうか。
「岸くん、行きましょう。」
この人も出てるんかい。そう、大城先輩だ。ちなみに学校のマドンナに手を引かれて走っているもんだから、学校中の男子から浴びる視線が痛かったのは言うまでもないだろう。
先輩の結果は俺を探すのに手間取ったからか三位だったが、それにしても、
「先輩、俺って面白いですかね?」
単純に疑問だった。すると、
「まあ、ある種面白いかな。さっきの早苗ちゃんとのランの時とか面白すぎて火を噴くかと思ったくらい。」
あんたはドラゴンか何かか…とは言っても、田辺さんとのラン…何か面白かったか…?
そんなこんなで結局俺は、借り物競走改め借り者競走、全36レース中10レースを走るというわけのわからない行動をした、いや、させられた。色々死ぬかと思ったが、まあ無事なのでよしとしよう。俺は暫く休み(なはず)なのでゆっくりしていよう。はあ、心底疲れた…
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