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12シトライアル第一章       13日の金曜日part17

第十七話 本当にまともな本好き
 委員会集合も終わり、みんな帰り始めた。俺も帰ろうとした折、何やら田辺たなべさんが分厚い本を本棚から一冊取り出して読み始めた。俺は興味本意で、
「田辺さんだよね。それ、何読んでるの?」
時と場合によってはノーデリカシー極まりない発言である。しかし、

「この推理小説、ものすごく面白いんです。きしさんも気になります?」
どう見ても小説の厚さではないと思っていたが、れっきとした推理小説だった。
「田辺さんって推理小説好きなんだね。」
「推理小説というか、本読むの自体大好きなんです。ただみんなあまり読書に興味がないみたいで。あまり本について話せる人もいないんです。だから、この委員会に入れば、仕事という名目で本読みに来れますし、もしかしたら本好きな人とも仲良くなれるかもって思って…あっ、すみません!語りすぎましたね。」

俺とは違うなと思った。俺はただ楽な委員会だと思ったから入ったにすぎない。しかしこの人は本当に本が好きな人なのだ。尊敬すら覚える。俄然興味が湧いた。
「俺、あんまり小説とか詳しくないけど、俺もあまり仲いい人いなくてさ。あまり本のことよくわからない俺でもよかったら、本の話聞かせてよ。そういう何かに熱心でいられる人、俺はまっすぐでいいと思うな。」

すると田辺さんの目の光が変わった。
「本当ですか?!いいんですか、色々話させていただいて!あまりそういうこと言われないのですごく嬉しいです!!」
テンションも変わった。この人、褒められたり感心されたりするとノってくるタイプの人か。まあ何はともあれ、
「改めて、明日からよろしく。」
「はい!よろしくお願いします!」
俺の業務上のパートナーが決まった。人間関係には困らなくてすみそうだ。でもやっぱり、何だ、コイツは…

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