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12シトライアル第三章       疾風怒濤の11時間part20

第七十二話 炊爨危機のかれこれ
 さてさて、色々ありましたが本日5月30日。明日はついに林間学校!
「てっちゃん!もう明日だね!」
「ホントだな。」
「とりあえず、野外炊爨、成功させましょう。そのためにもきし、段取りミスらないでよね!」
「なんで俺がミスる前提なんだよ!こちとらカフェ店員だぞ!」
我ながら反論が苦しい…
「大丈夫!てっちゃん普通に料理上手だから!」
こういう時は芹奈せりなの存在が助かるな。
「いやー、楽しみすぎて夜しか眠れない!」
「「…健康的だ…」」

 閑話休題。俺たち三人が話していると、
「岸くん!」
我らが班の神こと河本こうもとがやって来た。しかし何やら珍しく慌てた様子だ。
「どうした?何かあった?」
「いや、前僕が野外炊爨の流れ考えたけど、あのプランが崩壊しそうなんだ…」
「「「?!」」」
班が凍りついた瞬間だった。

「河本くん、どういうこと?」
ノーテンキな芹奈も流石に神妙に尋ねる。
「あの時僕は、飯盒はんごうが二個ある前提で話を進めてたんだけど、さっき先生に確認したら各班一つしか用意できないみたいなんだ…あのプランだと一つはパン焼き、もう片方は炊飯用になってたけどそれができなくなる…」
「ていうことは…」
「パンかパエリア、どちらかは…」
「そんなー!!」

三人とも完全に打ちひしがれてやがる…すると、
「岸、あんためちゃくちゃパエリアやりたがってたわよね…仕方がないから今回は譲ってあげるわ…」
極限までブルーになったのか、信岡しのおかがもはや投げやりになっている。だが、
「信岡、サンキューな。でもお前だってパン作り、母親との思い出なんだろ。そして俺もパエリアは意地でもやりたい。だからどっちもやればいい!」
「「「???」」」

「あんた聞いてた?!飯盒一つだけなのよ!」
「もちろん。河本、プランニングは上手いけど、お前料理とか全然しないだろ?あの時はちょい俺も聞き逃してたんだが、パエリアってお米使うけど炊く必要ないぞ。だから正直飯盒はパン用に一つあれば十分だ。」
「ホント?!てっちゃんナイス!!」
「だから安心してくれ。米を炊くっていう動作がなくなるだけでプランは変わらないし、信岡、お前がやりたがってたパンも予定通りできる。」
「岸…」
「ありがとう、岸くん!」
ということで無事解決!まあ、あの時ちゃんと聞いてなかった俺の責任でもあるんだけど。

 閑話休題。
「そういえば、食材はどうするんだ?」
すっかり忘れていたことを尋ねる。すると、
「あたしはいくつかまだ揃えないといけないものがあるわ。」
「わたしも…ほぼ全部買わなきゃだけど…」
「そういう岸こそどうなのよ?」
「俺はお米以外は新鮮な具材の方がいいと思ってこの後買いに行こうと思ってる。林間学校前日で部活オフだしな。」
みんな何かしら、芹奈に至ってはほぼ全部だが買わないといけないものがあるようだ。
「それじゃあみんなで買い出しに行かない?」
河本が提案した。

「俺はそれでいいが…」
恐れているのはもちろん、天敵である信岡だ。恐る恐る信岡の方を見ると、
「まあ、あたしもそれでいいわ。岸が勝手に変なもの買ってきたら洒落にならないし。」
コイツ、俺を何だと思ってるんだ…
「わたしも賛成!!正直いつも妹に作ってもらってるからわたし自身は何を買えばいいかわからなくてさ!相談したかったしちょうどよかった!」
「お前はちゃんと自立しろ!」

 そんなこんなで放課後、俺たち四人は学校の最寄りのショッピングセンターの食品売り場に来ていた。
「みんな必要なものは?」
「あたしはもう小麦粉だけで大丈夫。委員長は焼きうどんだから麺本体とキャベツ、ニンジン辺りの野菜と、それから豚肉かちくわとかかしら。」
「俺はムール貝かアサリ、エビとイカ、それからターメリックくらいかな。」

「じゃあ、信岡さんは岩井いわいさんの監督役も含めて、二人でパンと焼きうどんの材料を揃えておいてくれるかな?」
「ええ、わかったわ。」
「で、俺はお前といい海鮮集めってことか。」
「そういうこと!それじゃあ後で合流しよう。」
ということで、男子チームと女子チームに分かれてそれぞれ明日のために具材の収集を始めた。

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