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病気になるのは自己責任!?

医療関係者の間でも、まだ十分に認知されていない『健康の社会的決定要因=SDH(Social determinants of health)』。

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健康は自己責任ではなく、健康を決める主な原因はもっと別のところ、つまり私たちが暮らす社会の中にあり、その原因の具体的な項目を突き止めたもののことを示しています。

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この図のように、健康を規定する要因のうち社会的要因が占める割合は、実に50%以上を占めており、「持続可能な世界の実現のための目標:SDGs」においても注目されています。

そこで今回は、『SDH』について少しまとめてみたいと思います。

◉健康格差とは?
健康格差とは、「地域や社会経済状況の違いによる集団における健康状態の差のこと」。健康は遺伝子や生活習慣だけでなく、その人の社会経済的な地位をはじめとする社会的な要因によっても左右されます。
こうした差は健康格差と呼ばれ、先進諸国でも重要な問題として認識されるようになってきました。

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◉日本の健康格差
日本は高度経済成長期に飛躍的な経済成長を実現した結果、世界でも有数の経済大国となり、国民の生活も豊かになりました。
しかし、バブル崩壊以降の長引く不況の下で経済成長率は鈍化し、失業率も上昇するなど、国民生活の水準は低下傾向が続いています。
こうした環境のなかで、日本でも健康格差が広がっていると言われており、日本は健康格差を是正する必要があるのです。

◉原因は?

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<社会格差>
日本に限らず、社会階層が低くなるほど、平均寿命は短くなり、疾病の発症リスクが上昇する傾向があるとされています。
これは、低い社会階層に所属する人ほど、預金などの資産が少なく、貧しい住環境に暮らし、教育の程度も低い結果として、不安定な仕事に就労せざるをえないなど、社会的・経済的なストレスが多い状況での生活が影響していると考えられています。

<所得格差>
所得格差も健康格差につながる一因です。例えば、低所得層に属する人は、高所得層に属する人と比較して、うつ状態の割合が5倍に上るという調査があります。
こうした結果は、経済的・社会的なストレスを抱えることによって、心身の健康が蝕まれやすくなるからだと言われています。
さらに、世帯収入が300万円未満など、「生活困難」の条件に該当する家庭の子どもは、虫歯が5本以上ある割合が、そうでない家庭の子どもの約2倍にのぼるといった報告があります。
また、麻疹・風疹の予防接種を受けていない割合も、同様に生活困難世帯の子どもがそうでない家庭の子どもの約2倍であったという研究結果もあります。
(出典:内閣府「日本の子供の貧困に関する先行研究の収集・評価」)

<仕事や職場のストレス>
慢性的なストレスは、様々な病気になるリスクを高くします。実際、男性では中規模(従業員数 300~999 名)の企業に勤めている人が、最も高い割合でストレスを感じていました。
ただし、仕事のストレスと脳卒中の関係は、ブルーカラーと非管理職の男性にのみ確認されています。
その他にも、仕事のストレスが小さい女性管理職と比較して、仕事のストレスの大きい女性管理職は脳卒中のリスクが約5倍高いという結果も出ています。
(出典:文部科学省科学研究費新学術領域研究「社会階層と健康」)

◉改善策
現在は、健康格差を是正するために目指すべき社会の姿を、全ての国民が共に支え合い、健やかで心豊かに生活できる活力ある社会として取り組みが行われています。

※健康日本21(第2次)の基本的な方向としては、以下の5つを行うこととしています。

⑴ 健康寿命の延伸と健康格差の縮小
⑵ 主要な生活習慣病の発症予防と重症化予防
⑶ 社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上
⑷ 健康を支え、守るための社会環境の整備
⑸ 栄養・食生活、身体活動・運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

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加えて、上図のように、子供から高齢者までライフステージに応じた要因も出てきます。
例えば、子供は生まれた時から社会格差の犠牲者であり、世帯の収入によって学力に差が生まれていることが報告されています。
一方の高齢者は、生まれ育った時代の影響で、小さい頃に十分な栄養を摂取できていなかった方がいたり、核家族化が進み、孤立化や貧困(収入源が減り不安定な生活)が進行することで、健康格差が生じています。

日本のような少子高齢化社会においては、今後ますますSDHを考える必要があると思います。

<高齢者を輝かせるための7つの柱>
・認知症への理解を深めるための普及・啓発
・認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供
・若年性認知症施策の強化
・認知症の人の介護者の支援
・認知症の人を含む高齢者に優しい地域作りの推奨
・認知症の予防法、診断法、治療法、リハビリテーションモデル、介護モデル等の研究開発及びその成果の普及の推奨
・認知症の人やその家族の視点の重視

◉孤立・排除
社会的なつながりの量は、喫煙や飲酒よりも寿命に影響を与えるという研究があります。
社会的つながりが極端に少ない状態=社会的孤立は、疾患リスクを高めることが報告されています。
つまり、社会的つながりは、健康の社会的決定要因の一つと言えます。

最後に…
コミュニティはそれ自体が社会的排除や社会的支援の源として、健康の社会的決定要因の一つです。
どういうコミュニティがいいかというのは意見が分かれるところですが、自分たちの事は自分たちで決める、というコミュニティにおいては、自殺率が低い(満足度が高い?)との報告があります。

「安心できる溜まり場」

たくさんのテーマ別の小コミュニティが相互につながり、地域全体をカバーする雲のような結びつきを作り出すような新たな取り組みを、私自身もできたらと思います。
(参照:「ケアするまちのデザイン」より)


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