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『レオン』感想──ロリコンゆえのキツさと格闘する2時間

 『レオン(完全版)』を見た。中年童貞の殺し屋が家族を殺された少女と一緒になって、復讐を企てるなかで家族的な関係になる物語。

 ペド的な要素があってそれで叩かれているのは知っていて、それで敬遠していたのだが、友達に話題を振られたので見た。

 見た感想としては、思っていた以上にマチルダが都合の良い聖なる処女として描かれている感じがして、見ていてキツかった。やっぱり少女を都合のいい性的対象として描いちゃダメですよ!とここまで書くとニュートラルな倫理観を持った人間のようだが、私はそうではない。

私はロリコンなんです…!少女の身体にある細さとかとてもエロいと思っています…。さらに「少女」という、男性にはない微妙な発達段階にやどる大人と子供のいりまじる不安定な魂がとても美しいと思う…。すさんだ少年期を送ってしまったこともあってか少女性というものに対するあこがれがあるんです。ということでロリコン的視点が入るので注意。

 (ツイッターとか男の娘についての記述とかご覧の方はおまえホモじゃなかったのか、と思われそうですが、僕はエロスを感じるという面では老若男女わりと問わないところがあるんです…。恋愛的な感情はまた別ですが。)

 で、少女性に対する危ういあこがれがあるからこそ子供の性的搾取とか嫌いなんですよ。少女性を壊すようなことはいけないだろ!みたいな怒りが湧くし、抑圧された自分の少年期を想起するところもあって非常に嫌悪感がある、でもその少女に触れようとする人間の情動も理解できてしまうから余計につらい。最近朝日新聞の朝刊にのっている子供への性的虐待の連載記事も吐きそうな気持ちになりながら読んでいる。

 長々と自分語りしてしまいましたが、そういう少数派な感覚の持ち主としてはただ倫理的にキツイとかじゃなく自分の魂のケガレを見ているようでキツかった。なによりも隠しているロリコンが透けている感じがきつい。

 マチルダに誘惑させておいて、拒否すれば映画として成立するという目論見がもうバレバレである。レオンがマチルダになんの興味も抱いていない感じが嘘くさい。
 欧米ではマチルダがレオンを誘惑する、セックスをしようとするという部分に倫理的な批判があるそうですが、私としてはむしろそれは健全で、レオンの方の描き方に悪いものがあるものと思いました。だってすさんだ家庭環境に育った上に全てを失った少女が身体的な接触を求めるのは自然と言えば自然なふるまいだと思いますから。

 『ルパン三世カリオストロの城』で、ついてこようとする少女クラリスにたいして、ルパンが抱きしめたい気持ちをギリギリ抑えて肩をもって引き剝がすシーンがありますよね。
 『レオン』はそういった、まちがいなくある男の側の葛藤を描かないから余計に質の悪いロリコン感が強い。つまり聖なるオッサンにすることで必要な葛藤から逃げている。もちろん葛藤を描けばOKってわけではないし、宮崎駿のロリコン成分はまた別の厄介さがありますが、なんにせよいちばん好きな部分で嘘つくなよ!って思いがある。

 『カリ城』で思い出したが、ついてこようとするクラリスは「泥棒の仕事でも覚えます」みたいなこと言ってたが、その住む世界によるへだたりの描き方は象徴的だよな。つまり『レオン』において殺し屋の仕事を覚えさせた=裏の世界に入れてしまった時点でマチルダを抱いたも同然なのではないか。それはいいんだけど今さら聖なるおっさんヅラするなよ。
 ジャンレノの演技はだいぶ痴呆っぽかったからフィルムの上での二人の関係性はぎりぎりのところで救われていて、大衆の鑑賞に堪えるんだけど、作り手の目線が透けて見えすぎている。

 特にマチルダの服装はロリコン的に100点でしたね。大人っぽい服を着た結果子供っぽい肋骨が大きくみえる、みたいな服装がいっぱい出てきたが、その子供の体の表現はすばらしい変態さがあった。肩がでているところの骨ばった感じを見せているのとかも「よくわかっている」感じがあった。念のため説明すると、未成熟な子供でエロいのはおっぱいとかじゃないですからね、肋骨とか二の腕の骨とか、膝とか、そういうところにすごく絶妙な美しさがあるんですよ。
オデコが見える髪型も子供っぽい頭骨のバランスを強調しているし…うう、書いていて苦しくなってきた。

 はい、ということでね。アクション面とかかっこよかったし、いろいろ見せ方もうまいしいい作品なんだけど、見ていてきつかった。それにつきます。

 っていうかもっとあけすけなことをいうと少女に対しておっさんが性的対象として現れることが地雷なのかな。ヤン・シュヴァンクマイエルのロリコン性は許せるので、もしかするとそういうことかもしれない。


ロリコン関係以外で良かった点

 マチルダが「ボニーとクライド」のたとえを出すところが良かった。誘惑の言葉ではあるんだけど、その名前が出ることで『俺たちに明日はない』のような暗い未来が暗示される感じを受けた。実際レオンはマチルダに巻き込まれた結果死んだようなものでもあるし、本作自体アメリカンニューシネマの影響下にあるように感じた。
 それと逆にレオンがミュージカルの『雨に唄えば』を見ているシーンもよかった。子供っぽいロマンティシズムを持っていることが示唆される感じが、マチルダと対比的でもあった。また、それらのシーンからレオンがロマンティック少年であることがわかることで、彼がボーイミーツガール的な展開に喜んでもいるんだというところが見えるところは良かった。つまり性的関係は拒否するけど親になろうという気持ちはなさそうだということがわかるのはいい。作り手は本当のことを言っているわけだから。

 マチルダ役のナタリーポートマンの顔がとても良かった。白人の子供は大人以上に彫りがくっきりするから顔に影が入って、その目の黒さに強いものが走ることがあると思うんだけど、それが見透かすような目になっていてとてもよかった。

 敵役のゲイリーオールドマンの演技。調べたところほとんどアドリブらしい。

 マチルダが見ているアニメとしてトランスフォーマーが出てくるところ。そこに深い意味はないんだろうけど、女の子向けではないのはちょっと異質な感じがしていい。マチルダにトランスフォーマー買ってあげたい。

 あと一つ悪かった点。「酒を飲む場でミルクを飲む」ことで精神の幼児性を表現するのやめろ!牛乳好きに対するヘイトだ!それに世の中ガキっぽい大人ほど酒飲んでるぞ!(偏見)


にょ