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【2022冬欧州の旅】21日目クレモナ

今日は、イタリア北部にある小さなまち、クレモナを訪ねました。

音楽に詳しい方はピンとくるでしょうか。ヴァイオリン作りで有名な町ですね…!


今回はとあるご縁で、日本のヴァイオリン職人にお会いすることができました。

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こちら、菊田さんです。(撮影&掲載許可を頂いています)

駅に着いて早々、工房の中へと案内していただきました。職人の仕事場、私は興味津々です…。

菊田さんと私の繋がりについてひとしきりお話しした後、菊田さんがこの仕事に就くまでの話を根掘り葉掘りお聞きしました。だって、クレモナでヴァイオリン作りですよ!そりゃ色々と聞きたくなります。菊田さんのプロフィールは、記事の最後に付けたリンクからご覧ください。

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ヴァイオリンに必須の木材について。オーストリアの少し高度のある森の中から運ばれてきたものを主に使っているそうです。寒暖差の大きいところで育つ木が丈夫で良い音が出るんだとか。大木の一部分だけを使っているという話からも、どれだけ大事に楽器が作られているのかが分かります。ヴィオラやチェロという、より大きな楽器になると、より大きな木材を必要とするわけですね。チェロひとつ作るだけの大きな木ってどれだけなんだろう!!気候条件がばっちりそろっているからこそ生まれる音や楽器そのものの美しさ。自然の恵みに感謝感謝…。

面白かったのが、クレモナは冬でも湿気の多い場所であるから、実は楽器作りに向いていないのでは、という話。しかし、町にはポー川という運河があり、材木やその他楽器作りに必要な材料がうまく流れ着く場所、という地の利があったそうなんですね。これをうまく利用して先人達がここを拠点にヴァイオリン作りを広めていったと。


工房を出た後、菊田さんに町案内をしていただきました。贅沢なマンツーマンクレモナ歴史講座です!!

ストラディバリが若い頃住んでいた家↓

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家の前に彼の銅像がありますが、これは最近置かれたものだそう。他に目立った目印がないので、ボーッとしていると通り過ぎてしまいます。

続いて、ストラディバリの墓のレプリカ。

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本物は博物館に保存されています。こちらのレプリカがある公園は以前教会が建っていた場所で、そこに彼の骨が埋葬されていたんですね。何が原因かは分かりませんが、その教会が破壊されたときに彼の骨はどこかへ消えてしまいました。辛うじて残った墓石をレプリカとして記念碑に……歴史は後世の人が意識的に残そうとしないとあっけなく消えて無くなってしまうものなのですね。

こちらは、ムッソリーニ体制の時代に建てられたもの。ストラディバリはここでも仕事をしていたそうです。

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実はクレモナ、一時は職人が町からいなくなり製作技術が途絶えてしまった歴史があります。それに危機感を覚えたムッソリーニ政権が国を挙げて、ヴァイオリン産業を復活させ、見事ストラディバリの確立した技術がこの町に戻ってきたそうです。

お、面白い……ムッソリーニ、君はそんなことをしていたのか。

逆輸入されたストラディバリの技術はフランスで形を変えて生き続けていたため、当初のものと全く同じではなかったそうですが、ムッソリーニがいなかったら今のクレモナはなかったのかもしれません。

続いて、ヴァイオリン博物館。こちらも贅沢に菊田さんのガイド付きです。古代(と呼んでいいのか)のヴァイオリンの展示〜ストラディバリの師匠にあたるアマティ一家の作品、ガーネリ一家の作品、そして勿論、ストラディバリの作品の数々…、菊田先生の解説で、一見同じように見えるヴァイオリン達の背後に壮大なストーリーが浮かび上がってきます…。ストーリー抜きにしても、ただ眺めているだけで楽しいヴァイオリン、奥が深いです。

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ズブの素人の私でも、少し見分けがつくようになってきました。


そして、偉大なる(今日はじめて名前を知った)フィオリーニ大先生!

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彼のおかげで、ストラディバリの仕事道具を今の私達が見られていると言っても過言ではありません。というのも、ストラディバリが亡くなった後、彼の家族が遺品をあまり大事に扱っていなかったそうで……そこでフィオリーニさんがそれらを引き取ったそうなんですね。おぉ…ここでも出ました、誰かが残さないと、いとも簡単に消えゆくもの…。


菊田さんのお話が面白く、展示をじ〜っくりと見ていたら、あっという間に閉館時間になってしまいました。

菊田さん、仕事の合間を縫ってお付き合いいただき、ありがとうございました。同じ工房でお仕事をする高橋さんにもお世話になりました。ご自分で作られたヴァイオリンでの演奏、素敵でした。

今日は、ヴァイオリン演奏を子守唄に眠りにつきます。(広場の喧騒が、かなりうるさいのですがね…笑

それでは、おやすみなさい。

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菊田浩さんのホームページ↓



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