ペン入力デバイス、NewtonからPalm、iPad、Kindle Scribeまで振り返る

ちょうど今年のKindleの新デバイス、Kindle Scribeが発表されたタイミングで、過去の連載ではPalmとNewtonのことを語っています。

90年代のペン入力デバイスを切り開いたのは間違いなくNewton MessagePadだと断言できるのですが、90年代を代表するペンデバイスは何かというと間違いなくPalmということになるのでしょう。明らかに商業的には大成功しましたから。Newtonは見たことなくてもPalmなら知っているという方も多いでしょう。

2000年代には引き続きPalmの時代、特にSONY製のPlamであるCLIEがいい出来だったこともあって前半はこの勢いが続きます。特に僕はこの連載で語っているUX50という機種が大好きでした。キーボードがついているとか画面が180度回転するとか、気の利いた機能を満載していたガジェットでした。その後はしばらくペンデバイスは不調、Windows Mobileとかぼちぼち出ていたみたいですが、これというヒットもないまま世の中はiPhoneの時代へ。Jobsの鶴の一声、指があるのにペンを使う必要があるかということでペンデバイスは不遇の時代を迎えます。

そして時代はiPad、大型タブレットになって、Jobsも亡くなって指のしがらみも少なくなってきたはずなのに、しばらくペンは出さなかったApple。他社からはペンのAndroidタブレットが登場し始めていたのでヤキモキしていたのですが、2015年になって満を辞してApple Pencilが登場。これで流れはまたペンの時代へ。というかハイブリッドですけどね。

ちなみにNewtonの手書き入力を散々褒めちぎっているオレから見て、いまのApple Pencilの描き心地はどうなのかというと、控えめに言って最高です。どちらがいいかと言えば圧倒的にApple Pencilの勝利。理由はいくつかありますが、まず画面の解像度の違い。当時のドットが見える白黒2値の液晶ではないんです。当時の4倍以上の密度のドットで再現するフルカラー環境、圧倒的に書いた線を表すのも有利です。人間描いているときはあくまで視覚の情報も大きなフィードバックとなって入力に影響してきます。速度といい解像度といい速ければ速いほど、細かければ細かいほどいいに決まってます。さらに画面の厚さによる視差、描いている部分とペン先の違和感も今の方が優れている。スタートラインがそもそも25年前のNewtonとは全く違います。

それに加えてAppleはおそらく仕組みとしていろいろやってます。ペンの動きから線の方向や動きを予測しているのではないかと思われる反応性を示している気がします。細かいものを書くときや大きく書く時とかちょっと動作が違ってそう。Newtonのアシスト描画みたいなあからさまなものではなく、もうちょっと自然に見せるためにあえてずらす、みたいなことをやっているような気がします。確証はありませんが。

というわけで個人的にはiPadの手書き環境には非常に満足しており他のペンタブレットを使う意味がないのです。なので、冒頭に書いたKindle Scribeに興味があるフリをしていますが、そして実際に買おうかななんて検討したりしてみてますが、実際には必要ないと決めてかかってます。iPadに敵うはずがないんです。E-Inkの電子ペーパーに書き込みができて幸せだった時代はとうにすぎてます。

何も発売前にそんなに決めてかかることはないか、とも思うのですが、僕は別のデバイスでre-Markableという同じようなペンデバイスにも手を出していて、だいたい想像がつく範囲の使い勝手で書きこごちだったため、結局あまり使われないまま倉庫送りになっています。ということでペン入力ができるデバイスとしてのKindle Scribeには興味ゼロと言っていいでしょう。

ただし、大きなKindleという意味ではかなり期待していました。僕は初代のKindle DX、やはり10インチぐらいあったKindleデバイスを持ってて、PDFを読むのには軽いし最高だったんです。その意味で注目したんですが、残念ながらOasisにはついているページ送りボタンがなくなっていることから、これも残念、買うまでに至らず、という判断に落ち着きました。

というわけで、僕はしばらくはiPad Proと iPad miniの手書き二台体制でやっていきます。

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