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ステージマネジメントにしひがし #1 - 舞台裏役割分担編

前置きはこれくらいにして、イギリス流ステージマネジメントについて書いていきたいと思います。

(注: 前置きを読むとわかるのですが私は日本での裏方経験がほとんどないのです。したがって以下の内容で日本に関わる部分は独学の知識なので、「ちがうよー」「ここはこうだよー」ということがあればどんどん教えていただきたいです!よろしくお願いします)

イギリス演劇舞台裏

イギリスの舞台スタッフはざっくりこんな構造になっています。

もちろん、カンパニーの規模や特徴によってこれは臨機応変に変わります。

プロダクション・マネージャー(Production Manager)

大道具やテクニカルな部分など舞台の設営にまつわる部分や、予算管理などを担う人です。
リハーサルにはたまに顔を出すくらいで、どちらかというと大道具や衣装、照明、音響、映像さんなどをとりまとめながら会場ともやり取りをして、演出家の希望に沿いかつ予算内におさめるようにマネジメントしていく役割になります。
いうならば、公演におけるハード面を受け持っている、という感じでしょうか。

なんとなく、日本で舞台監督というとこの人をさすイメージが強いような気がします。
というか、この人の仕事の多くが日本の舞台監督の範疇におさまっている、という感じ?

ステージ・マネージャー(Stage Manager)

直訳すると「舞台監督」となるのがこのステージ・マネージャー。
プロダクション・マネージャーとは反対に、基本的にはリハーサルについて、リハーサルが滞りなく進行するようにつとめます。
稽古場に必要なものが揃っているように手配したり、稽古場にバミって(mark up)どこに大道具があるかわかるようにしたり、、、
また、リハーサルのスケジュールを演出家と一緒に組むこともあります。
(これはカンパニーによって後述のDeputy Stage Managerや、Company Managerが担うこともあります。)

小屋入り後はテクニカル・リハーサルの進行を務め、装置転換や舞台袖のスタッフの動きをとりまとめたりします。
そして初日以降は、千秋楽まで日々公演が無事進行するようにカンパニーをまとめるのがステージ・マネージャーの役割です。

そして何より一番はこのステージ・マネージャーが、ステージ・マネジメント・チームを引っ張るリーダーの役割をします。
チームのメンバーがきちんとそれぞれの役割をこなせるよう、マネジメントしていくというわけですね!

デピュティ・ステージ・マネージャー(Deputy Stage Manager: DSM)

Deputyは訳すと「副」という意味で、つまりは「舞台副監督」。
ステージ・マネージャーの補佐をするのかと思いきや、この人はとってもユニークな役割を担っています。

まず、DSMは稽古場で演出家に並んで座り、常に稽古に立ち会います。
さきほど、「ステージ・マネージャーは基本リハーサルについて」と言いましたが、ずっと稽古場に貼り付いているとは限りません。
隣接したオフィスで、リハーサルの進行に必要な仕事をしていることがほとんどで、通し稽古や場面場面で実際のリハーサルを見る感じです。
対してDSMはずっとリハーサルにいます。ずっとです。
そして、演出家の「ここでジョンがポケットからiPhoneを取り出す」というような発言をメモって、毎日リハーサル終了後、各部門に「ジョンはiPhoneを使うので用意してください」「ジョンの衣装にはiPhoneを入れるポケットが必要です」というようなことを伝達します。
言わば、稽古場と各部門のハブのような存在です。

もちろん他にも、リハーサルのために小道具をセットするなど実際に稽古場をまわしていったり、俳優や小道具、大道具の動きを台本にメモし(blocking)、稽古場のセットアップやテクニカル・リハーサルに役立てます。
どことなく、日本の演出助手が行うようなことを担っているのがDSMです。

そして小屋入り後は、稽古場にずっといて一番公演を熟知しているということで、きっかけだし(キュー出し / calling, cueing)を行います。

ちなみにアメリカではこのキュー出しの役割をStage Managerが代表して行い、その後Assistant Stage Managersがこれを覚えてローテーションするのが一般的で、DSMは存在しません。
イギリス特有の役割なんですね!

アシスタント・ステージ・マネージャー(Assistant Stage Manager: ASM)

その名の通り、ステージ・マネジメント・チームのアシスタントとして奮闘するのがこのASMです。
公演の規模によって、1人だったり4人ほどいたりする場合もあります。
一般的にはストレート・プレイでは1〜2人、ミュージカルやオペラでは2〜4人ほどいるという感じでしょうか。

イギリスのASMは特徴として小道具を担当します。
特に小規模の公演で、専任の小道具担当(Prop Supervisor)がいない場合には、デザイナーや演出家とやりとりしながら小道具を集めたり作ったりするのがASMです。
また、小道具担当がいる場合にも、リハーサルで使う代替品(Rehearsal Props)はASMの管轄であったり、小道具のメンテナンスや、劇中でどのように使われるか、セッティングなどを把握して、稽古場をセットしたり、本番前のセットアップを担ったりします。

それ以外には、DSMがやむを得ず休みのときに代理でリハーサルに同席したり、DSMだけでは行いきれないリハーサル中の場面転換を手伝ったり、オペラなどで出演者に登場のきっかけ出しをしたりもします。

本番では、前述の小道具のセットアップや、出演者へのきっかけ出しのほか、俳優に小道具を手渡したり、場面転換や衣装の早替えを手伝ったり、吊りものの操作をすることも。
まさに、皆のアシスタントとして奔走するのがASMです。

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ざっくりと、イギリス流の舞台監督チームをまとめてみました。
日本と微妙にシステムが違っている感じが伝わればいいなと思います。
 
仕組みが違うからこそ直訳するのは難しく、私は一応DSMをメインの目標として勉強しているけれど、これをどう翻訳して履歴書なんかで説明するのが正しいんだろう…?と迷うこと多々です。

イギリスに身をおいている自分としては、システムとしてできあがっていて効率もいいし、ちゃんと役割分担できてるなぁ、って思ったりします。
……っていっても、日本の現場をほぼ経験していないので、あまり知ったようなことは言えませんが………

次回からは、もう少しそれぞれの仕事を掘り下げてみたいと思います!

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