岡本文音

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20世紀エストニアにおける音楽の受容【後編】

 1940年にソヴィエトに併合されたエストニアは、第二次世界大戦の間ソヴィエトとナチス・ドイツという2つの大国に翻弄される運命となります。 ■ソ連占領後(1940年~1991年)  ソヴィエト占領下となり共産主義体制となったエストニア。ソヴィエトは恐怖によってエストニアを支配しました。非共産党員の政治家や役員が国家の敵として逮捕され処刑され、それだけでなく、無作為に選ばれた10000人もの人々、主に女性や子供がシベリアに追放され強制労働収容所で処刑されるか、衰弱し死亡した

    • 20世紀エストニアにおける音楽の受容【中編】

       20世紀エストニアにおける、と題しておきながら前編ではその前史のお話で終わってしまいました。中編からはいよいよ20世紀にまいります。  まず20世紀のエストニアですが、①独立まで②両大戦間の独立時代③ソヴィエト連邦時代(1940~1980)④独立回復後の大きく4つの時期に分けられます。 ■独立まで(~1920年)  さて、20世紀に入りエストニア楽壇(当時はロシア帝国の一部)はますます活気づきます。交響曲や大規模な合唱曲のコンサートが定期的に開かれるようになり、アマチ

      • 20世紀エストニアにおける音楽の受容【前編】

         「芸術は人を愛する」。これは、私の所属する東京芸術大学が2019年の秋に学内で募集していたプロジェクト『I LOVE YOUプロジェクト』のキャッチコピーです。この言葉を読んだ時、真っ先にある国について思い浮かべました。バルト三国の最北端に位置する小国、エストニア。  エストニア人は「歌う民族」とも称されるほど、彼らにとって音楽とは民族の最重要のアイデンティティです。音楽は彼らの生活の一部として、古来より親しまれてきました。  エストニアで音楽の存在が際立つのは20世紀

      20世紀エストニアにおける音楽の受容【後編】