バスケなめんなよ 5話
3年生最後の大会
パリっとした気持ちの良い春はとっくに過ぎ去り、6月を迎え梅雨に突入したと同時に3年生の最後の大会が始まりました。
会場が近い事もあったので、私は観戦に行く事にしました。
最後の大会は本当に独特な雰囲気のなか行われます。
負ければその時点で部活を引退しなくてなりません。
どのチームも気合が入り、実力以上の力が出ているのではないか?
と思うくらい激しく、そして集中した試合になります。
私も経験していますが、市内大会ではそのような気持ちにはなりませんでしたねw
大袈裟でも何でもなく、市内大会は4割位の力でやって怪我をしないようにと、当時の顧問からも言われておりました。それでも30点差位つけ優勝をしていました。
少し自慢を挟みましたが、話を戻します。
涼は緊張した様子もなく、スタート前に積極的に戦術の確認を3年生と行っております。
3年生はガチガチなのが分かりましたw
どうやら対戦相手との実力差はほぼ無いらしく、どちらが勝ってもおかしくないとの事です。市内大会1回戦で実力差無しの試合が繰り広げられると言うことは、次に当たるシード校には絶対勝てないのではないだろうか?
いやいや、今はそんな事考えずにしっかり応援しよう!的な事を試合開始前に考えておりましたw
そしてついに試合が始まりました。
チラッと横を見たら、既に試合を終えている女バスが応援をしてくれていました。
勝ったのか?あんな笑顔で応援してるんだから女バスは勝ったのだろう…私はそこまで気にもせずに涼たちの試合に集中しました。
スタメン
キャプテン 3年
フォワード 3年
センター 2年 金剛
フォワード 2年 大翔
ガード 2年 涼
いつも通りのスタメンかと思ったら、金剛が入っていました。
前回の練習試合でリバウンドを取りまくったのが決めてでしょう。
試合は聞いていた通り、実力差の無い展開が続いています。
金剛がリバウンドを取って、涼がボール運んで大翔にアシスト、涼がそのままドライブ、3年生のフォワードがシュート、キャプテンは…1Qで既に3ファール……
そして
out
キャプテン
金剛
in
フォワード 3年
センター 3年
キャプテンは分かるけど金剛を下げるとリバウンドがヤバそうだな……
珍しく顧問がキャプテンに激しく指導しています。
そりゃそうですよね。最後の大会だし、既に3ファールだし………
そして、点差もほぼ無く1Qが終わりました。
どうやら2Q頭からキャプテンが出るようです。
ちょっと不安だな…気合いが空回りしているのだと思います。
見た感じまだ空回りしているように見えました。
キャプテンの焦り…
2Qが始まった早々にキャプテンがまたファールをしました……
これで4回目です……あと1回で退場です……彼の中学バスケが終わる可能性もあります。
そして
out
キャプテン
in
金剛
顧問からとにかく落ち着け!と言われていますが、キャプテンの耳には入っていないと思います。
あと1回で退場……と言う考えが脳内で99%埋め尽くされてるはずです。
試合は追いついたり、追い越したりとどちらにも主導権が行かない展開が続いています。
そして2Q残り2分になったところで
out
金剛
in
キャプテン
この瞬間、涼の表情が曇りました。
おそらく残り2分を金剛に頑張ってもらって、後半の3Qにキャプテンを出した方が良いと思ったのでしょう(試合後に確認してみよう)
そして、その時が訪れます。
審判「ピーーー白4番ハッキング!」
やっちまいました……うなだれるキャプテン…頭を抱える顧問…下を見る3年生…表情を変えない涼たち…慰めるベンチ…
辛いけど、まだ試合の途中で競ってる訳だからキャプテンとして、個人的な感情ではなく、チームの為に歯を食いしばって前を向かなきゃ…
しかし、試合はキャプテンの影響も無く接戦が繰り広げられています。
そして、2Q終了のブザーが鳴り10分のハーフタイムに入りました。
キャプテンは微動だにせず椅子に座って壁を見つめています…
私は
それじゃダメなんだよ!
じゃあ何でキャプテンやってたんだ!
みんな勝つために必死にやってんだぞ!
と、もし涼がこの状況なら言いに言っていたと思います。
辛いのは分かるけど、みんなに勝ってもらえるよう盛り上げないと、自分の中学バスケも終わってしまいます。
切り替えたキャプテン、そして後半スタート
10分のハーフタイムも終わり、3Qの途中位からやっとキャプテンは試合を観るようになり、少しづつ声を出し始めました。
良く切り替えたと思いますが、コートの中で必死に戦っている部員たちはどんな気持ちだったのでしょうか?
自分の為だけにバスケをするならすぐにでも辞めた方が良い。
全てはチームの為であり、全ては勝利の為に行動しなければいけません。
試合は
涼、大翔、金剛、三井、3年生センターで何とか食らいついてる状況です。
追いついては追い越され、緊迫した状況は続いています。
3Qが終わった時点で金剛のスタミナが切れてしまいました……
まだ試合に出ていない3年生が多数います。
今の教育ならきっと出すのだろうな…と思ったのですが、顧問は金剛を下げていつも出ている3年生フォワードを投入しました。
後にこの時の事を顧問から聞きました。
顧問「本当に出れなかった3年生には申し訳ないと思っています…でも、2年生を外す訳には行かなかった。その瞬間に負けを意味するから…」
私は顧問に「普通の事だから気にする必要ないですよ。だったら残りの3年生がもっと練習して、最初からスタメンで出れるようになっておけば良かっただけですよ。」
と、伝えました。
出れなかった3年生や保護者には申し訳ないけど、勝つためにやってきた人がコートに立つべきです。
それを「ウチの子も頑張ってたのに何で出してくれないの?」は、勝つためにやってきた部員たちに失礼です。
しかも、練習を1回も観たことも無いクセに平気でそう言う事を言ってくる神経を疑いますw
私の回想
私が中学でバスケをやっていた時にもありました。
キャプテンだった私に友人の母親が
友人母「どうしてウチの子は1回も試合に出れないの?おかしいでしょ?あの子だって頑張ってるのよ!ひいきなんじゃないの?」
と、嫌味たっぷりに言われたので
中3の私「いやいや、彼がちゃんと練習しないからですよwあと、もし努力もしないし上手くもないのに試合に出れるなら、俺はこの部活を辞めてますよ。彼からなんて言われてるか知りませんが、間違いなく彼は一生懸命練習をしてませんよwもしあれなら練習を観に来たらどうですか?それで全部分かりますよ。」
友人母「なに?ウチの子が不真面目って事?そんな事は無い!一生懸命やってるって聞いてるし、いつも足が痛いとか言うくらいやってます!」
中3の私「それはみんな一緒だし、スタメンは家に帰っても個人で練習してますよwだって控えになりたくないから…あと、俺疲労骨折してた時も普通に練習してましたよw手の指にヒビが入ってもずっとやってたし、熱が出ても大会に出たし、足首を捻ってもテーピングをグルグル巻きにしてみんなと同じように毎日練習してましたよ。今、試合に出続けてる奴らは全員そういう奴らなんです。彼はどうでしたか?」
友人母「ぐっ……私は絶対におかしいと思う!一度先生に相談してみます!」
中3の私「それでもし彼が試合に出れたら俺部活辞めますわwスタメンの奴らも辞めちゃいますよ?それくらい熱量の差があるんですよ…」
友人母「……………」
バスケを始める前はいつも自分の子供は試合に出ていた…
とかも言ってましたが、それは小学生の時の個人競技の事なのですw
マジでめんどくせー親だなと思い嫌いになりましたが、今でも友人とは酒を飲んだりして仲良くしていますw
そして…この熱量って奴がこれから始まる涼のバスケ生活と私のコーチ生活を阻む解決できない問題として悩まされる事になってしまいます。
最後の8分
……話を試合に戻しますw
4Qに入っても4点差からお互い離れる事はありません。
徐々にお互いスタミナが持たなくなってきたシーンが増えてきました…
そろそろどちらかが突き放すだろうな…と言うか、食らいつけなくなるはずなのですが…
しかし、どちらも譲らずとうとう同点になりました!!!
もう会場は決勝戦のような熱気に包まれ、応援する大人の声もヒートアップし始めました。
一応言っておきますが、県大会でも無く、地区大会でもなく、一番最初に行う市内大会の1回戦ですww
もはやこの熱気は全国大会の決勝戦ですww
もうここからは根性だ!とか言う人もいますが、それは違います。
こういう状況を経験してきたか、それともこういう状況を想定して練習してきたかの差が必ず出てしまいます。
そして、経験も練習もしてこなかった鳥川中学校は3点差で負けてしまいました……
涼は悔しそうな顔をしていました。
自分のプレーに納得いっていないのでしょう。
バスケはそんなに甘くない!
と言う事が少しずつ分かって来ているのだと思います。
この瞬間をもって3年生の中学バスケ部での活動は終了しました。
彼らの1つ上の先輩達はそれなりに強く、地区大会にも出場していました。
その彼らと練習をしていたし、間近で見ていたはずなのにどうしてここまで差が出てしまったのかは、当時の私には全く理解できませんでした。
大体、1つ上の先輩が強くて顧問が変わらなかったら、それなりのチームになると思っていたのですが……
何はともあれ2年3ヶ月お疲れ様でした!
後で聞いたのですが、バスケ部の3年生はかなり頭が良いらしく、受験も余裕だったそうですwww
そっちが得意だったのかww
次回は
いよいよ涼たちの時代がスタートします!
ぜひご覧ください!!!
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