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シャニアニ総括 〜一体何を描きたかったのか〜

※本編にはアイドルマスターシャイニーカラーズ アニメーションの3章までのネタバレを含みます。
また、客観的な視点に努めていますが、ネガティブな意見も書かれます。
「自分は楽しかったからネガティブな意見は見たくないよ」という方は読まないことをお勧め致します。
一万字あるよ。

シャニアニを1〜3章まで全て見終わった。

総合的な感想をまず述べると、「中途半端だな〜!」という感想だった。
どこの層に1番に訴えたいかがかなり中途半端で、色んな層に喜んでもらいたいという思いが欲張りすぎて全部に対してちょっとずつ訴える、けどそのせいで全部が満足いかない作品になるというなんとも中途半端な作品で、何を描きたいがはっきりしなかった印象であった。

だが、逆に言えば、視点を区切って話していけば明確にたくさん良かったところがあったということ。悪かったところもあったということ。
なので、ここでは一概に「ダメだったよ」と終わらせず、いくつかの視点に分けてシャニアニの自分の中の感想を分解していきたい。
まず、冒頭で自分の中の感想を二つの視点に分解する。
その次に、先に挙げた「喜んでもらいたい、いろんな層」を分解し、どういうところが中途半端だったかを明確にする。
最後に、では自分はシャニアニにどうして欲しかったかを総論として述べる。



自分の感想を分解する〜アニメとして、ファンとして〜

自分の感想は下記の二つに分解する。
①自分の素直な想い(3rdからの3年シャニマスファンの意見)
②シャニマスを知らない人に「アニメ」として勧められるか

①と②では結構感想が変わってくるので、そこを明確に分けておきたい。
②はよく「新規が気にいるかどうか」という視点で語られることが多いが、新規の目線なんざ私はわかるわけはないので、あくまでも「私がアニメとして勧められるかどうか」で考える。

①自分の素直な想い(3rdからの3年シャニマスファンの意見)

これでいうと「キャラが動いているだけで嬉しい〜〜〜!!!!!楽しい〜〜〜!!!!!!」なのだ。
いや最初と言うとることちゃうやんけと思わんで欲しい。色々抜きにして語るとこうなるのだ。

まず自分のシャニマス歴を前置きしておくと、ファーストは一応一回見たという程度。ノクチルストレイシーズコメなど、新規組をメインで追いかけている。3rdからライブ現地、セツナビートとリリイベ以外は全て現地で両日追っている。

シャニマスファンとしては長らく映像化を待ち望んでいたし、アニメで今まで見えなかったところがたくさん見えてくる。
舞台挨拶でも演者が言っていたが、自分の今まで考えていた通りの動きをしてくれるのも嬉しいし、考えと違う動きでも新たな発見となる。
それがあるので、ぶっちゃけいうとシャニマスファン的にはキャラが満足に動いたり、普段シャニマスゲームで見せない動きをしてくれるだけで嬉しいのである。

しかし、困ったことに
「それシャニソンでも見れるくないか?」という疑問も湧いてくる。素直にアニメはアニメでただ見ているだけで楽しみはしたが、それ(シャニソンでも似たような感情は得られる)があるため、
「じゃあシャニアニ、もう一回見ますか?」
と言われると
「一回で満足だなー」
という感想に落ち着く。
シャニマスファンの視点に立った時、5話以降はストーリーはほぼ覚えていない。キャラのそれぞれの動きを見ていただけだった。

唯一見返したいと思うのは2話と4話だろうか。
あの話は、明確にアニメの利点を理解していた。2話はPV撮影を通してアンティーカを描いていたが、雨の中撮影に挑むといったところ、戦闘シーンや演技がだんだん上手くなっていく描写など。シャニマスのテキストと音声の形式ではどうしても見せづらいところをしっかり見せられることを生かして作られたシナリオで、最後のPVのシーンも大変熱かった。
また、4話も非常に良かったのは、これは2話にも言えることではあるが、ライブシーンを通じてキャラクターがどうアイドルとして皆に受け入れられているのか、どういうことをしたいのか、そう言ったことが伝わる話の構造になっていた。起承転結もはっきりしていた。
シャニマスのゲームはゲームである以上、ライブシーンはシャニソンならゲームパートはシナリオパートと明確に分かれてしまうし、enza版シャニマスはテキストゲームである以上、どうしても内面描写がメインとなり、演技そのものを直接的に見せることは難しい。
キャラクターの心情を描きつつ、シームレスにライブパートへ移行できるのはアニメでしかできない表現である。アニメの利点を理解しつつ、シャニマスをアニメに落とし込むということができていたのは、強いて言えばあの2つの話だけで、それ以外は
「まあ、新規向けなのかな」
ぐらいに思ってキャラクターの動きを楽しむことに専念したので、そう考えると割と良かったと思う。

シナリオがもっと深いものを期待はしていたが、そうなると「明るい部屋やってくれ」みたいな話になるし、あまりそこはないならないでいいやぐらいの気分だった。

なので総括すると「ぼんやり眺める分には楽しいけど、2話と4話以外は見返すほどではないかな」という感じであった。

②シャニマスを知らない人に「アニメ」として勧められるか

これが問題であった。

全く勧めることができないと言わざるを得ない。

これは明確にいくつかポイントがあるので説明する。

②ー1.真乃の心情がわからない
②ー2.起承転結が弱い
②ー3.映像美もそんなにない
②ー4.話を詰め込みすぎ

順を追って説明する。
先に述べておくが、この章では“シャニマスを知らない人にアニメ単体で勧められるか“の観点で論じることに徹するため、
「このコミュを見ればそんなことわかるじゃないか」
「ファーストライブを見ろ」
などの意見は受け付けない。
そのために、視点を分けて語っている。

②ー1.真乃の心情がわからない
ここはかなり大きいところだった。
真乃が中心となって1話から12話まで描いている以上、真乃の描写はかなり重要で、深く描いていく必要があったはずだ。
しかし、1話でまず『なぜ真乃が悩んだのか』『何を悩んだ結果、何をしたくて283プロに入ったのか』がまるでわからなかった。
本来は、ここでもっと、真乃が学校で馴染めなくて困っているとか、真乃が学校での失敗とアイドルへの不安を重ねているとか、そういう内面をもっと描くべきであった。
そういったものがないまま、ただ淡々と雨が降ってたり晴れてたりする道をぼんやり歩いていたら突然何か思い立ってやります!となった、という感じだった。
だから「悩まない子なのかな」というぐらいに見ていたが、その後灯織とすれ違いが起きる。その時、真乃は灯織に気を遣いすぎている描写があり、これを起点に真乃の心情をもう少し描くかな・・・?と思いきやそうでもなく、なんだか割と早めに問題は解決した。その後もセンターで悩んでいるようなそぶりはあるものの、気づいたら勝手にいろんな問題が解決しているような感じで、終始『問題に対して真乃はどう考え、どう挑んだのか』がまるでわからないとなるシーンが多すぎた。

その後のSpread the Wings!!でも、センターを任されてちょっと不安げ、かつ、時間のない中新たな曲を挑むというまあまあ悩むところや葛藤があってもいいものだが、ただ「不安だな…」と思っていたのにいつの間にか勝手に解決しているような感じで進み、ライブも問題なく成功して終わってしまい、後述するが起承転結がしっかりとした流れで踏まれていなかったため、ファーストライブまでが淡々と終わってしまった感が否めなかった。

この辺りで自分が求めている真乃の心情描写は、たとえば、自分が見ていない真乃のSTEPであったり、他のイルミネのシナリオを読めばそこの意図もわかるかもしれない。
ただあくまでもここでは『アニメ単体として評価できるか』を見ている。そういった補助がなくてもこれ単独で楽しめるかの評価である。
それを考えた時に、これでは真乃がどういう想いでセンターになったのか、真乃はセンターになってどんな悩みがあったのか、葛藤があったのか。
それがあまりにもはっきりしない話であったと思う。

ファーストライブが終わった後も特に振り返りもなく終わった。なので、真乃がこのファーストライブに込めた想いの振り返りもできず、真乃が何を求め、何を悩み、最後に何を得たかがはっきりわからないまま、ゆるゆると終わってしまった。

なのでアニメの一番最後と最初(12話と1話)に入れられた「私たちは、知らなかったんだ…」と羽が飛ぶみたいなシーンも、おそらくステージの上のあの光景を知らなかったけど見れて楽しかったな的なことなんだろうなと形式上は理解した。理解したが、真乃がなんでそれを見て嬉しいと思ったのか、真乃はなぜそれを今までは知らなかったのか、知ろうとしなかったのか。そのあたりはまるでわからなかったので、そこで感動したり心が動くことがなかった。

②ー2.起承転結が弱い
極端に言ってしまうと『起承承承承承結』という感じで、『転』があまりにも弱すぎる。それか、ない。ほとんど。
先程の②ー1.でも指摘したように、真乃の悩みもなんとなく解決してしまっている。
それ以外で1番目立っていたのはWINGの敗退シーンだろう。
WINGでの敗退は、直接的に描かずなんだか中途半端に泣いているシーンだけ描いていて、どういう思いで、その日どういう演技をし、どういう人々に負けたかが何も分からず、そしてそれを長々と引き摺ったりそれが悩みでファーストライブの練習がうまくいかない・・・という話があるわけでもなんでもない。
特に、WINGの敗退は大きな転換点になるはずで、であればもっと衝撃的に描くべきであった。いや、衝撃的に描かなくても、もう少し丁寧に描いて欲しかった。

ただ『負けました。では次行きます』という感じしかなかった。

ここでも注意だが、シャニマスプレイヤーはWINGの敗北の重みや思い出があるので、シャニマスプレイヤーはアニメで深く描かなくてもその重みを感じたかもしれない。
しかし、『アニメとして単独で見た場合』は違う。
(シャニマスプレイヤーとして見た時でも、あそこはよくわからなかったが…)
全体的にそう言った、あくまでもプレイヤー向けに「シャニマスやっているならわかるよね」とでも言いたげなシーンが多かった印象がある。

シャニマスやっている人だけにわかる要素を入れること自体は別にいいのだが、肝心の『転』のところでされてしまうとまずい。
シャニマスプレイヤー以外からすると、ただ淡々と抑揚なく終わったアニメにしか見えず、シャニマスプレイヤー以外には需要のない作品になってしまう。

むしろ、この起承転結に関しては、たびたび評価している2話と4話は単体で見ればそれがしっかりとできていたので、起承転結を踏むことができないというわけではないと思う。なぜあの流れのように、何かしらの困難があり、それを乗り越える中でアイドルのスタンスがわかる、という描き方が全体を通してできなかったのかがよくわからない。あれをただ全体のアニメ通じてやってくれればいいだけだと思うのだが…。

作品は抑揚と起承転結で描かれることでその良さは際立つ。
抑揚と起承転結がまるでないのなら、あとは映像美的なところで訴えるしかないだろう。

②ー3.映像美もそんなにない
ちょっとストーリー微妙だなとなるのであれば、あとは映像美で推すしかないだろう。
が、それも言うほどない。
かなり現実路線の映像なので、大迫力のシーンがあったりとか、
非現実的な映像で目を引いたりすることもない。
それこそ、先に挙げた2話(アンティーカのPV撮影)なんかは、ライブシーンの良さと、殺陣のシーンなどがちょっと映えるかもなという感じはあったが、それ以外はとくにない。
他の作品を例に出すと、同じ3DCG作品である『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVEスタリッシュツアーズ』などは、基本的にライブというスタンスであるが、アニメであるためライブシーンだけは演出としてかなり非現実的な映像を交えてライブを表現していた。

うたプリについて詳しい訳ではなく、これを見ただけなので詳細は割愛するが、逆に言えば初見であったとしても映像で楽しめるライブシーンであった。

シャニアニはどうも現実路線に一貫しており、特に現実から大きく外れる抽象的な表現はほとんどなかった。
それで何か良さを出せていたかというと、結局それを出せるのはどちらかというと手書き表現では…というような気もしているが、具体的な指摘ができないので深くは追求しない。

少なくとも、3DCGの本来強みであるような上記のような表現はなく、それを抑えたぶん別の良さが出たかというとそうでもないということはわかる。

②ー4.話を詰め込みすぎ
総じて、全アイドルを描こうとしすぎたり、全部の曲に触れようとしすぎたり、どうも詰め込んだ感がとても強かった。
何組ものアイドルの描写が入れ替わり立ち替わりで描かれるぶん、結局それぞれが何を言いたいかがいまいち伝わらない構成になっていた。
最後のファーストライブもシーンも、全曲を無理に入れようとしたのかな?という感じでぎゅうぎゅうだったし、ファーストライブが終わったらすぐに話が終わって「えっこれで終わり!?!?」とかなり慌ててしまった。

シャニマスファン的には確かに全部見たいのだろうが
・全ユニットを描こうとしてる
・ツバサグラビティとSpread the Wings!!どっちも描こうとしてる
・WINGとファーストライブどっちも描こうとしている
と、その努力と姿勢は確かに買いたいところではあるのだが、そういったところがあまりにも多かった。そのため、話があまりにもバタバタとなって、結局最初に述べた『どれも中途半端』という状態になったのではないのかなあという印象だった。
次章では、ここの部分を深掘りしていくこととする。

一体どこを描きたかったのか〜『中途半端』を深掘りする〜

さて、本題だがでは一体どういうところが中途半端だったのだろうか?
先に挙げた項目をメインに紐解いていく。

・全ユニットを描こうとしている

もちろん、シャニマスファンとしては全てのユニットを描いてほしい。
描いて欲しいが、それゆえに全てが中途半端になってしまった。
本来、真乃を中心に描きたいのであれば、開き直ってもっとイルミネーションスターズを中心に据えて描いて欲しかった。
1〜4話まではそれなりに構成はうまくいっていたと思う。それぞれのユニットを描く中で、ちょっとした日常を描き、それがちゃんと次の活動につながる。特に放クラは、ちょっとした活動が実は4話で生きてくるということがはっきりとわかるシナリオになっており、非常に丁寧な構成だったと思う。
しかしそれ以降では、アルストと放クラとアンティーカを中途半端に描く割には、うまく1〜4話のようには行かずに半端な描き方だったと思う。

特に気になったのは3章アンティーカだ。
アンティーカの感謝祭コミュのように、アンティーカがWING後忙しくなり、お互いがお互いの仕事につきっきりになり、だんだん距離が出ていく…というところまで半端に描いて何かあるように見せておきつつ、結局何もなかった。
あれがなんの障害にもならないのであれば、描く必要はないと思う。その分イルミネの深掘りに注力して欲しかった。
一瞬2期にむけての伏線(2期でアンティーカ感謝祭シナリオをやる)ということも考えたが、伏線であればあそこのツバサグラビティの歌唱練習時にもう少し何か禍根や違和感が残るような描写がなければ意味がない。

あんなに半端になって結局最後まで書けないのであれば最初からどれかに集中して欲しかったというのが見た時の感想であった。
しかも、そこを半端に触れた分、自分の中では「アンティーカとイルミネに触れた分、放クラとアルストが後半ちょっと寂しかったな」という印象になってしまったし、そう考えると『全部描ききるか、どれかに偏らせるか』という観点でも製作陣のスタンスがはっきりせず、中途半端だった。
そこはせめて全部頑張って満遍なく描こうとすることぐらいには注力してくれよ…と思った。そういう点でも、中途半端だったと思う。

もちろん、この意見は今これ(全体を満遍なく描こうとしたシャニアニ)を見たから言えることであって、最初からどれかに偏って描いたら他のPから非難が結局は来てたのだろうけれども、自分としては半端なよりかはどれかに注力した方が絶対にいいと思っている。

・ツバサグラビティとSpread the Wings!!どっちも描こうとしてる

最初、ツバサグラビティという曲が出てきて、歌詞を読み解こうと紐解いていくシーンがあった。それについて各々考えて歌うわけだが、ここも自分は結局どういう想いで歌っていたかがよく伝わらなかった。

ツバサグラビティの「可能性、最初の勇気だね」のあたりに触れたところで、はづきさんが一言言って上手く歌い切った恋鐘の描写があったが、あまりにも浅すぎる。
歌詞について踏み込むのであれば、もっとこれを持ち帰って、悩んだり、どういう意味かを考えて、1回目はうまくいかなかった。けれど、自分なりに考えて、こう考えたらうまくいった、と言ったような、キャラクター自身たちで考える過程が欲しかった。
それが特になく、ぽっと出ではづきさんが解決してしまい…。

それ以外にも、メインとなるべき真乃のこの歌に対する想いもいまいちはっきりしないまま、なんかみんなが勝手に「真乃すげー!」みたいな感じで見入ってしまい…。
「まあ、よくわかんないけど解決したのかな」ぐらいに流して見たが、問題はその後。
突如いきなり『Spread the Wings!!』が追加になるという謎の起承転結の『転』がきてしまった。起承転結とはいきなり転を入れればいいわけではなくちゃんと前置きや伏線が必要なんですが…。

何がここで自分が不満だったかというと、『Spread the Wings!!』の追加は“一応”この283プロのアイドルたちにとっては一個の障害になり得る、超えるべきハードルになり得るような描き方をしている割に、大して深く描かれなかったというところだ。
プロデューサーが言ったように、いきなりの曲追加となり、時間もない。であれば、それ相応の理由がいるし、アイドルたちが取り組むモチベーションも必要になる。
バックボーンを描く必要が必ずあったと思う。

ただ、ここではその説明は全くなく、終始結局その描写はほぼなかった(仮にあったとしても、少なくとも自分はそれを感じなかった)と言っていい。
プロデューサー側がなぜ急にこれを追加したかの説明も想いも描かれない。
真乃がなぜこれを取り組もうとしたかの想いもわからない。
逆に他のメンツもなぜそれに同調したのかもわからない。
プロデューサー側、真乃、他のアイドル、それら全てのこの『Spread the Wings!!』に対する想いはわからなかった。

なのでここは2曲どちらも取り上げるよりも、片方の曲を掘り下げることに専念し、せめてどちらかの曲については「どういう想いでアイドルは歌っているか」「どういう想いでプロデューサーはこの曲を起用したか」といったバックボーンにもっと触れるべきだったと思う。

・WINGとファーストライブどちらも描こうとしている

これが全体の起承転結でスッキリしない部分であったかもしれない。
一章時点でも『WING』がしっかりと目標になっており、それは問題ない。
問題ないが、前述(②ー2.起承転結が弱い)にもあるようにWINGの敗退シーンは目標になった割にはあまりはっきりと描かれないし、その後の描き方もどうもスッキリしない。WINGを一応は8話近くかけて目標にして目指していたのであればちゃんと強くWINGに挑み、WINGで実際にパフォーマンスする姿を描き、それで負ける。
あるいは、その負けた姿をはっきりと書きたくないのなら、せめて『それを得てどうファーストライブに挑むのか?』を描くべきだと思うが、それもない。
いったんの目標に据えられたWINGがなかったものかのようにファーストライブを目指す話が始まる。

じゃあ、最終目標となったファーストライブでしっかりキャラクターの想いを描くのか?と思えば、こちらもバックボーンは描かれないし、詰め込みでバタバタと終わった。全ユニットの全演奏を絶対描け!という圧でもかかっていたのか?と言わんばかりに全曲全ユニット偏りなく描いていたが、そのせいでかなりバタバタで各々が短時間すぎたし、すでに1〜4話あたりでやった曲であれば、それを超えるように描いたり、違いの差を出さないのであればもう一度描く意味があったのかが甚だ疑問であった。

正直、これはどっちも描いてうまくいく世界線も全然あったと思うし、それでも別にいいのだが、どっちも描くのであればちゃんとWINGとファーストライブの繋がりを描くべきだと思う。先に挙げたように、負けを次につなげるようにちゃんとその過程を描くべきだ。
そのつながりが描かれず、しかも単品で見てもそのライブ・オーディションに挑む想いやバックも描くことができないのであれば、どちらかだけに絞るべきだったのでは?という想いは否めない。

どちらも踏み込みがどうにも浅く、かつその割には謎に二つの目標がある(しかも、ファーストライブは最初から出されていたわけではない)という状況だったので、アイドルがライブに挑む姿勢の描き方もどうも中途半端になってしまったと思う。

総論:自分はシャニアニにどうして欲しかったのか

結局自分は、頭に述べた『中途半端だったなあ』という感想に終始する。
なので、最終的には『どれかに専念して欲しかった』というのが、1番シャニアニにして欲しかったことである。
どれかのユニットを注力して描く、一つの曲をしっかり深掘りする、ファーストライブを全力で描く、そう言ったことをしてほしかった。逆に、『全部描きたい!』というのであれば責任持って全部を丁寧に描いてほしかった。
全体的に、描き方もそうだし、作り手側のやりたいこともそう、全てが中途半端だったという感想だったので、どれかだけはしっかりと軸を持ってやってほしかったと思った。

ただ、一つ言うのであれば、自分はシャニマス3rd組であり、イルミネPではないので、イルミネのシナリオやファーストライブをがっつり見た(現地などでなかったとしても、ちゃんと思い出がある)人の感想はもう少し聞きたい。そこの感想や観点は基本的にこのnoteでは書けていない。

もし、
「このシナリオを読み返せ!そうすればわかる!」
「そうすればもっと良さがわかる!」
というユーザーがいれば教えて欲しい。読みたいと思う。
それはもっと深掘りしたい。

しかし、残念ながらそれをやっている時点で、少なくとも3rdから3年シャニマス追ってる自分ですら切り捨てられているわけで、アニメとして出来がいいかというとあまりに内輪向け過ぎるし、そんなことするなら最初からenza版のシナリオでそれをやればよくないかという想いが捨てきれない。
enza版シナリオなら、別に自分もいきなり初めに『バイスパイラル』からシナリオを読み出して「これどうなってるの!?」「意味がわからん!」と言い出すことはなく、ちゃんとまずは『きよしこの夜』あたりから読むことにする。だから、enza版シナリオなら、あるいは、enza版と全く同じ立ち位置でアニメを作ったのなら予習はするが、もうそこまでくるとあまりアニメ化した意味がないような気がするが…。
OVAや何かの特典アニメなど、コア層向けに実装すれば良かったのではいいのではないだろうか。

ただそうなる(OVAを作るとかとなる)と、「そんなにコア向けに作るんならもっと尖ったところ(時系列的にあり得ないが、アイムベリーベリーソーリーや明るい部屋など)を映像化しろよ」という意見になるし、このアニメのシナリオは自分が好きなenza版シナリオと比べるとあまりにも浅い。
enza版は、細かな効果音、暗喩。テキスト上では「…」だけなのに、細かに演技を変えてくる声優さん。そういった細部のこだわりと読み応えがある。それらは、アニメにはほぼない。なので、「このアニメはコア向けなんだ!」と反論されたところで、「わざわざこれをコア向けに作った意味、何?」「enza版シナリオ本当に読んでる?」という感想になる。


さて〆に入るが、総じて
・キャラクターの心情描写不足
・浅く広く描きすぎている
・起承転結が弱い
・どの層に訴えたいかが、不明瞭
・どの層にもウケるように作ったにしても、中途半端
という結論で、「アニメ単体として」見た場合にはあまりにも出来が悪いと言わざるを得ない。

ただ一方で、冒頭で述べたように、「ファンとして」見た時には十分に満足できる要素も多かった。だからこそ、余計に「なんでアニメ単体としても評価できる作りにしてくれなかったんだー!」という思いが強い。自分が他人に快く勧めることは、現時点では出来ない。

ちゃんと制作の軸がはっきりと視聴者にもわかるようにし、かつ、描くものもしっかり重点を置いて制作してほしかったと思う。

2期に期待したい声もあるが、1期がちゃんと売れないと2期もないと思うので現時点で語ることはあまりない。従来のシャニマスであれば、1期で手堅くやった分(いや手堅くできてはないと思うが)、2期でのびのびやってくれると信じたいが…。

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