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FF16に究極幻想の残像を見たという話【クリア後感想】

ファイナルファンタジー16、クリアしました。

FF14プレイヤーとして吉田Pは「やってくれる人」だと信頼しているので、16をスクエニ第三開発事業本部が手掛けると発表されて以来、ずっと発売を心待ちにしていました。

プレイ中のつぶやきは↓のツリーに。

一通りクリアした気持ちとしては、よかった:イマイチが7:3くらい。大筋では楽しめたものの、手放しでは評価できないというのが正直なところです。個人的に、国内メーカーの超ビッグタイトルが「今回はシナリオがメインディッシュです!」と声高に宣言してくれたことへの期待感がかなり高かったのですが、その結果は・・・。「漆黒のヴィランズ」と「暁月のフィナーレ」のシナリオが生涯ベスト級に気に入っていた身として、率直なところを書いておこうと思います。

※本稿では、とくに後半から具体的にシナリオの中身にも言及してます。

<まずは、よかった部分から>

■召喚獣合戦だ!

召喚獣同士のバトル、頭悪すぎて最高じゃないですか?
普段は「人が人として生きるために・・・俺は・・・」とか眉間に皺寄せて生きてるクライヴさん、召喚獣になった瞬間にイキイキしすぎ。ジャンプびゅーん!ビームばーん!爆発どーん!オラオラオラァ!プレイヤーのIQも一桁代に下がる。

最初はややモッサリ目の操作感ですが、バトルを重ねるうちにどんどん動きが機敏になり、やれる事も増えるので、ドミナントとしての成長とプレイヤーとしての習熟がリンクするのがとても良かったです。

とくに中盤に戦うアレとアレはまさにピークで、正直あれがプレイできただけでも充分おつりがくるくらいの体験でした。あんたたち特撮とか、ロボアニメとか、好きなんだな。俺もだよ!って感じです。やっぱ二号ロボとは合体しなきゃなぁ!もっともっと色んなシチュエーションの召喚獣合戦がやりたいのでそこはDLCでお願いします。

QTEに関しても色々と言われることも多いようですが、個人的にはバトルのいいアクセントになってると感じました。

■アクションゲームとして

個人的に反射神経使うゲーム全般があまり得意ではないのですが、直感的な操作でなんとなく動かしてるだけでもキメキメにカッコよく戦ってくれるのでよかったです。「この召喚獣もそこそこ動かせるようになってきたな」くらいのタイミングでテンポよく次の召喚獣が解禁されていくので、「自分が上達している感覚」がエンディングまで途切れなく続いていくのは、本当に丁寧に作られているなと感心しました。この辺は相当な時間テストプレイを繰り返して調整したのではないでしょうか。

とにかくノンストレスで最後まで楽しめる作りになっており、その辺は事前プロモーションで散々触れられていた通り。前作の失敗から「FFブランドの再建」が至上ミッションになっている事は想像に難くなく、スクエニなりにとにかく「ゲーム的なつまづきでプレイを止めるような事は起こさせない」という鉄の信念のもとに作り込まれていると感じました。難易度調整を「便利すぎるチート級アクセサリー」という形で実装したのは発明だと思います。RPG的な育成面も、コアなゲーマー目線だと食い足りなさはあるのですが、これもライト層向けの割り切りと捉えれば納得できる範囲内です。(ただそもそも論として、網を投げるべきライト層がどの程度PS5ユーザーにいるのかという疑問はあったりしますが・・・)

ただ、過保護すぎる面も散見され、とくにボスにやられた時に「敵のHPは減ったまま、ポーションは全回復してリトライ」になるのはさすがにやりすぎ。難敵を乗り越える達成感より、「なんかズルして勝っちゃったな・・・」みたいな罪悪感をおぼえる瞬間すらありました。

以上のように、アクションゲームとしてはおおむね好感触で、最後まで楽しくプレイできました。

<不満点、の前に>

不満点を語る前に、自分がFF16に何を期待していたのかを明文化しておきます。

ちょうど初代PSくらいの時期に、描画力がガンガン上がって声も付けられるようになって、「もしかして、ゲーム(とくにRPG)って映画、漫画、小説などのあらゆる物語表現の上位互換になりうるんじゃ・・・?」みたいな幻想をみんながうっすら共有していた時期があったと思います。(敵の強さを感じさせるために何ページにも渡ってピンチ描写を重ねるよりも、攻撃一発でパーティが半壊した方がよっぽど「ヤバさ」を実感できたりする)

FF、とくに7~10あたりはまさにその先端を走り続けていたシリーズで、自分自身、小中高生くらいの思春期にその洗礼を受けた世代になります。

ただ、その「究極の物語表現としてのゲーム」という方向性はハード性能の進化とともに頭打ちになっていったように思います。おそらくですが、求められる作り込みのレベルに対して、金と手間がかかりすぎるというのが沈静化していったひとつの要因でしょう。プレイヤーの感想としてもその手のゲームって

「ずっと見てるだけwww」
「映画でやれよwww」
「一本道www」

みたいなものが多く、ひらたく言って「作るのが滅茶苦茶大変な割に報われない」という感じだったんじゃないかなと思います。(FF13なんかはまさに上記のような文脈で批判される代表格)

その後のいわゆるAAAタイトルのRPGは、縦に延びる「物語」ではなく、横に広がる「世界」を表現するオープンワールドが主流になっていきました。

個人的には、古くはゼノギアスだとか、最近だと十三機兵防衛圏とか、それこそFF14の漆黒・暁月あたりはまさにそういう「ゲームならではの物語」として最高だと感じていて、もっともっとシナリオに重きを置いたゲームが出てくれればいいなとずっと思っていました。

そこに来て、今回のFF16は吉田P自らが「最大のウリはシナリオ」と言っており、初代PSのころうっすら共有されていた「ゲームって映画、漫画、小説などのあらゆる物語表現の上位互換になりうるんじゃ・・・?」という究極幻想を形にしてくれるのか?という期待を、個人的に抱いていたわけです。

実際、体験版をプレイした限りではかなり近しいものができていたので、期待感は相当高くなりました。

で、実際どうだったのかというと・・・

※ ここから先は、ストーリーの具体的な内容に関して記述しており、だいぶネガティブな内容を含みます ※

<で、実際どうだったのか・・・>

期待していた身としてこんな事を言わなければいけないのは本当に本当に心苦しいが・・・

シナリオは、ひとことで言うと「凡」・・・でした、ね・・・。

つまらなくはないのですが、かといって記憶に残る鮮烈さもない。正面から受け取ろうとすると疑問点が無数に浮かんでくるので、途中から深く考えないモードに入って最後までやり過ごしましたが、やはり残念ながら数多の瑕疵を抱えているシナリオだと言わざるを得ないでしょう。

よろしくない点をネチネチと書いても非生産的で無意味なのですが、2年間楽しみにしていた自分の魂への供養のために、以下にシナリオ上でどうしても気になってしまった部分を3点記述します。

①第一印象を覆さないキャラクターたち
②悪い意味で「FFっぽい」悪役
③マザークリスタル、ベアラー、黒の一帯など、主要な設定の嚙み合わなさ

①第一印象を覆さないキャラクターたち

たとえばシドの第一印象は「人生酸いも甘いも経験してそうなイケオジ」といった感じで、実際それっぽい事をいうのですが、第一印象で抱いた「コイツってこんなヤツなのかな?」という予想はほぼそのまま裏切られることなく、最後まで「それっぽい事を言う」の範囲を出てくれません。

その他にも「いかにも献身的なヒロイン」「いかにもお調子者バディ」「いかにもな〇〇」・・・といったように、どこかで見たような性格のキャラがどこかで見たようなセリフを紡ぐことで話が進んでいきます。ChatGPTに「あなたはお調子者バディとして受け答えして下さい」と指示したら、ガブっぽい台詞で対応してくれそう。バイロン叔父さんあたりは結構面白みがあるのですが、それにしても「比較的面白い」のレベルです。

②悪い意味で「FFっぽい」悪役

FFの敵キャラって、なんか高いところから見下ろしながら「フフフ…失われし神と約束された真なる覚醒の時は近い…フフフ…」的なよく分からんこと喋ってて、コミュニケーションが成り立たなそうなイメージあるじゃないですか。

FF14漆黒に出てきたエメトセルクなんかも、みんな最初は「まーたフフフ系キャラがなんかゆーとるわ」くらいに思ったじゃないですか。

でもその胸中にある極めて切実な願いが肉付けされるにつれて段々目が離せなくなっていき、最後には「こいつの言ってる事も分かる!分かるが、分かるわけにはいかんのだ!」と号泣しながらドツき合うエモーショナルなラストバトルになってました。「FFっぽい敵キャラ」像を逆手に取ったとても魅力的なキャラだったと思います。

転じてFF16の敵キャラは、ベネディクタやフーゴあたりはわりと人間くさい感情で動いていてけっこう好感が持てたのですが、後半のバルナバス、アルテマはもう完全に悪い意味で「フフフ…」系をなぞってしまっており、「まーたワケわからん事言ってるわ」のままラストまで行ってしまった感じですね。
時計の針が完全に逆行してます。
後半ずっと「ワケわからん事言ってくるヤツを腕力でねじ伏せた」って感じだったがそれでよかったのか?

③マザークリスタル、ベアラー、黒の一帯といった設定の嚙み合わなさ

これが個人的には一番冷めてしまったポイントです。この辺の設定、かなりとっちらかってませんか?

端的に言って、クライヴの動機である「人が人として生きられる世界を作る」という志と、ゲームとしてやらされる「マザークリスタルの破壊」が繋がってないんですよね。

クライヴ「ベアラー差別許せねぇ!シドに協力するわ」←わかる
シド「あざす。ではマザークリスタルを破壊する」←?
クライヴ「協力します」←????

・社会インフラを支えているマザークリスタルを壊すという大罪を犯さなければいけないような明確な理由、ある?

・事実として、物語開始以前にドレイクアイが破壊され20年近く、序盤でドレイクヘッドが破壊されて5年経ってももなお黒の一帯は止まってないんだけど、なぜマザークリスタルの破壊に効果があると信じられるのか?

・一連の破壊工作がベアラー迫害を無くす事にどうつながるの?むしろクリスタルの供給量が減る事でさらに酷使されるんでは?(そもそも中盤以降、ベアラー差別問題自体が完全に後景化してしまうが・・・)

・ベアラーって先天的なものじゃないの?タトゥー入れられれば元王族でもベアラーですって、そんなアホな・・・そもそも13年間でどんな扱いを受けてきたのかもよく分からん・・・(以後、思考の迷宮にハマっていく)

こんな感じで、シナリオに向き合うと疑問点が無限に湧いて出てきてしまうんですよね。

決定的だったのはドレイクブレス周り。
あのクリスタル、「ロザリア公国の聖地だが敵国に占拠されており、奪還は亡き父親の悲願」だったわけですよね。

・・・それ、そんな簡単に破壊するか?
葛藤も逡巡も、びっくりするくらい「無」・・・。
軽々しく協力するバイロン叔父さんも何考えてんだ??
(まぁクライヴ自体もうロザリア公国に未練は無さそうではあったが)

このあたりずっと「黒人差別を無くすために竹島にある原発を爆破する小泉進次郎」みたいな話になってて、「なにがどうなってそうなった?」とずっと混乱してました。

このへんで、まともに考えてもしゃーないな・・・と、心が離れて、すーーっと冷めてしまいました。「受け手に想像させる大人の演出」と好意的に解釈するには穴が多すぎます。

■まとめ

今回は制作上ではそこまで大きなゴタゴタはなく、企画当初からの主要スタッフも変わらず、マスターアップも余裕を持って完了したと聞いていたのですが、そもそもの制作過程の最上流、根本的なキャラ造形・設定レベルがここまでガタガタになってるのは不可解ですらあります。シナリオの前廣さんが手掛けたFF14新生・蒼天も似たような薄味さだったんでその辺に理由があるのでしょうが、これにGOを出した吉田Pへの信頼感がだいぶ揺らぐレベルで・・・。

ただ念押ししますが、ゲームとして駄作とか買う価値なしとか、そういった事はまったく思いません。むしろプレイしている間はかなり楽しんでました。Twitterで感想漁ってると絶賛してる人も多いですし。大傑作とまではいかずとも、PS5買ったらとりあえずプレイして損はないレベルの良作をここで出してくれた事で、FFシリーズはひとまず息継ぎができたと思います。

ただね、エンディング見終わってあれこれ気になった部分を活字にしているうちに、プレイ中はあえて直視していなかったアレコレの不満が自分の中で実体化してしまい、いつの間にかこんな長文になってしまった・・・。事前プロモーションから体験版までがかなり盛り上がって、「潰えつつあるストーリードリヴンゲーの雄」としてかなり期待値が高まっていたので、現実を受け入れるのに時間がかかりました。「まぁ、悪くないッスね?」なんて冷静になりたくなかった。俺は感謝号泣しながら「吉田ぁぁぁ!」と叫ぶことしかできない哀れなおサルになりたかった。

まぁ、なんといいますか・・・FF17のシナリオは石川夏子女史がやってくれるのを期待してます!


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