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【少年野球】ずっとレギュラーでいる子の不幸とは

 私はこれまで、試合に出られない親子の苦悩に寄り添う記事を書いてきた。しかしずっとレギュラーとして試合に出続けている子が幸せかと言えば必ずしもそうではないという話をしたい。

 まず弱いチームや人数の足りないチームでは、運動神経が良くてセンスのある子に負担が集中する。特にピッチャーとキャッチャーのどちらもやらされる場合、一試合での投球数は相当なものになる。親は自分の子が目立つポジションを2つも任されて嬉しいかもしれないが、小学生の頃から肩・肘にそれだけの負担をかけるというのは怪我の元であり先々が心配だ。

 ポジションの面では、勝利にこだわるチームほどポジションを固定してしまうという問題がある。同じポジションをずっとやらされ本人はすっかり飽きていることも多い。違うポジションを経験することは仲間にのプレーに対する理解も深まるのだが、そうした経験が出来ないのは不幸だ。
 また、中学でも同じポジションをとれれば強みになるだろうが、もっとうまい子が現れたりすると1つのポジションしか経験しなかった子は不利になる。

 レギュラーの子の親が熱くなりすぎる傾向があるのも問題だ。
 「お前のせいで負けた」「もっと自覚を持て」と、とにかく少しのミスも許さない親がいる。そういう親の子はだんだん親の目ばかり気にするようになってのびのび野球が出来なくなる。
 ずっとレギュラーでいた子の方が野球に愛着を持っていないことも往々にしてあるのは、そうした親の過干渉と、小学生ですでに燃え尽きてしまったためなのだろう。

 そしてレギュラーとして特別扱いを受けている子の中には、ベンチの子を馬鹿にする子が出てくる
 「特別扱い」というのはちやほやされることだけを意味しない。もちろんそれが理由の子もいるが、もっと良くないのは監督やコーチ、時には親にまで厳しい指導をされ続けると、そのストレスからベンチの子たちを馬鹿にするようになることだ。「こんなに頑張っている自分たちはベンチで何もしない子より上だ」と。 
 そうしたゆがんだ優越感を持ってしまうとすれば、それは間違いなく不幸だ。チームスポーツとは何かを多方面から学ぶ機会を逃し、思いやりや感謝の気持ちを持つことが出来ず、誰かを馬鹿にして楽しむことを覚えてしまった子どもにとっては、少年野球の経験はむしろマイナスだったことになる。
 
 ずっとレギュラーでいる子に上記のような不幸を背負わせないためには、まず親がしっかりしなければならない。子どもに過度な期待をしていないか、厳しすぎる課題を与えたり練習をさせたりしていないか、適切に褒めたり励ましたりしているか・・・そして子どもの活躍に自分のプライドを重ねあわせ一喜一憂していないか、親は自分自身と向き合わなければならない。(そういう親は野球だけでなく、学校や塾の成績、運動会のかけっこにいたるまで自分自身を重ねる傾向がある。)

 もちろん指導者は大いに責任を感じなければいけない。勝ちにこだわりすぎてレギュラー子のたちから野球を楽しむ余裕を奪ってはいけない。子どもの心にゆがんだ優越感を芽生えさせるような指導をしてはいけない。
 
 再三言ってきたことだが、少年野球は子どもの教育現場そのものだ。プロ野球選手であっても人間性を問われる時代に、少年野球の現場が「野球バカ」を早々に生み出す場所になってはならないのだ。
 少年野球で活躍している子が心身ともに健康に育つためには、指導者も親も「教育」という観点を決して忘れてはいけない。
 

 
 
 
 

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