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BASE ART CAMP diary vol.04 ここじゃない世界へ旅してきました

はじめに

 建築と芸術が好きな「BASE ART CAMP」1期生、八木のとても私的な感情や妄想が折り混ざったdiaryです。正直に告白すると、この記録や体験が、どこかで私の役に立てば嬉しいと思いながら、いつか、あなたの別の視点も共有してみたいです。

魅力的なクエスチョン

 KYOTOGRAPHIE2022のオープニングセレモニーがあった京都市役所から徒歩1分ほど、河原町御池通の交差点にあるQUESTION(クエスチョン)が今回の会場でした。QUESTIONは、京都信用金庫の新拠点として6階には支店がありながら、コミュニケーションビルとして運営されています。解放されているカフェ&バーが1階にあり、2階から8階までは様々なコンセプトの会員制の空間があります。講義は、7階で開催されました。御池通りに面して一面ガラス張りのフロアとなっており、空と雲が近く感じました。

座学.文筆家の考えていること

 「実家の豆茗荷がとてもきれい」開口一番に豆茗荷の写真を紹介してくださった、文藝春秋発刊「ここじゃない世界へ行きたかった」の著者で文筆家の塩谷舞さんが今回の講師でした。

伝えたい感情を言葉で表現する文筆家の塩谷舞さん

 高校生のときに出会った美術の才能がある同級生の魅力を伝えたい。社会とアートを繋げたい。と京都市立芸術大学の学生となったところから現在までの塩谷さんが感じたことを見て、聞いて、紹介される言葉の生々しさに感化された1日でした。目の前に情景が広がり、日本で、ニューヨークでアイルランドで「ここじゃない世界」を暮らしていた塩谷さんの日々を外側から眺めているような気持ちになりました。
 
 どんなに考えてもレビューするのが難しくて、いくつか自身のノートに書いてあった塩谷さんの言葉を見返してみました。
 
 クオリティよりもリアリティ
 企業の文化、資本主義に染まる
 魂をバズに奪われる
 幸福度と裕福度は比例しない?
 立場は相対的に下落する
 たくさん買ってそのあとどうなる?
 価値観の天変地異が起きた
 ステーキじゃなくおばんざい
 
端的に紹介された言葉たちが、時代によって移りゆく塩谷さんの心境の変化を表してくれていました。

影響を受けた人の紹介が随所にあり、印象に残ったのは、ヴァージニア・ウルフ「自分ひとりの部屋」で彼女が資本主義の中で生き抜いていく術を紹介した一節でした。

直島にある李禹煥(リ・ウーファン)美術館では、同一性と差異性をめぐる原体験、うるさいところに静かにある、好きとは違う心地よさ。副交感神経優位空間を体験したとの感想。

そして話は、「実家の豆茗荷がとてもきれい」とそこにある美しさへと戻って行ったのでした。

塩谷さんにとって美術とは何か質問してみました。
「孔雀の求愛活動に近い。私は、言葉にするので、言葉同士で惹かれ合う。多種多様な人がいる中で、この人とはここまで繊細な感覚を共有できるのかと思うことが表現している意味だと。ただ、エッセイの言葉はあまりにも具体的で抽象的な部分が抜け落ちてしまっている。アートは、抽象的な感覚を何かしら示してくれる人がいるから、この感覚が人間界に存在するんだ。と思える人のアートに出会えたら、生きることが辛くなった時、助かった。ここでは呼吸ができる。一瞬の心の平安を得られるものかもしれない」

言葉を綴り、表現し、発する。誰もができる行為だけれど、誰かに沁みる言葉を選ぶことは簡単ではないと感じました。日常的には知っている言葉なのに、感覚として、その場面で思い至れないだろう素敵な言葉を沢山吸収しました。

塩谷さんの言葉を反復しようと著書を購入しました。幼い子どもがいると話すと、そこには、「未来を作ってくださりありがとうございます!!」と私に向けてメッセージを書いてくださり、またひとつ、私の書棚に大切な書籍が増えたのでした。

書き手

八木 千恵(Yagi Chie)
1981年 愛媛県出身。
公園の遊具設計、広告代理店の編集、コールセンター、歌手ピの沼で韓国ワーホリ、不動産営業、建築雑誌社で企画営業など職を転々としながら、結婚を機に京都へ移住。建築家と他の生業の方の対談と懇親会を企画したり、美術作家さんの周辺をうろうろしたりしています。

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