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〔深読み米国株〕VIXが告げる調整長期化=上げ一辺倒から利益確定売り復活へ

 S&P500指数は3月28日に史上最高値5264.85まで上昇した後は弱含み、前週末4月12日終値は5123.41と、最高値から約3%安の水準にある。スピード調整の終了と上値追い再開が期待されるところだが、株価の動きを見る限り、調整局面はやや長引く可能性がありそうだ。

 足元の米国株市場では、これまでの上げ相場に対し、反省とも疑いともつかない雰囲気が広がっている。「金融引き締めは株価にマイナス」「IT株は高金利に弱い」「運用銘柄は分散した方がいい」。これらの定説を全否定する形で、米国株は金利上昇を嫌うはずの大型IT株の集中物色で3月まで史上最高値更新を続けてきた。

 ただ、同じ相場がずっと続くものではない。


AFP時事

 米国株の日本語メディア「バロンズ・ダイジェスト」は4月15日午後、「アラスカ州の基金、食品小売り株を買い増し」と題する記事を配信。政府系ファンド(SWF)のアラスカ永久基金が今年1~3月にウォルマート(WMT)とクローガー(KR)への投資を3倍に増やしたことを紹介した。

 この2社は食品販売1、2位の大型株だが、IT関連銘柄主導でナスダック総合指数が急伸する局面で日陰に置かれた存在だったことを考えれば、投資の軸足がディフェンシブ側に寄ってきた傍証と考えられる。

 14日付記事「JPモルガン株は決算発表後に下落。銀行業界と米国経済に対する意味合い」では、JPモルガン・チェース(JPM)が第1四半期に市場予想を上回る利益を上げたと発表した直後に急落した背景を考察している。多くの市況記事は純金利収入が予想に届かなかったことを売り材料に挙げる。しかし、「バロンズ・ダイジェスト」記事はウェルス・ファーゴ(WFC)やシティグループ(C)も純金利収入がアナリスト予想を下回ったが、株価は小幅安で踏みとどまった点を指摘。昨年10月安値から44%高だったJPモルガンには「ありきたりの利益確定売り」が出ただけとする見方を示した。

 バロンズ・ダイジェスト記事の通りであれば、値上がりした銘柄には利益確定売り圧力が強まるという当たり前の現象がようやく市場に戻ってきたことになる。

 市場の変化をうかがわせる指標として、オプション価格を基に算出するVIX(ボラティリティー指数)がある。VIXは恐怖指数とも呼ばれ、30%超えで警戒ゾーン入りとされるなど水準ばかり注目されがちだが、S&P500との相関性も重要だ。

 VIXとS&P500は逆行する傾向があるとされてきた。そこでVIXとS&P500について、1カ月に相当する21営業日ベースの相関係数を算出したところ、2020~23年の4年間の平均はマイナス0.78と、強い逆行性を確認できる。

 昨年12月19日まで4営業日はマイナス0.2台とほぼ相関なしの値だったが、その後は次第にマイナス1側に移り、前週末4月12日はマイナス0.85と強い逆相関を示している。経験則通りの値動きのパターンが戻ってきたと言えるだろう。過熱気味の銘柄が売られ、割安な銘柄が買われる定石通りの相場は面白みに欠けるかも知れないが、利益確定売りを交えた押し目買いに投資妙味が増すことになる。(編集委員・伊藤幸二)
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