短編小説大会『表現する術を持たない者の表現』参加しました
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短編小説大会『表現する術を持たない者の表現』参加しました

朽尾明核

概要

 ぴよらっと氏主催の短編小説大会、『表現する術を持たない者の表現』に参加しました。

 どんな大会かというと、その名の通り、『表現する術を持たない者の表現』をテーマにした短編小説(上限20,000字)を書き、投稿するというものです。

 テーマがむずかしそうですが、

Q1.テーマがよくわからない。
A1.これが俺の『表現する術を持たない者の表現』だ!!!!!と言い張ればなんでもいいです。

 とのこと。

 大会ページはこちらになります。

【短編小説大会『表現する術を持たない者の表現』公式ページ】


 合計13本の小説が投稿されました。
 私は、

→No.11『狂い竜エルガディオ討伐作戦』(作品ページリンク) 

 を描きました。
 タイトル通り、狂ってしまったドラゴンを倒すための作戦を描いた小説です。2万字くらいでサクッと読めるので読んでください。

 せっかく書いたので、なんこうあとがきというか……反省会というかライナーノーツというかオーディオコメンタリーというか……それ系のそれも形に残しておこうかと思います。


解説的ななにか

 というわけで一応ネタバレ的なことも気にせずガンガン書きます。ミステリィというわけじゃないので、そんなに致命的にはならないと思いますが、まあ作品を読んでからじゃないと何言ってるのかもわからないと思うので、ここから先は『狂い竜エルガディオ討伐作戦』を読んでから読んだほうがいいと思います。たぶん面白いので。

 最初に「表現する術を持たない者の表現」というお題から連想したのは、「表現する術を持たない者が暴力(戦いとか殺人とか)で己を表現する」という大筋でした。いわゆる「戦いこそが自分の存在を示す唯一の表現手段」とかそいういうの。『いわゆる』っていえるほどたくさんあるかは知らんけど。

 そこから発展させて、大体下の3パターンぐらいが行けそうな主人公像だなと感じたものになります。
 ①「物心ついてから殺ししか教わらなかった暗殺者の少女」
 ②「芸術を知らないドラゴン」
 ③「表現する機能を持たないアンドロイド」

 ①はこう……殺し屋養成所みたいなところで育った少女が語り部(たぶん画家かなー)と出逢い、なんかこう……殺し以外のことを教わり、良い感じに仲を深める。なんやかんやあって人間性を獲得していくんだけど、最終的には語り部を守るため、敵役の組織を皆殺しにする。それが彼女に出来る唯一の自己表現だったのだ……END
 個人的には好きな奴だったんですけど、色々とディティールを考えていくうちに気持ちがどんどん沈んでいってしまったので保留にしました。物語を肉付けすればするほど暗くなる。
 結果的には、似たシチュエーションの『君に再生を捧げよう』という傑作が投稿されたので、避けてよかった感はありますね。大会ルール上、公開のタイミングは同時なので、被らなかったのは完全に偶然です。

 ②は戦いしか知らないドラゴンが、天才吟遊詩人と出逢い、初めて触れる音楽に心を打たれる。ふたりは音楽を通して交流し、良い感じに仲を深める。ドラゴンは自分も歌を歌いたいが、それができない。ある日、ドラゴン殺しを企てる兵隊たちに吟遊詩人が捕まり、拷問される。ドラゴンは怒り、兵隊たちを焼き払う。その様子を吟遊詩人が歌にする……END
 みたいな感じ。そう、結局はこれが採用にはなったのですが、完成稿とは設定が大分……というか180°違いますね。最初は、ドラゴンと吟遊詩人の心温まる交流を描こうと思っていたんですよ。ほんとに。ほんとですよ。この大筋は自分でもピンときたので、これで行くことにしました。

 ③、割とすぐ②で行こうと決めたので、ディティールはほとんど考えませんでした。とはいえ大筋は、戦闘用のアンドロイドが、人間(あるいはそれ以外)と交流し、戦いの中で自己表現をする……という話にはなっていたはず。

 というわけで、②で行くことは決まりましたが、いざ書き出そうとするとなかなか筆が進みませんでした。ここらへんの理由は別に書いてるときに言語化して整理したわけじゃないんですけど、
「吟遊詩人と竜の仲良くなる過程になんかこう、既視感があった」
「テーマ的にずれている気がした」
「細部を詰めていった結果、視点をひっくり返した方が面白くなるんじゃないかと思った」

 あたりが原因なんじゃないかと思います。


「吟遊詩人と竜の仲良くなる過程になんかこう、既視感があった」
 
は、まあさすがにパッと思いついたシチュエーションだけあって、割と既視感があるというか、よく言えば王道なんですけど、王道であるがゆえに独自性を出すのが難しいというか、大筋をよくよく思い返してみると、『ドラッグオンドラグーン』に出てくる、〈草原の竜騎槍〉の武器物語の影響が強すぎるなーって思ったり。最初に竜と吟遊詩人が出逢うのも、竜退治をしにきた傭兵たちに詩人が同行するって流れを考えてたんですけど、「あれ、これって『Landreaall』に似たエピソードなかった?」ってなったりとか。まあ一番の原因は、吟遊詩人と竜が仲良くなる過程が描けなかったというのがありますかね。友情を育んだり、他愛のない話で笑いあったり……なあ、

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出典:迫稔雄「嘘喰い」


「テーマ的にずれている気がした」
 今回は「表現する術を持たない者の表現」がテーマなわけですが、このあらすじだと、最終的に竜の戦いを表現するのは吟遊詩人になるわけで。言うまでもなく吟遊詩人は表現する術を持っているんですよね。そうするとこれは「表現する術を持つ者の表現」になってしまう気がして……。あと、別に竜は表現をするつもりで戦っているわけじゃないのに、その戦いを友人とはいえ他者が勝手に物語に落とし込んで『表現』としてしまうのは、なんというか、こう……ちょっとグロテスクか感があるなーって思ったり。
 とはいえ後から考えれば、ここは描写次第でどうとでもなったなー。という感じ。竜がなんとか自分の『作品』を作りたいと渇望してるくだりを入れたりとか、吟遊詩人の今までの作風とガラッと変わってるという説明を入れたりとか、それこそ戦っている最中に、竜に「これが俺の物語だ」みたいな科白を言わせたり思わせたりするなど、「あくまで主体は竜」という描写を積み重ねれば、そんなにズレはしなかったと思う。
 とはいえ、ここでひっかかった「他人を勝手に物語に落とし込む醜悪グロテスクさ」みたいなのは、完成稿にもサブテーマとして盛り込めたので、良かったんじゃないかなーとはなっています。


「細部を詰めていった結果、視点をひっくり返した方が面白くなるんじゃないかと思った」
 いざ色々な設定を物語にそって考えていると、わりと凝り始めてしまって、とくに悪役ポジションにおいた、「竜を狙う人間」を考えるようになりました。
 最終的に、竜と人間は相討ちになる予定(その方が物語として美しいため。吟遊詩人が歌に遺した竜が生きてたらなんか……ね)だったんですが、そうなると人間達には「竜と相討ちになる程度の格」が求められるんですよ(というか、敵対する人間たちを格の低い悪役にしてしまうと、それと戦って相討つ竜の格も下がってしまう)。設定も地方の領主にするか、王国軍にするか、竜殺しの冒険者にするか……。ただ数で押して倒すのも竜としては……。じゃあどんな手を使うか……罠は、手段は……人間たちの取る手段に対して、竜はなんの対抗手段もなくやられるのか……唐突に出てくると困惑するから、伏線も張っておかないと……みたいなことをうだうだと考えていたんですが、そんなとき、ふと閃いたんですよね。

 いっそのこと、人間サイドを主役にすればいいのでは?

 ぱっと出た思いつきではあるものの、そうすることで竜の強さも存分に描写できるし、竜を狩る人間たちは主人公なのでがっつりと設定も盛れる。
 竜を敵役にする関係上、最後の戦いを「表現」とするオチは使えないが――まあ、竜だったら人間を襲うことにして、それを「表現」だと主張することにしよう。よくあるシリアルキラーな殺人犯キャラが、自分の犯した罪を「私の行ったことは芸術だ――」とか正当化するやつ。あれを竜でやればいいんじゃないか。
 みたいな感じで、その思いつきでパズルのピースがバチっとハマった感がありました。事実、このポイントを超えた後は、特に詰まる事なく執筆出来た気がします(一部例外を除く)。


プロット

 プロットはこんな感じ。
◆Sequence.01『指令』
 →主人公が団長室でエルガディオ討伐の指令を受ける

◆Sequence.02『聴取』
 →エルガディオの被害を受けた関係者に聞きこみパート

◆Sequence.03『開戦』
 →決戦前に気合いを入れるやつ

◆Sequence.04『死闘』
 →狂い竜エルガディオとの戦い

◆Sequence.05『動機』
 →決着。竜から動機を告白される

◆Sequence.06『英雄』
 →エピローグ

 ほぼほぼ予定通りに進んでいますが――はい、そうですね。見慣れないシークエンスが2個ほどあるかと思います。

 まずは◆Sequence.04『死闘』。そう、本来は、狂い竜エルガディオとの戦闘シーンを盛り込むつもりでした。やっぱり竜を倒す話なんだし、作品は全体的に会話のシーンが多くなるため、エンタメとしての強さは、戦闘パートで補強をしようと思っていたいうのがあります。一応竜殺しの作戦はちゃんと立てていたので、ごりごりのアクションシーンをやるはずでした。『胎界主』生体金庫編をやりたかったんですよ。正気か?

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出典:尾籠憲一「胎界主」

 しかしまあ当然のことながら、圧倒的に文字数が足らず、戦闘パートを入れるのは断念いたしました。丁寧にやるなら戦闘パート単体で20,000字はオーバーするだろうから仕方ないと言えば仕方ない。
 残念ではあるのですが、ここまでがっつり文字数が足らないともうどうしようもないというのがありますので、諦めも付きました。まるっとシークエンスごとカットしましたが、最近は『胎界主』でも戦闘スキップ演出は多用されてるから、まあいいかな……って。

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出典:尾籠憲一「胎界主」

 ただここのカットはデメリットだけではないと思っていて、この小説のクライマックスはやっぱり最後のエルガディオの『語り』なんですよね。だから、その前に長い戦闘パートを入れてしまうと、エルガディオの『語り』の印象が薄れてしまう可能性が……いや、あるか?(それこそ演出次第でどうとでもなるだろ!)


◆Sequence.06『英雄』

 いわゆるエピローグですね。これも、字数が足らず泣く泣くカットしました。内容は◆Sequence.01『指令』と同じく、ヴィンセントが団長室に呼び出されて、今回の竜退治に関する様々な顛末を聞かされる。そして、最後に葉巻を吸ってENDという感じ。

 これは、カットしたのはデメリットしかないですね。ここのエピローグでサブテーマを出したり、最初と最後のシーンを同じにして「終わった感」を演出したり、最初は断った葉巻を、最後に吸う事で、主人公の変化を描写したりとか、色々やろうと思っていたんですよ。絶対入れるべきだったと思います。でももう残り文字が数百字しかなかったから……。

 エピローグでは、◆Sequence.02『聴取』でヴィンセントと話をした三人のその後というかが語られる予定でした。

シド・ララギ
 竜を倒した主人公に対して、
 ①過度に英雄化を行い神聖視する。レトゥエ村の生き残りと共にヴィンセントの後援会のようなものを設立する。
 ②神聖視していた竜を倒したことを赦せなかったらしく、『議会』の一派閥に利用され、騎士団批判の旗印となる。
 という2ルートのどちらかになる予定でした。(どっちになるかは最後まで決まりませんでした)

〈天使の声〉ディース
 事前に話をしていた通り、ヴィンセントに対して取材の依頼が入る。ヴィンセントは断ろうとするが、団長が受けろと言う。理由を聞くと、『議会』の派閥の内、竜退治に賛成派だった側が、プロパガンダに彼の小説や戯曲を利用するのだということ。

コーデリア・フェルドリース
 
フェルドリース家の生き残りであり跡継ぎである彼女の兄から、見合いをしないかという話が舞い込む。貴族であるコーデリアと、騎士団のヴィンセントではあきらかに釣りあいが取れない。どういうことか団長に説明を求めると、フェルドリース家(彼女の兄)が今回の一件を契機に、軍事にも勢力を伸ばしたいと画策している。竜退治の前にヴィンセントとコーデリアが面会していたことを掴み、「悲劇のヒロインに対して、出撃前に誓いを交わした英雄」というストーリィを組み上げたのだということ。

 という具合に、三者三様(というより主にその周囲の人間が)今回の竜退治の件について、その功績が色々と自分の利になるように政治的に干渉してくる。そして、都合のいい物語を演出しようとして――それにヴィンセントがげんなりする、というものでした。

 最初のプロットで感じた、「他人を勝手に物語に落とし込む醜悪グロテスクさ」みたいなものは、このエピローグで描こうかなって思ってたんです。ヴィンセントにとっては、死を覚悟した作戦であり、事実として多くの部下を失ったというものであっても、第三者はそれに「英雄譚」だとか好き勝手に物語落とし込んで、利用しようとする。そしてそれはエルガディオが語った通り、「竜は物語の中で悪役~」という部分にもかかってくるのだなぁ……みたいな感じで。

 プロローグでは葉巻を断っていたヴィンセントも、縋る物欲しさに手を出す――というENDですね。

 もし完全版とか描くなら、このエピローグは絶対に入れようと思います。


大会についての感想

 といった形でなんとか完成しました。
 8割方は二週間ぐらいで描けたんですけど、残りの2割で滅茶苦茶苦戦しました。

 大会では、「参加者はなるべくたくさん感想を書こう!」という規定もあったので、たくさん感想がもらえてうれしかったです。いやほんと、web小説書いてて感想を貰える機会って、かなり限られてくるので……。わたしも全作品に感想を書きました。

 13作品投稿されており、「表現する術を持たない者の表現」と結構難しいお題だったにも関わらず、題材被りとかがないのもすごかったですね……。どの作品もクオリティが高いので、みなさんも読んでみることをおすすめします。

 最後に、こういった素晴らしい大会を企画・開催・運営してくださったぴよらっと氏に感謝の言葉を述べて終わりにしたいと思います。ありがとうございました。




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朽尾明核