複製
2000年から2001年にかけて流行ったLifehouseというバンドのCDを、掃除の途中で全然別のバンドのCDケースの中でたまたま見つけたから懐かしくなってかけてみた。正確にはCD-Rに焼いたものだけど。
当時ぼくはアメリカの大学に留学していた。やりたいことが明確にあって、それを突き詰めるようとする熱意があって、それが許されるくらいに家族に理解があり、ついでに、というか現実的に最も重要な、経済面での余裕もあった。
大学のカフェテリアにはいつもラジオが流れていた。Lifehouseの『Hanging By A Moment』とDidoの『Thank You』が頻繁にかかっていて、特に『Hanging By A Moment』は毎日というくらい耳にした。
オリエンテーション初日に会って仲良くなった日本人の友達と一緒に行ったショッピングモールのレコード屋でも当たり前にかかっていた。Lifehouseのデビューアルバム『No Name Face』を買ったのはその友達で、ぼくはDave Matthews Bandの『Everyday』を買った。『I Did It』という曲がそれなりに流行っていた。
その頃は寮に住んでいたからいいプレイヤーもスピーカーもなくて、あんまり大きい音を出すと不機嫌なルームメイトがより不機嫌になるから、ノートパソコンにCDを入れて安いヘッドフォンをさして音楽を聞いていた。光学ドライブ内蔵のノートパソコンなんていまでは懐かしい。いまじゃ、なくても全然困らない。
ぼくと友達はお互いの買ったCDを焼いて交換した。そうやってCDを増やしてた。Didoのアルバムも買って焼いた。Vanessa CarltonもAvril Lavigneもデビューアルバムを二人で一枚ずつ買って複製してた。一年後寮を出て二人でルームシェアするようになったから結果的にはだぶってしまうことになった。
アパートのリビングにミニコンポを置いた。買ったんだったか、もらったんだったか忘れた。音も良かったのか、悪かったのか覚えてない。卒業したときそれをどうしたのかも記憶にない。でもコンポはあった。ほぼ毎日なにかをかけてたんだからそれは間違いない。
アメリカにいたのは2001年から2005年まで。四年制大学を余念で卒業できた。あの頃の友達でいまでも連絡を取り合ってるのはルームメイトだった彼だけ。でも、会うのは年に一度くらい。お互いに家庭をもってるのは変な感じがする。
変な感じといえば、家庭があるということよりも、あの四年間のほうがもっと変だ。過ぎてしまえば夢で見たことと大差ない。実際に経験したことなのに実感が薄れてしまって。
思えば、自分の中の半分くらいをあの頃に残してきてしまった。なんか変な感じがするのはそういうことだからかもしれない。夢を見てるみたい。みんなが乗り越えてることを乗り越えられないぼくは、『No Name Face』をもう一度最初からかける。『Hanging By A Moment』は当時のまま聞こえてくる。
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