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ツメバケイ

ツメバケイの雛を友達からもらった。友達は泣いていた。本当はあげたくないらしい。

「だって、家じゃ、もう飼え、ないから、お母、さんが捨、ててきなさいって、言ったから、ボクはイヤだって、言って、そしたら、じゃあケイちゃんにあげ、て、きなさいって言った、から、ケイちゃん、大切に、してね」

涙声でスタッカートをきかせて話しながら友達は僕にツメバケイの雛を渡した。友達に抱きついていたツメバケイの爪が友達のTシャツを破った。友達はさらに泣きだした。

「ツメバケイはTシャツを破るんだ。ボクは何枚も破られたんだ。これはボクの一番お気に入りのTシャツなんだ。最後は一番大切な服でお別れしようと思ってたのに。ケイちゃん、こいつはTシャツを破るんだ。ボクはもう服がないんた。もう家から出られないんだ。さよなら、ケイちゃん!」

友達は走っていった。ツメバケイは僕の手の中でもがいている。友達の言う通り、ツメバケイは僕のTシャツを狙ってる。仕方がないから僕はツメバケイをリュックに詰めて持ち帰った。

家に帰ってリュックを開けるとツメバケイは元気がなくなっていた。せっかく友達がくれたんだから死なせるわけにはいかない。僕はパジャマにしているヨレヨレのTシャツをツメバケイにあたえた。ツメバケイは急に元気になってそれをビリビリに引き裂いた。

それから僕はツメバケイをハンガーラックにかけた。ツメバケイはハンガーを仲間だと思い込む習性がある。仲間がいっしょだとツメバケイはおとなしくなる。

こうしておけば友達のTシャツも無事だったのに、知らないで飼うなんて。

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