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ワンダーランド天満

居酒屋が好きだ。ひとりでもふたりでも5人でも行く(まあ、多くとも5人くらいに抑えておくのがいいな、とは思う)。

もともとお酒を飲み始めた大学生の頃から好きだったけれど、本当の意味で好きになったのは大阪で一人暮らしをしてからだ。ここで自分の飲みスタイルが確立されたし、どういう店がいい店なのかという審美眼も磨かれた。
いろんな街で飲んだけれど、とりわけわたしを育ててくれた飲み屋街が二つある。今日はそのうちの一つ、天満という街について。

2018年7月 
バンド練習で集まったはずが駆けつけ1杯


天六(天神橋筋六丁目)のカラオケでバンド練しようと集まった(当時、同い年のRちゃん、H君と3人でアイルランド音楽のバンドを組んでいた)。
13時くらいに集合。カラオケに向かっていたら小籠包屋さんを見つけてしまって、H君が少し遅れるというので、Rちゃんと「1杯飲むか」と軽率に店に入る。昼のビールってどうしてあんなにキラキラして見えるんだろう!たった15分くらいだったけどめちゃくちゃテンション上がった。
「天満始まった」とH君にラインしていた。

カラオケで3時間練習して、17時過ぎに改めて飲み直し!この日は4軒行っていた。1軒目はよく行くところなのだけど、コスト削減しすぎていて取り皿すらもらえないので、みんなスマホに箸を置いていた。
天六スタートの時は、6、5、4丁目…とどんどん南下していくのが定石。
途中扇町公園に立ち寄って、缶ビールを飲みながら楽器を弾いていたのがよかった。一緒に楽器弾いて、飲んで、を同じテンションでできる同い年の友達、とっても大事だ。

2018年9月 
停電したので飲みに行こう


大阪で豪雨があった。電車がことごとく止まり、我が家は雨が落ち着いた後も計72時間停電していた。この停電は近くの電柱がやられたことが原因で、だからうちのマンションはなかなか復旧しない中向かいの家は普通に電気が使えている様子と、道1本隔てるだけで状況が違った。
停電していることそのものよりも、停電してますムードを共有できないのがつらかった。

家にいてもしょうがないなと思い、友人を誘って昼から飲める天満に繰り出す。みんな我が家が停電していることなど露知らず、すでに普段の大阪の姿が繰り広げられていた。
帰ったらもしかして電気が復旧していたりして!と甘い期待を抱いて帰宅したけれど、まだ停電したままだった。気持ちよくすぐに寝た!

同じく2018年9月 
飲み好きの友人が遊びに来たら、ハイ、天満


大阪に住んでいたときは、本当にいろんな人が遊びに来てくれた。飲み好きの友人の場合は、変に観光などせず昼から天満だ。
まずたこ焼き屋かうどん屋で、ある程度胃袋に土台を作りつつ軽く1杯やってから、長い時だと8〜9時間飲み続ける。
来る友人は皆、安さに驚き、昼から飲んでいる大人がこんなにもいることにも驚いていて、なんだか得意げな気持ちになった。

2018年12月 
クリスマスイブに、気づいたら…


お昼、彼氏と中津にカレーを食べに行った。穏やかな冬の日で、淀川沿いを散歩し、子どもたちが凧揚げをするのを眺めながら、中崎町方面へなんとなく歩いていたら、1時間くらいで天満にたどり着いてしまって、顔を見合わせて爆笑した。
「せっかくだし飲もうか」と1軒入ったのが最後、「ああ〜楽しいね」とノープランのクリスマスイブ、はしご酒が始まってしまった。
楽しくなってきて「呼んだら来るかな?」と共通の友人に唐突に連絡してみるも、「彼女とデート中やねん」。そりゃそうだ。
プレゼント交換も何もなく、ほろ酔いで21時に解散した。こんなクリスマスイブも悪くない。

2019年12月 
大晦日も…


少し久しぶりの大阪、友人ととりあえず梅田で待ち合わせて、なんとなくそのまま足が天満に向いていた。恐るべし。
大晦日でお店が開いているかもわからないまま向かったけれど、案外やっている。
1軒目のお会計がふたりで1,500円なことに新鮮な気持ちでびっくりする。「天満の洗礼を受けた…」と日記に書いてあった。それから3軒はしごして明るいうちに帰る。ランチやお茶は1軒行ったら次を誘いづらいけど、飲み屋なら何軒行っても、いつ帰ってもいいのが良いな。

2022年3月 
コロナ禍での天満

別記事として書いていた内容なので、ちょっと長いことをあらかじめお断りしておく。

無事出張を終え、この日の滞在は天満!大好きな天満にとうとう泊まれる日が来るとは、嬉しい。確かこの時、大阪府には飲食店の閉店時間の制限があり、22時くらいまでしか飲めなかった。なのでせっかくの天満で2軒しか行くことができなかったのだが、それでもいい夜だった!

付き合ってくれたのはわたしが大阪に来た1年後にUターン就職でこちらにやってきた大学時代の後輩、Mちゃん。かわいい顔して酒に強く、おまけに性格がとてもいいのでみんなMちゃんのことが大好きである。例外なく、わたしもそのうちのひとりだ。

1軒目の中華料理屋さんでは、お互い仕事を辞めようとしていることがわかってかなり盛り上がった。
あとはいつもよくする話…共通の友人の話、酒の話、車の話。相変わらず明るくて優しくて嫌なところがない本当に素敵なお嬢さんである。

2軒めにどこに行くかは特に決めていなかったのだけど、通りがかった串カツ屋さんに入ってみた。ここがすごく良いところだった。
ニコニコしたおじいちゃんがやっていて、「おまかせ」でちょっとした変わり種(白子とか)の串カツが1種類ずつ出てくる。
なぜかウイスキーのラインナップが豊富で安く、喜んでオールドパーとバランタインをハイボールにしてもらって飲んだ。

お会計の時に、おじいちゃんが急に改まって、「コロナの大変な時に、おっちゃんの店来てくれてありがとう。このカードをさしあげますので、見せてくだされば、次に来てくださった時には、何がしかの、サービスをします。ぜひ、また来てくださいね」とぎゅっとお店のカードを握らせてくれた。
「何がしかの」、という発音に力がこもっていて可愛らしくて、Mちゃんと天満駅まで行く間に「何がしかの」と何回か繰り返しながら帰った。カードは大事に取ってある。ぜひまた行って、何がしかのサービスを受けたいものである。

まとめ

つらつらと書いてきて、なんで天満が好きなんだろう?と考えてみた。
理由を列挙しようかと思ったが、結論を述べると、わたしにとって天満は大阪の縮図だ。
安くて美味くて楽しくて、人が明るく優しくて、どうしようもない、ごちゃついた感じも含めて愛おしい。昼の早くでも、夜の遅くでも、いつお酒を飲んでもいいし、そんなにお金がなくて1,000円でお会計しても嫌な顔されないし、雨でも商店街はアーケードになっているので濡れないし、飲み疲れたらちょっと歩いて商店街で靴下とか買ってもいい。大袈裟じゃない、すぐに手の届く幸せがある感じがいいのだ。

ほら、天満に行きたくなったでしょう?あえて食べログとかは調べずに、直感を頼りにブラブラしてもそんなに失敗しない街だから、明日にでも繰り出してみよう!


交通費にします!!!!