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登山におけるAメロBメロ、サビ(平ヶ岳登山)

2023年7月17日、海の日に、登山をする人でなければまず知らないであろう百名山、平ヶ岳に行ってきた。
実はわたし、けっこう登山をしており、登頂した百名山は今回で52座目を数えた。

平ヶ岳のポイントは2つ。

①登山口までのアプローチが、「酷道」と揶揄される国道352号線沿いにあり、運転に自信がない人はたどり着けない
②10〜12時間程度かかる行程だが山小屋やテント場はなく、登山口に車中泊で前泊し未明に出発するというスケジュールほぼ1択である

以上の理由から、「お手軽」の真逆をいく山であり、100座ある中でも終盤に残ってしまうことが多いそうだ。わたしも、今新潟県に住んでいて登山口まで2時間半とかなり近い方なので「行くぞ!」となったが、なかなか食指が動かない山であることは確かだ。

そんなだから、なんとなく出くわす人々の8割くらいは玄人感が出ており、民度が高くてとてもよかった。わたし、基本的に登山のペースは速い方で、標準のコースタイムの6〜7割の時間で歩くのだが、周りの人も割とそんな感じだった。
「お姉さん速いね〜」「いやいや、みんな速いですよ」ってやりとりを何度かした。

この山、リピートするかと聞かれると悩むけど、ぜひ1回は行ってほしい!と思った。いい山。ただし、やっぱり行くまでが大変すぎる。
352号線を通るのは初めてではなかったけど、前回に比べて夏の盛りゆえに草が多い茂っていて見通しが悪すぎて、なのにカーブミラーは本当に本当に「ここぞ!」というところにしかなくて、何度も減速しながら走ったのでとても疲れた。奥只見シルバーラインのトンネルはボコボコとしていて自然の造形(?)で、行きは霧雨が降っていて薄暗く、インディジョーンズみたいだった。生きて帰れるか半々みたいな気持ちになった。
こんな必死な思いで運転しているのにわたししか乗っていないなんてコスパ悪いな〜と謎のことを思った。
そんなわけで、登山中も、「下山後の運転がいちばん憂鬱…」と何度も思ったのだった。

では、もう一方の「いい山!」と思った理由について。

コースタイムで登り6時間くらいかかる想定の道のりなのだが、登り始めてたったの30分(これはわたしがハイペースだったからで、本来は45分〜1時間?)で稜線に出るのだ!
それからしばらく稜線歩きが続いて、「うわあ〜もうこんなに歩いたのね」と大して歩いていないのに振り返ることができる。これはすごい!

普段の体感で行くと、このタイプの道は6割くらい歩いた後に現れることが多いのに、「どういう風の吹き回し!?」と思った。
しばらくしてもう一度驚いたのが、道半分くらい歩いたところで今度は急に、「今!?」と思うような、本来序盤で歩きそうな樹林帯が現れた。たぶん声に出して「マジ?」って言ってたと思う。

登山において、樹林帯はいわばAメロだ。前奏で林道や少しなだらかな道を歩いて(ないこともある)少しすると始まる樹林帯。平ヶ岳は、前奏からなぜかBメロに飛ぶようなかなり特殊なルートだった。
体感したルートを書き起こしてみると
前奏→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ という感じ…

サビは言わずもがな山頂や、展望のいい開けた場所。Bメロの後一度サビがきて、その後樹林帯なのが本当に予想外だった。しかもこの樹林帯に入ったくらいで日が完全に昇り、気温が上昇し始める頃で、ちょうどいい具合に木陰に入ることができて、とても良くできている。

サビの部分では、至近距離の燧ヶ岳、至仏山、会津駒ヶ岳をはじめ、日光白根山、武尊山、男体山など、かつて登頂したたくさんの山が見えてとても頼もしい気持ちになった。でも、実は平ヶ岳が見えることが一番レアであり(山深い場所に位置しているので、街からはまず見えない)、帰りにはさっき頂に立った山の姿を何枚も写真に収めた。
海が見える山もいろいろあるが、海の日にこんなにも山深い山に登っているのは山馬鹿という感じがしてよい。

山の向こうに山、の向こうにも山

ちなみに、頂上より30分強手前にある池塘のエリアが素晴らしく良くて、序盤で追い越したお兄さんふたりが「ここを山頂にすればよかったのに」とこぼしていて可笑しかった。
山頂まで待てずにここで宴会を始めてしまったようで、「うわ、もう1時間もここにいるじゃん」と笑い合っていた。

おもしろいお兄さんたちだったな

わたしも折り畳みのザブトンを敷いてちょっとお昼寝した。確かにここがいちばんいい場所である説、ありえる。

帰りは70手前くらいのおじいちゃんと何度か一緒になった。昨夜は軽トラの荷台で寝たらしい。「涼しくて快適だったよ」とのこと。
普段、荷台にスーパーカブを積んで、下山口にカブを落として縦走を楽しんでいるらしい。良いな〜!

膝が弱めかつ滑りやすい地面にびびりがちなわたしなので、下山はこのおじいちゃんの方が全然早かったけど、駐車場でまた会うことができた。
プッ!と軽快なクラクションを鳴らしてサイドミラー越しに手を振り帰っていった。山に行くといつも、こういうほんの数時間のあいだの出会いと別れがたまらなく好きだな、と思う。

自然のスポットライトが当たっていた!すご〜!

帰りは魚沼まで戻って、大湯の立ち寄り温泉に行ったら、なんと今日が最終営業日だった。こんなことある!?と寂寥感に包まれながら、適温の良いお湯にゆっくり浸かった。

7月17日…って今日だ

ここから1時間以内で家に帰れるのだから、やっぱり今行って正解の山だったな!

久しぶりにたくさん歩いた!


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