おじいちゃんの口癖「どうもね」の意味。
拝啓、1年後の自分へ
先日、ことばの縁日というイベントで「手紙の企画」を実施しました。
自分自身の「ことば」を振り返る時間をつくり、
1年後の自分に手紙を書く。
未来の自分に「ことば」を贈る・自分と対話する時間をつくりました。
手紙の企画では、自分への手紙を認める前に、ことばやエピソードを「振り返る時間」をとるように構成しました。ワークシートには9つの問いを用意し、自分の記憶の中から、手紙をもらった体験・おくる体験を振り返ります。
家族と一緒にやってみた
身近な人にも体験してもらいたいと思い、ゴールデンウィークの帰省中に、北海道で暮らす祖父母と一緒に手紙の企画に取り組んでみました。
「もらう」体験を振り返る
まずは、自分が手紙を「もらった」ときの印象に残っているエピソード。
ふたりとも「う〜ん」と少し考えながら筆を走らせていました。
何を書いたのか、それぞれに聞いてみると
祖母は「結婚前に夫(祖父)からもらった手紙」、
祖父は「孫(私の妹)からもらった手紙」とそれぞれのエピソードが出てきました。
どんなときにもらった手紙なのか、そのときどんな気持ちになったのかを教えてもらいました。「嬉しい気持ちだった」と二人は答え、さらに、「どうして嬉しい気持ちになったの?」と掘り下げてみました。
祖母は「愛情を感じたから」、祖父は「孫の成長を感じたから」とふたりの気持ちを知ることができました。
祖父がよく祖母に手紙を書いていたことを初めて知り、意外な一面を知ることができ、孫としても嬉しい気持ちになりました。
また、思い出に残っている手紙で自分の手紙と言われた祖父が嬉しそうにしている様子も見て、手紙を通して当時の思いを振り返る時間をつくれてよかったなと思いました。
後日、妹に祖父の話をすると、妹も嬉しそうでした。
「おくる」体験を振り返る
つぎに、自分が手紙を「おくる」ときの印象に残っているエピソード。
祖母は「頑張っている人を励ますように、応援したい気持ちを届けたいとき」に手紙を書くと教えてくれました。大学から実家を離れ一人暮らしを始めてから、祖母から荷物が届くときは、いつも必ず手紙が添えられています。祖母が手紙に込めている想いを知ることができました。
祖父は「定期便:出張中、長期留守で家をあけるときに近況を伝えるために書いた手紙」の話をしてくれました。どうして手紙を書こうと思ったのか、どんな気持ちを伝えたかったのか掘り下げて質問すると、「お互い安心できるように」という祖父の気持ちを知ることができました。
祖母はその言葉をきいて「気持ちは伝わっていたけど、そんな風に考えていたのを改めて知れて嬉しい」と話していました。
手紙を書いたとき、受け取ったときの気持ちを言葉にして伝える機会は
珍しいのではないかと思います。ワークシートを使って話しながら進めることで、普段なかなか伝えるには恥ずかしい気持ちも話すことができたのではないかと思います。
エピソードを語る中で、祖父母の思いを知ることが出来、思わず3人で涙する瞬間もあり、家族との温かい時間を過ごすことが出来ました。
忘れられないことば
1年後の自分へ贈る手紙は、封に包むのではなく、フレームに入れて飾ります。カードの表面には、自分を応援するお守りのことばやお気に入りのことばを書き、日々目にする場所に飾る。ことばから勇気をもらうのではないかと考えました。
表面に書くことばを選ぶために、思い出に残っている忘れられないことばやエピソードについて振り返りました。
今回の手紙の企画で私が一番印象に残っているエピソードが
祖父の忘れられないことばでした。
祖父は最初、この質問に対して、「忘れられない。う〜ん、あんまりでてこないなぁ」と言って少し時間が経ってから、「あ!そうだ、わかった!」といい、ワークシートにことばを書いていました。
何を書いたのか気になり、ワークシートを覗き込んでみると
「どうも〜」という一言が書いてありました。
おじいちゃんの口癖「どうもね」の意味
私はてっきり格言のようなことばが出てくるのかな?と想像していたので、「どうも〜」ということばを見たとき、頭の中に「?」が浮かび、ちょっと拍子抜けしてしまいました。
思い返すと、たしかに、祖父は人と会って話すときに、よく「どうもね〜」とよく言っています。無意識の口癖だと思っていたら、意識した口癖だったのかもと知り、ちょっと見方が変わりました。
やさしいことばだと思ったんだ
祖父がどうして、「どうもね〜」を意識して使うようになったのかきっかけを教えてくれました。
祖父の話をきき、祖母も驚き、喜んでいました。
私にとっての曾祖父。
私が生まれる前に亡くなっていて、会ったことはなかったけど
家に飾る写真を見ながら、祖父がこのエピソードを教えてくれて、ひいじいちゃんの温かさに触れることができました。
そしてわたしも「どうもね」を使いたいなと思いました。
思い出させてくれて、ありがとう
曾祖母の命日に、祖母の兄弟が集まり花見をしながら弁当を食べる恒例行事があります。
ちょうど手紙を書いた次の日でした。
私も一緒についていき、桜を見ながらみんなで一緒に歩きました。
そのとき、祖母のお姉さん・長女のジュンコおばさんと2人になったときに
盛寿さんの「どうもね」のことばを祖父から教えてもらった話を伝えてみました。
すると、ジュンコおばさんは
「あ〜ほんとだ、そうだそうだ。よくお父さん、どうもね〜って言ってたわ。覚えてくれてて、思い出させてくれてありがとう。ほんとに優しい人だったんだよ〜。」と、曾祖父のことを教えてくれました。
ことば(口癖)から、こんなにも人を思い出せるっていいなぁと思いました。
「忘れられないことば」は、その人の生きた証を残すもの
花見の帰り道、車の中で『ことばの日ラジオ』を聴いていました。
企画メシ・言葉の企画を主宰するコピーライターの阿部広太郎さんがゲストの回でした。
阿部さんにとって、忘れられないことばとは?
『忘れられない=自分の生きた証』である。
祖父の忘れられないことば『どうもね』という曾祖父のことば。
『どうもね』に込められた想いやエピソードを通して、曾祖父を知ることができました。
忘れられないこと、思い出すことは、その人の生きた証を残すこと。
生きた証を残すためにも、その人のことばと想いを覚えていたい。
ラジオを聴きながらそんなことを考えていました。
やさしく包み込めることばを使っていきたい
同じくラジオを聴いていた祖母が、ことばの日ラジオにお便りを送りたいと相談してきて、手紙を書いてくれました。
ラジオを聴いた数日後の出来事でした。
いろいろと考えてくれたこと、ことばにして教えてくれたことがとても嬉しかったです。
自分と、ひとの想いとつながる「ことばの日」
1年後の自分へ手紙を贈るという手紙の企画は、
もともと、自分自身に向き合うためのものとして考えていました。
今回、家族と一緒に取り組んでみたところ、「手紙の思い出」を通して
お互いの想いをことばにして伝え合う時間を過ごすことができました。
自分自身の想いだけでなく、家族の想いを知ることができ、とても良い時間を過ごすことが出来ました。
来年のことばの日に、一緒に手紙を開いて読む。
その日を楽しみに、お互い元気に過ごそうねと約束しました。
声で残す思い出
祖父母との手紙の企画。3人の会話を録音していました。
尺は30分ほど。
とーっても、プライベートな感じで恥ずかしいですが、
どんな感じでやったのか、興味のある方向けに有料部分で公開します。
おじいちゃんの生の「どうもね」が聴けます。
さいごまで読んでくれて、どうもありがとね。
ここから先は
¥ 518
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?