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はたらくを、たのしむ

こんにちは、しのです。
わたしは普段、産業保健師(会社版保健室の先生)として働いています。


会社で働く人が元気にいきいき働けるように
心とからだの健康づくりをお手伝いすることが私の仕事です。


どうして保健師になったの?とよく聞かれることが多いので今回のnoteでは私が保健師という働き方を選んだ理由と、実際に働いて今感じていることについてまとめてみました。



憧れは高校の保健室の先生

高校生のころ、家族のことや部活の人間関係などに悩んでいたとき、今抱えているものを隠さずに安心して話せる相手が保健室の先生でした。

保健室の先生は、
なんだかちょうどいい距離感の存在で
家族や仲のいい友達にも、近い距離だからこそ話せないことが先生には不思議と話せました。

家族や友達は距離が近くて大切な存在だからこそ、話した内容を受け入れてもらえなかったときに傷つくのが怖くて、自分の悩みをなかなか話すことができませんでした。

抱え込みすぎてもうしんどい!むり!ってなったときに
情報が守られている(守秘義務)・学校の様子もほどよく知っている(知りすぎていない)保健室の先生のちょうどいい距離感に安心して話すことができました。

淡々と話を聞いてくれるので、話しているうちに頭の中が整理できて心が楽になりました。

みんな普段ニコニコしているけど、言わないだけで、それぞれ悩みを抱えているんじゃないか。

そんなときに、心が安心する逃げ場として保健室のような気軽に話をほどよい距離感で聞いてくれる存在が、人にとって心のバランスを保つために必要なんじゃないかと自分の体験を通して思いました。


悩みがあっても、元気に過ごすことができる。

そのための心の充電場所として、
人の心に寄り添う仕事がしたいなぁと
高校2年生の頃に思いました。



看護学生になる

保健室の先生になるための方法として、
保健師免許をとったあとに申請すれば養護教諭2種免許がとれると知りました。

養護教諭の免許は、教育大でとる方法もあったのですが、学校に1人しかいない保健室の先生って倍率高くないか…?と思い、就職できなかったときのことを考えて、看護師・保健師の資格をとって自分の選択肢を増やそうと思い看護大学への進学を決めました。
(保健師の資格があると、養護教諭2種・衛生管理者1種の資格が申請すればとれます)

授業のメインは、看護師に必要な内容ばかり。

1~2年生は座学中心で人体の構造や病態、コミュニケーション論、薬学などを学び、3~4年生は実習漬けの毎日でした。(保健師は看護師資格必須なので、まずは看護師の勉強が大事なのです!)

自分の目標は保健室の先生になることでしたが、
看護師や保健師の働く姿を知ることで、資格をとることがゴールではなく、自分の資格を手段に何をするのか自分の意思が大事なんだと気づきました。


実習で出会うひとりひとりの患者さんとの関わりを通して自分が何をしたいのか、何のために働くのか?
たくさん考えるようになりました。



予防に関わりたい

実習ではじめて担当させていただいたAさん(40代男性)
入院初日から1週間実習で関わらせていただきました。

少しずつ関係性ができたころに、病気についてあまり話題にしてこなかったAさんが自分が入院したことについてぽろっと本音を話してくれました。

「病気になるなんて思わなかった。たばこを吸うと体に悪いとはわかっていたけど、自分だけは大丈夫だと思っていた。娘ももう少しで高校卒業で、仕事もこれからってときだったんだけどな。もう少し早くたばこ辞めとけばよかったのかなぁ。」

病気の原因が絶対にたばことは言い切れないけど、もっと早く…という後悔する気持ちと自分を責めているAさんの様子を間近でみて、私も悔しい気持ちになりました。もっと早くこの人に何かできることはなかったのか。


病気になることは防げなくても、早く検査を受けていたら、軽い症状のうちに治すことができたかもしれない。
「もう少し早く…」と後悔の気持ちを防ぐためにも、
もっと早い段階で気づくきっかけをつくることができなかったのか。

病気になってしまった人を病院で待つのではなく、
病院にくる前の段階で人の健康を守るために関わりたいと思いました。

日本人の死因を大きく占める生活習慣病。
病気を防ぐためのちょっとした生活の工夫を健康なときに知る機会をつくれないか。「もっと早く知ってたら…」と嘆く人を減らしたい。

悪くなる前に防ぐ。
予防に関わりたいと思った瞬間でした。


会社の中で働きながら健康を支える

病院実習の次は、
製造工場で働く産業保健師の実習でした。

この実習に行くまでは、教科書上でしか保健師の仕事内容を知らなくて、具体的にどんな風に働いているのか全くイメージができていませんでした。

まず病院との違いで驚いたのは、医療職だけど白衣を着ていないこと。
工場で働く従業員と同じ作業着を着ている姿が印象的でした。

病院の中で患者さんと医療職は、お客さんと医療サービスを提供する者としての関係性ですが、会社の保健師は同じ会社で働く仲間という平等な立場で、従業員の健康を守るという役割を担っている関係性が好きだなと思いました。

設計する人、調達する人、ものづくりに関わる人、
客先で営業する人、いろんな仕事の役割がある中で
産業保健師はそこで働く人の健康を支援する人という役割。


働く年数を積み重ねることで、少しずつ相手を知って関係性ができていく。
関係性の変化で、相手に必要なタイミングで健康支援方法を選んで関わることができる。


健康診断結果と生活習慣をもとに、今後の健康の変化を予測する。
健康な人がより健康になって、心も体も元気に働くことができるように支援する。

働く人がいる現場で、保健師として働くことで人に予防的に関わることができるんじゃないかと感じた実習でした。


保健室の先生から産業保健師の道へ

ひとりの患者さんとの出会いや、働く現場での保健師の役割を知り産業保健師として働くことを考えるようになりました。

働く世代の健康に関わることは、
広い視点で考えると働く人の健康を支えることは、地域に暮らす家族(子供・高齢の親)の健康づくりにもつながっていくと考えたからです。

地域の実習では高齢者の方々や子育て中のお母さんの健康を支援する地域の保健師さんの仕事を知りました。

正直実習に行くまでは、自分自身市役所を健康の理由で利用することがなかったので、知らない情報ばかりでした。

平日の学校に通う時間には行かないし、休日は休みたいし遊びたいし、よっぽど用がない限り行きません。


これって働く人も同じかな?と思いました。
インターネットで調べればいいじゃんとも思いますが、いざってなると地域の相談窓口ってどこ?と調べてもよくわからない。
地域の保健師と、会社の保健師でうまく連携をとって
働く人に有益な情報を会社の中で伝えることができたらいいんじゃないかなぁと思いました。

人生の中で長い時間を占める働く時間に、
健康づくりの手伝いをすることで、退職後も元気で自分の好きなことができる人を増やしたいなと思いました。


地域の実習で、退職後の高齢者の方々の暮らしの様子を知り、自分が想像していた生活と現実の違いにショックを受けました。

退職後は、時間に余裕もできるから好きな時間をみんな過ごしているのかなと思っていたけど、好きでやりたいことがあってもやるための体力がなかったり、治療による制限があったり、「会社で働いて休みはゆっくりしたいからご近所付き合いもなかった。外出は病院くらいだよ。」と話す人もいました。

家族や社会、自分のために働いてきて、
やっと自分の好きなことのために!と思っていても体が追いつかない。
健康を維持する方法を知らなくて迎えた結果だとしたら、医療職としてもっとできることがあるんじゃないかと思いました。


健康を支えたいのか?

そんなこんなで、今は産業保健師として企業に勤めて5年になりました。

実際に働いて、人と関わって最近考えることは
自分は人の健康を支えたいのか?ということです。

「健康」の価値観は、人それぞれです。

健康診断結果に異常がなければ、健康といえるのか?
数値的には病気じゃない状態でも、心の健康度は数値で見えなかったり。

病気の治療をしながらでも、
自分の好きなことをのびのびできている人は
とても幸せそう。

たばこも体に悪いのはみんな知っていて、それでも吸う理由はきっとその人の中で大切な何かがあるからなのでは?

自分が思う健康像と、
相手が思う健康像は違うということ。


相手はどんな夢をもってるんだろう?
何をしている時が嬉しいと思うんだろう?
相手が描く自分の理想像はどんなものなんだろう?

それを叶えるためにきっと健康な状態は大事な土台になると思うから、相手が求める理想を叶えるための手段としてできる方法を一緒に考えたいなと思うようになりました。


できた!体験から自分を好きになるきっかけをつくる


面談でいろんな方々にお会いして感じることのひとつに、「どうせ変わらない」「なりたいと思っても年齢的に無理だと思う」「できっこない」と変わることへ自信が持てない方が多いなぁということ。

保健師の仕事に特定保健指導という面談があります。
自分の健康状態を自覚して、生活習慣の改善を自分でできるようになることが目的の支援面談ですが、「メタボ予防。痩せるための面談」と思われがちで、一時的に減量成功しても、リバウンドを繰り返してしまう人も多くいます。

痩せることもひとつの目標ですが、自分との付き合い方が上手になることが大事で、その部分を伝わる工夫が必要だと思いました。

自分の体や心の変化に気づき、
向き合える自分になること。


体重を減らす方法はもちろんだけど、もしも増えたときに何で増えたのか、どうしたら戻せるのか、自分のベストな状態はどんな状態なのか。

自分自身を理解して、変化に合わせて自分にあった方法で対処できる。
自分で自分をコントロールできる自分になること。

そのためには、まずは自分の理想は何か?を自分で把握することが大切だと思い、面談対象者の方に質問すると「そんなこと考えたことなかった」と話す方も多いです。

理想を考えるのが難しい場合には、
どんな状態になっているのは嫌か?について考える提案をすると、嫌な状態は意外とすらすら出てくるので、出てきた項目を逆転させてその人のなりたい像を整理します。

保健師の一方的な支援にならないように、相手がどんなことを大切にしているのか価値観を知るためにも、理想像を共有する作業は大事だなと思いました。

理想像ができたら、その状態を外見・内面で細かくリスト化していき、その状態を叶えるためには何が必要なのかも書き出していきます。

そうすると、健康行動につながる項目がでてくるので、本人も「自分の目指すものに対して、この行動が必要」と理解できるので行動の後押しになります。

大きな漠然とした理想像を、実現のために細分化する。
はじめの一歩は何かを見つけ、ハードルを低くする。
定期的に振り返ると、できているとチェックする項目が見える化できて自然と「できる自分」を認めることができる。

「自分自身との向き合い方がわかった。」
「変われた自分をちょっと好きになることができた。」
という人が増えました。

はじめは自信がなく表情が暗かった人が
面談を重ねるごとに、取り組んだ内容を嬉しそうに話してくれる。

いきいきした表情を見る瞬間がとても好きです。
人は変われるんだ!と勇気をもらえます。

小さなできた!という体験の積み重ねは、
人の自信になること。

自分をちょっと好きになる人が増える。

失敗したときにも向き合える自分ができれば、次の新しいことへのチャレンジする勇気がわくかもしれない。

自分の好きなことを楽しんで笑顔になる人をいっぱい見たい。
好きが持つパワーは、人の生きる力になると思うから。


無意識の部分のちっちゃなきっかけづくりを、
健康づくりという身近なもので、人と関わりたいんだなと気づきました。


はたらくを、たのしむ

きっとこれからも多くの人と関わることで新しい気づきがあって、保健師として何を叶えたいのか、自分がどんな風に人や社会に役に立ちたいのか考えるんだろうなぁと思うと、わくわくします。

保健師としてはたらくこと、
その前にまずは人と人のつながり、わたしとあなたの関係性を大事にしたい

普通におしゃべりも楽しみたいし、
また話したいなぁと思ってほしい。

だから自分の好きなもの、わくわくするたのしい気持ちも大事にしたいなぁと思います。


今は保健師を手段にしているけど、
いろんなできる方法を模索しながら、
自分の引き出しも増やしたいなぁと思います!


そのうちのひとつに、コーヒーを通して人と関わることがあるのでバリスタ保健師の活動も2021年も引き続き、たのしみながら取り組みたいと思います!^^



▼もしよかったら、
 こちらのnoteも読んでみてください♡


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


しの

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