見出し画像

1社目の記憶:キャスター・マイルドと映画の話

ふと、思い出したので書いてみます。

私がひな鳥のように「社会人ってこういうもの」を学んだ1社目は、とにかくハードだったししんどいことばかりだったけど、やっぱり未だにあの時代を超えてきてよかった、という「戻る気はない実家」のような郷愁があります。

今日思い出したのが、年に数百本映画を見る先輩のHさんの記憶。
雰囲気はエレカシの宮本浩次MVのような、いつもニヒルというか、笑っているようで冷静で、20代前半の私からするとずっと大人に見える30代で。

終電まで残業か、皆揃って安酒かの選択肢しかない町で、後輩がギャアギャア騒いでいても、同年代が下卑た話題で笑っていても、そこそこの距離にいて甘いキャスター・マイルドを吸いながら「いる」人でした。

そんなHさんが言っていた言葉で未だに覚えているのが、

「映画はたったの2時間。その2時間に無意味なシーンを入れるわけがない。すべてのシーンに意図がある。」

というもの。
ヘラッと笑ってサラッと仕事をする、小柄だけどデキる空気の人だったこともあったし、映画が趣味ってなんかカッコイイ、そんな漠然としたイメージもあったしで、なんだか印象に残っているシーンなのでした。

(そこで当時の私が「人生も映画みたいなもんで、本当は無駄なシーンなんてないんだよね。」みたいなイケてる風の気づきを得たか記憶は定かではないのですが)

思えばTikTokに、インスタリールに、Youtube。ファストフードのように気軽に楽しめる動画コンテンツが可処分時間を席巻している今、現代人にとってたった2時間3時間をまとめて確保することは気合や心の準備がいる行為のような気がします。

でも、たまにその言葉や、20歳のころ繰り返し見た映画を思い出しては、やっぱりたまには観たいなぁと思うのでした。


さて、ちなみにHさんが最高の先輩だったかというと…

他の先輩より怒る頻度は低かったものの、
その半端ない映画鑑賞から来る語彙力があるだけに、ダメージのでかい指摘の仕方をしてくる人だったので、しばらく思い出していたら、それなりにイヤ〜な記憶も思い出しました笑

この記事冒頭の「メールで叱責してきた人」です。

めちゃくちゃ辛かったやつじゃん…

不思議なことに「もう会わない人」って、思い出すとき「良いところ」が強めに脳に保存されてませんか。
薄い友情のクラスメイト、別れた彼氏、辞めるときに手のひらを返した上司。

ふと思い出すとき、楽しかったこととか良い人だったなとかがまず出てきて、次いでよくよく思い返していくと連絡ぶっちぎられてたり、ひどいこと言われてたり…笑

道が分かれた人ほど、美化される。
逆に近しい人ほど、色々見えて目についてしまう。

ケンカしながらも縁があって、そばにいる人こそ大事なはずなのに、不思議なもんだ。

学校で学ぶのは勉強だけではなく、職場で行うのは仕事だけではない。
なかでも1社目は、色々心に残ったものが多い経験でした。

人生が本当に映画なら、Hさんとの出会いもなんらか意味があるはず。良いとこ強めで思い出してもまぁいいか。
都合よく編集して生きたいな。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?