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感傷に浸る六月のある日

 昨日と今日に大差はないのに、それが十年ともなるとすごい変化がある。
 十年前の自分が想像もしていなかった場所に立っていたり、環境、人間関係も変わってしまう。
「さよなら」なんて言った覚えはないのに疎遠になってしまった人、結婚して幸せに暮らしていると風の噂で聞いた好きだった人。

 そんな風に昔のことを思い出し、自分の人生を振り返ることがたまにある。
 古いアルバムを眺めたり、携帯の写真をスクロールさせ、この人は今どうしているのだろうと想像する。

 たまに僕が思い出す人たち。
 その人たちもたまに僕のことを思い出してくれてたらいいなと願う。それを確かめることも出来ないから、この願いは祈りに近い。

 過去に縛られていては前には進めない。それでもこうして僕はたまに振り返り立ち止まる。元々自分はこういうタイプの人間だったってこともついでに思い出す。
 過去を振り返ることは、時に前を進むための背中を押してくれたりもする。そしてそれは切ない気持ちも連れてくる。何かを背負ってる気分になって、それでも前へと進む原動力にもなる。

 通り過ぎていった人。今、周りにいる人。僕の隣りの席に腰掛け、そして去っていった人。そんなことを繰り返している。

 空席には誰がやってくるのだろう。

 こんな気分の時に聴きたい歌がいくつかある。マーシー(真島昌利)はその一人だ。
『人にはそれぞれ事情がある』とはよく言ったものだ。
 もうすぐ梅雨が来る。梅雨が明ければ夏が来る。僕はあと何回、夏を迎えられるのだろう。今年も夏の終わりには『夏のぬけがら』を聴こうと思う。

 会いたい人がいることは幸せなことで、同時に会いたい人に会えないのはつらいことだ。

 あの人は元気にしているだろうか。

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