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9月28日 16℃


今日は一日冷たい雨が降っていた。 
北海道に越してきてから一度も傘を差していない。 元々手が塞がるのがいやで多少の雨ではフードをかぶって傘を差さないのに加えて、移動のほとんどが車になり、一年の半分近くは降ってもサラサラの雪だからだ。でも家にただの一本もないのはさすがに不便だね・・買おうね。

「北斎になりすました女 葛飾応為伝」を読んでいる。
初めて葛飾北斎の娘・応為の存在を知ったのは杉浦日向子の漫画「百日紅」だったと思う。こちらでは本名とされる「栄」として描かれていた。結い上げた女のえりあしのほつれた髪、ふっくらとした優美な指先や手のひら、画面に差される赤の色、着物の細やかな描き込み。彼女に美人画を描かせると「おれも敵わねえ」と北斎に言わしめるほどの腕前だったといわれている。

彼女について残されている記録はとても少ない。 生没年やその暮らしぶりも推測の域を出ない。当時の江戸は女の絵師として名を成すのはほとんど不可能と言っていい時代だった。文句のつけようのない美事な絵を描いても「葛飾応為」の名に価値は生まれない。そのため応為は自分の作品に己の名の代わりに飛ぶ鳥も落とす勢いの人気絵師である父の落款を残した。そのほうが単純に高く売れるからだ。彼女は名より実を取った。
現存する葛飾北斎の作品の中には応為の描いたものが少なからず紛れ込んでいるらしい。 北斎が没してからのちの彼女の消息はふつりと消えてしまったという。

彼女自身の落款やサインが残された数少ない作品が東京のいくつかの美術館に保存されているらしい。書籍でみたそれらの絵はとても美しかった。いつか実物を見てみたい。

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