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昨日壊れはじめた世界で (45-50)

おはようございます。6時に起きたのですが、もう既に太陽がギラギラと輝いていて、今後暑くなることを予感させています。

さて、昨夜今回図書館から借りてきたもう1冊、初めて読む作家さんの作品を読み終えました。

「小説新潮」に連載された連作短編集を、2作ほど改題して発表されたこの作品は、今の日本の若者たちが背負っている社会問題、それによってもたらされた苦しみを静かなタッチで描いた佳作でした。

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「実は、世界は、もう壊れはじめているんだ」幼馴染の翔子と再会した書店店主・大介は、すっかり忘れていた小学校時代の出来事を思い出す。同級生四人と忍び込んだ、町で一番高いマンションの最上階。そこにいた不思議な男は、世界の終わりを予言した。その真意を確かめたくなった大介と翔子は、三十年前の記憶をたどりながら再びマンションを訪れるが、男がマンションから飛び降りたという噂を耳にして…。大人になった俺たちは、世界を、自らを、救うことはできるのか。同級生との再会で呼び覚まされた、三十年前に出会った不思議な男の記憶。「ひび割れた世界」に生きる人々のかすかな希望を力強く描く連作短篇集。(「BOOK」データベースより)

ロストジェネレーション世代でもある彼・彼女らの人生は、決して平坦な道のりではなく、今も、家族との間や職場で、とても簡単には解決できそうもない問題に直面し、これでもかとばかりに傷つき続けています。

過去の一体何が原因なのか、誰かのせいなのか、どこかで道を間違えてしまったのではと考え、それが解れば、この先、また同じ間違いを冒さなくても済むのではないか、小さな積み重ねが大きなひび割れを作ってしまったとしても、小さなほころびに予め気づくことができればもう傷つかなくて済むのではないか、登場人物5人ともが考え、一人を除き、出会い、答えを見つけようとします。

作者はこう記します。

道標はない。答えは見つからない。p233

そして、

愛し返されることがなくても愛し、日々を重ねながら、たとえ最後は深い淵に墜落していくのだとしても、この不確かな地面の上を、ただ歩いて行くより他にない。p269

そう、私たちに「生きよ」と伝えるのでした。

暗い物語なのに、読み終えるとなぜか爽快感も感じる不思議な作品でした。きっと生きていくことの方がいつの時代も辛いことが多いですが、少しの幸せな思い出や記憶が、支えてくれるということを知っているからかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。暑さに負けないよう、しっかり食べましょう。

今日のバックミュージックはこちらでした。




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