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読書備忘録

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#読書記録

切ないけれど温かさが沁みてくる(17-50)

おはようございます。やっと1冊本を読みました。 「トレーニングマガジン」で連載され、2013年5月に単行本化された森沢明夫氏の作品です。 実は幻冬舎電子書籍noteが電子書籍フェアを発信され、Amazonをうろうろしていたらこの作品が目に入り、図書館の蔵書を借りて読みました。(幻冬舎さんごめんなさい) 駅前の寂れた通りの地下にある「スナックひばり」。そのママは身長2メートルを超えるマッチョなオカマ・通称ゴンママ。彼(彼女?)の周りに集まるのは、一癖も二癖もある「変わり者

小川洋子ワールドそして今日は皮膚の日

今日はなんとか外に出ることができました。が、今度は夫が風邪やら不整脈やら甲状腺ホルモンやらと病院に通うことになりました。 夫婦で元気溌剌とはなかなかいかないものです。 さて、やっと小川洋子氏の「小箱」を読み終えました。著者は好きな作家の一人です。 私の住む家は元幼稚園で、何もかもが小ぶりにできている。 講堂、給食室、保健室、人々の気持ちを慰める“安寧のための筆記室"もある。 私は郷土史資料館の学芸員であったバリトンさんの恋人から来る小さな文字の手紙を解読している。 従姉

ミステリーの感想はむずしい

昨日借りてきた湊かなえ氏の9月に出版された新刊を読み終えました。 新人脚本家の甲斐千尋は、新進気鋭の映画監督長谷部香から、新作の相談を受けた。『笹塚町一家殺害事件』引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、放火して両親も死に至らしめた。15年前に起きた、判決も確定しているこの事件を手がけたいという。笹塚町は千尋の生まれ故郷だった。この事件を、香は何故撮りたいのか。千尋はどう向き合うのか。“真実”とは、“救い”とは、そして、“表現する”ということは。絶望の深淵を見た人々の祈

いつもありがとう!また明日

今日もブログにお越しいただき、ありがとうございます。 昨日は久しぶりに夫と遠出をしてきました。さらに大きな買い物もして、私は大満足です。 さて出かける前の晩に読み終えた群ようこ氏の作品をご紹介します。 ヤヨイ、タカユキ、ユリコ、カツオ、マスコ。子供時代の一時期を共に過ごした同級生5人は、還暦を過ぎて再会した。それぞれの人生は、思い通りにならないことの方が多かったかもしれない。でも、「また明日」といい合える友がいて、これからも毎日は続いていく。東京オリンピック、アポロ

自らの傲慢を省みぬ者

いつも皆さんにこのnoteを読んでいただいて、本当に感謝しています。 ありがとうございます。 さて今日は久しぶりに京極夏彦氏の作品を読み終えました。 昭和二十九年八月、是枝美智栄は高尾山中で消息を絶った。約二箇月後、群馬県迦葉山で女性の遺体が発見される。遺体は何故か美智栄の衣服をまとっていた。この謎に旧弊な家に苦しめられてきた天津敏子の悲恋が重なり合い―。『稀譚月報』記者・中禅寺敦子が、篠村美弥子、呉美由紀とともに女性たちの失踪と死の連鎖に挑む。天狗、自らの傲慢を省

生きていくのが辛いのか?生まれてきたのが間違いか?

今日もブログにお越しいただき、ありがとうございます。 昨日、奥田英朗氏の話題の長編小説を読み終えました。 昭和三十八年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける―。(「BOOK」データベースよ

十二国記完結始まる

18年待ちに待った十二国記の完結が今月から発売され、ま第1、2巻を読み終えました。 久しぶりの十二国記の世界は私を吸い込んで、ドキドキハラハラしながら、あっという間に前半を読み終えた感じです。 まだまだ謎の部分の解明はされず、疑問を残しながら来月発売の第4、5巻を待つことになりました。 また嬉しいニュースも飛び込んできました。短編集が2020年発売決定したのです。 今年で完結する十二国記ですが、寂しい気気持ちを持っていたのは私だけではないでしょう。 現在読んでおられ

閉じ込めた人間が許すということ

2004年6月〜8月講談社ノベルス、2007年8月に講談社文庫から刊行され、著者の作家生活15周年ということで、限定愛蔵版として発売された作品を、今回初めて読みました。 本作で著者は第31回メフィスト賞を受賞しています。        (Amazonから画像をお借りしています) 雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す

アートへの熱き志に男が集う

先の直木賞候補にもなった原田マハ氏お得意の美術フィクションを読みました。         (画像はAmazonからお借りしています) 日本人のほとんどが本物の西洋絵画を見たことのない時代に、ロンドンとパリで絵画を買い集めた松方は、実はそもそもは「審美眼」を持ち合わせない男だった。 絵画収集の道先案内人となった美術史家の卵・田代との出会い、クロード・モネとの親交、何よりゴッホやルノアールといった近代美術の傑作の数々によって美に目覚めていく松方だが、戦争へと突き進む日本国内で

争いの中で、もっとも意味のないもの

8人の作家が二つの一族が対立する歴史を競作の形で描くという「螺旋プロジェクト」 今日読み終えたのは、プロジェクト5作目で、ここから女性作家が2人続くのですが、まずは乾ルカ氏が登場し、「蒼色の大地」の明治と「シーソーモンスター」の昭和後期の間を埋める形で昭和前期を舞台にして描かれた作品です。         (Amazonから画像をお借りしています) 太平洋戦争末期。敗色濃厚の気配の中、東京から東北の田舎へ集団疎開してきた小学生たち。青い目を持つ美しい少女、六年生の浜野清

ターゲットは自分でないと気づく

『STORY』連載エッセイでの平成最後の5年分を納めた、人気書籍3冊目を読みました。         (画像はAmazonからお借りしています) 数々のファッション企画、美容企画を向こうに回して、必ず人気ベスト10に食い込む、長寿人気連載!(Amazon内容紹介より) 本作もエッセイ全てに林真理子節が炸裂しています。 しかし3冊目となると、ふっと思い出しました。 「ああ、これは40代の人に向けて書かれているのだ」 そう私にとっては今更という内容が鼻につくようになっ

現役解剖技官が描く医療ミステリー

現在大学医学部法医学教室で、多くの異状死体の解剖に携わる現役解剖技官が、法医学の観点から描く医療ミステリーを読みました。 著者の小松亜由美氏は本作で単行本デビューです。         (画像はAmazonから借りしています) 仙台の国立大学・杜乃宮大学医学部法医学教室。解剖技官・梨木楓は、上司である若き准教授・今宮貴継とともに日夜、警察から運び込まれる身元や死因が不明の死体を解剖している。彼らが遭遇するのは、温泉旅館で不審死した編集者(「恙なき遺体」)、顔面を破壊され

身体の自由を少しづつ奪われてゆっくり死ぬ

         (Amazonから画像をお借りしました) 藤谷治氏の新刊を司書さんから勧められて読みました。 音楽評論家として著名な英文学教授・討木穣太郎は、綾峰県立音楽堂を活動拠点とする綾峰フィルの顧問としてたびたび綾峰県を訪れていたが、ある日この音楽堂の取り壊しと綾峰フィルの解散を告げられる。釈然としない思いのまま迎えた音楽堂の最終公演の日、音楽堂で殺人事件が起きた。殺されたのは、音楽堂の取り壊しを引導した男だった―。(Amazon内容紹介より) 藤谷治氏の作

続けていけば、それはいつか意味になる

韓国の演技派女優シム・ウンギョンと松坂桃李のダブル主演で映画化され、主要都市で6月28日に公開された原案作品を読み終えました。 官房長官会見に彗星のごとく現れ、次々と質問を繰り出す著者。脚光を浴び、声援を受ける一方で、心ないバッシングや脅迫、圧力を一身に受けてきた。演劇に夢中だった幼少期、矜持ある先輩記者の教え、スクープの連発、そして母との突然の別れ…。歩みをひもときながら、劇的に変わった日々、そして記者としての思いを明かす。(「BOOK」データベースより) 奇しくも読み