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読書備忘録

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2021年9月の記事一覧

ぼく、モグラ、キツネ、馬

以前からTV番組で紹介されていたので、読んでみたいと思っていましたが、図書館の返却された本の中にあるのを見つけ思わず手に取り読んでしまいました。 8歳の子どもから、80歳の大人まで圧巻のイラストで読む、人生寓話。アメリカ、イギリスの両方で100万部を超え社会現象となった異例の大ベストセラー。川村元気が初の翻訳。(Amazon内容紹介抜粋) 絵本なので、すぐに読めますが、彼らが交わす言葉の中に人生における深い意味が散りばめられていました。 #シニア #いなか暮らし #つぶ

透明な螺旋

ガリレオシリーズ第10弾、最新長編。明かされる「ガリレオの真実」 この帯を見て、すぐに図書館にリクエスト、幸いにすぐ借りることができました。 長編といっても前回作品「白鳥とコウモリ」に比べて、304ページと短かったので、あっという間に読み終えました。 愛する人を守ることは罪なのか? 事件の背景と湯川学教授出生の秘密を上手くリンクさせているところはさすがだと思います。 しかしミステリーとしては少し簡単すぎた気がしました。 今の時代で問題になっているDV、婚前妊娠と出産、

琥珀の夏

秋の彼岸も過ぎると、グッと秋めいてきました。皆さんのお住まいはいかがでしょうか? 昨日は辻村深月さんの新作を読みました。 オウム真理教の事件はとても衝撃的で、主犯格たちの死刑によって事件は一応完結された感じですが、多くの小説家たちによって事件の内部に切り込むような作品が多く出ました。 今回の辻村深月さんの作品も、理想の教育を掲げ集団生活をする組織があって、聖なる泉の水なるものを販売、そののちその水を飲んだ事によって健康被害が生じ、閉鎖された土地から白骨死体が発見されると

みとりねこ

久しぶりに有川ひろさんの作品を読んで、心が温かくなりました。 収録作品 ハチジカン〜旅猫リポート外伝 こぼれたび〜旅猫リポート外伝 猫の島 トムめ シュレーディンガーの猫 粉飾決算 みとりねこ 映画化もされた旅猫リポートの外伝2編も含めたどの作品も猫とか飼い主との心温まるエピソードが描かれています。動物を飼わない私ですが、とても胸が熱くなりました。 最近単行本化がなかった有川さんですが、あちこちで作品を発表されていたようで、安心しました。好きな作家さんなので今後も期待し

貝に続く場所にて

第64回群像新人文学賞を受賞してデビュー、第165回芥川賞受賞もされたこの作品を読みました。 まず読み終えて、とても不思議な感触を感じました。 ドイツのゲッテンゲンに住む主人公が、街での地震に対する感じ方の違いを上手く表現しています。 ドイツの街を歩く度に思い至るのが、地面への鮮やかなまでの信頼感だった。p37 地震が言葉の領域から出てこない場所の人たちにとって、私が離れた土地の感覚を持ち続けていることは、単に奇妙の一言で片づけられることなのかもしれない。p41 そ

リボルバー

画家や絵画をテーマにした作品を多く書かれている、原田マハさんの新作を読みました。 ゴッホ、テオ、ゴーギャンを描く史実の中にゴーギャンの子孫の存在とその家系図を埋め込むことによって、ゴッホ、そしてポール・ゴーギャンの二人の画家の生涯を原田マハさんらしい考察で物語ってくれています。 史実に基づきながらも、もう一つのリボルバーの存在を想定し、史実と矛盾しないぎりぎりの範囲内で物語を収束しているのもさすがだなと感じます。 私のように絵画に知識のない者にはありがたいですが、ある程

ヴァイタル・サイン

相変わらず寝つきが悪いので、TV番組「王様のブランチ」にて著者が出演、紹介された作品を読みました。 現役医師でもある著者が終末期の患者が多く入院する病棟で働く女性看護師の目を通して、医療現場の現実や限界を本当にリアルに描いたエンタメ長編です。 私も父が癌で入退院を繰り返していましたので、少しは看護師さん達の苦労を知っていた気がしていましたが、フィクションとはいえ病院は本当に過酷な現場です。みなさんよく精神的におかしくならずに頑張っておられると、今更ながら頭が下がります。

花束は毒

南の方の台風と秋雨前線の影響で、私の体調も今ひとつです。頭痛は治らず、食欲もありません。 昨夜も眠れず、この作品を読んだら、夢中になりあっという間に読み終えてしまいました。 最近読んだミステリーの中で、一番面白かったと思います。 ーーあの時、彼女がもたらした「解決」は今も僕の心に棘を残している。大人になった今度こそ、僕は違う結果を出せるだろうか……。 そんな思いを持ちながら、事件依頼者の木瀬と共に、真相へと近づいていくのですが、探偵の北見との縁はやはりこういう結果にな

兇人邸の殺人

頭痛が続く中、予約が入っているとのことで早めの返却をお願いされたこの作品を頑張って読み終えました。 「屍人荘の殺人」で鮮烈なデビューをした今村昌弘さんの神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子によるミステリーの第3作です。 前作から2年半弱空いているせいか、今までと違った設定によるものなのかとても新鮮に読みました。 今回のミステリーは「クローズドサークル」、謎解き役である剣崎比留子が、閉じ込められたまま推理し、葉村譲とのシャーロックとワトソン関係が以前にも増して強くな

時間栄養学入門

おはようございます。早くも9月の3分の1が過ぎて、開け放している窓から過ぎていく風が日毎に冷たくなるのを感じます。 さて先般このような報告のnoteを書きました。 そしてやっと自分なりに読み終えることができました。 第1章 体内時計とはなにか 第2章 時間栄養学――「いつ」「何を」「どう」食べるかで体が変わる 第3章 食物繊維を摂るタイミングで、血糖値や腸内細菌はどう変わるか 第4章 体内時計と代謝――間食は摂ったほうが体にいい? 第5章 時間調理学――時間によって調理

あきない世傳金と銀(11)風待ち篇

南の方を動いている台風の影響を私の頭が受けていて、この2、3日頭痛が強くなったり、弱まったりを繰り返しています。 日本は昔から自然災害の多い国ですが、最近は特に多い気がします。どうか今回の台風で被害が出ませんようにと祈るばかりです。 高田郁さんの時代小説はどれも好きですが、この作品も早くも11巻まできました。 呉服商を舞台にしたこの作品は主人公幸が、奉公先の呉服商で、店主と夫婦となりますが、嫁いだ夫が次々となくなり、商いの才能を認められて店主となるものの、次々と困難が待

存在しない時間の中で

昨夜は山田宗樹さんが8月に書き下ろされ、書評家大森望さんが本書の帯に「〈神〉からの問いに人類はどう答えるか? 『三体』に正面から挑む、究極の宇宙論ミステリー」と紹介された新作をワクワクしながら読みました。 率直に言って物理学、数学、天文学等の専門的な要素が満載なフィクションで、知識があったならもっと面白かっただろうなと感じた作品です。 それだけではないでしょうけれど、「文学」としてとか「フィクション」としてとかいうことを追いかけてしまった私は何も掴めずに終わってしまいまし

水たまりで息をする

昨日高瀬隼子さんの第165回芥川賞候補作品を読みました。 「夫が風呂に入っていない」 昔のように家に風呂がない時代ならともかく、現代で当たり前のようにする入浴という行為をしていないという、端的ですが、ドキッとするフレーズで物語が始まります。 私も仕事先でおかしくなって、その後退職したので、この夫の気持ち、行動が少しわかる気がしながら読み進めました。 狂うということは、感情の爆発の先にあるのだろうか。苦しさでいっぱいになったり、悲しみに暮れて耐えられなくなったりしたら、

ブランド

急に涼しくなって、でもこちら雨が続いてスッキリしないお天気に私も崩れそうでしたが、本を読んでなんとか頑張っています。 スッキリした表紙と装丁に、いつもの吉田修一さんでない雰囲気を感じて、作品を手に取りました。 「出会いがあれば、別れがある」とよく言われるが、ときどき別れなどないのではないかと思うことがある。どんなに距離が離れていても、どんなに気持ちが離れても、出会ったという事実はなくならない。この事実だけを積み重ねて人は生きているような気がしてならない。p22「絆」より