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“準”喫茶営業の7日間

ひとまず”準”喫茶での連日営業を終了した。

ゲストが来ようが来まいが閉めるのは屈した気がして気に喰わない、とほぼ意地で開けたGW。予想以上にご来店いただきまして本当にありがとうございました。
「酒が目の前にあるのに飲めないって辛いね」と苦笑混じりに話される方もあったけど、出せないこちらも辛かったです。
そしてこの愚策をまだ続けようとする無能どもには反吐しか出ない。

しかし、皮肉にもこの”準”喫茶は得たものがそれなりにあったし、自分の意識的な部分での成長を感じられるものでもあった。
おそらく1年前にこの状況だったら休業かspeakeasy(潜り酒場)を選択しただろう。酒の出せないBARなんてBARにあらず、と。

正直に言えば今回だってspeakeasyは考えた。が、夜の人通りは皆無(日本人は真面目だと思う)。加えてわけのわからない連中も「酒なんて酔えればいい」なんてのも、もとより相手にしたくないのだから効果も数字も見込めない。
ではどうするか?
「(不)純喫茶」と銘打って昼からbottled cocktailを出そうかとも考えた。せっかくの禁酒法時代だしな、と。
しかしすでにやっているところはあるし、郊外の町でやったとて話題性も面白い展開も大して期待できない。
さて、どうしようか…と去年の今ごろを振り返ればパウンドケーキを焼きまくっていた時期。
それに前回も書いた通り、モクテル(ノンアルコール・カクテル)も一瞬ではあるが集中的に扱った。つまり、喫茶的営業をする下地はある程度できていたのだ。
それに「バーテンダーがやる喫茶店」という方が面白そうだ。振り切れるだけ振り切るのも新しい経験が得られるし。

ということでやってみた。

…こんなに手間がかかるとは思いませんでした。
そうであった。去年のモクテルも調整にだいぶ苦労させられたんだった。
しかも今回のメインターゲットは店内。”To go”ではないのだ。つまり空いたグラスがそのままで良いわけがない。
次を聞きたい。聞きたいのは山々だけど予想もしないペースでグラスが空く。
少し考えれば当然なのだけど、アルコールが入っていないから液体は簡単に喉を通る。
当人はいつも通りの感覚でも量的にはおそらく1.5~2倍のペースで飲んでいるのではないか。
だから複数オーダーこなして終わると最初の方はほぼ確実に空いている。
そもそも慣れない事をやるのにいつも通りのアドリブ・メイキングなんて無謀な事をするからこうなるのだ、と思っても後の祭り。
ひさしぶりに頭も体もきっちり動かさないと追いつかなかった。いや、ぜんぜん追い付けていなかった。

振り返って一番の反省点は−メニューを作らなかったという事を除けば−コーヒー、紅茶の用意不足でしたね。やたら出た。
”準”喫茶営業と謳いつつ、基本線は「モクテル屋」思考だったので、どちらも”ミキサー”であって、それ自体のオーダーは大してないだろうと予測していた。しかしゲスト側からしたら喫茶店認識。出るよね、両方とも。読みが甘いにも程がある。
おかげで帰る前に仕込むのが日課になった6日間であった。

辛かったのは書くまでもなくアルコールを使えないという一点。とにかく表現幅が狭まる。
ジンの香りが、ウォッカの酒精感が、ラムの甘味が…アルコールの持つ香気成分がまるで使えないのはとてもハードモード。
芳香蒸留水のひとつでも作っておけばよかった。

ひとり喫茶営業は仕込みが80%くらいじゃないですかね。メニュー作って仕込んでおくことの大事さを痛感。仕込みものの選択肢を提示+フルーツのアドリブもできるというスタンスの方が効率よく回せたはずだ。
ひとつくらいフードも入れておこうとサンドイッチ作ったのだけど、これもオーダーの度ゆえ、それなりに手を取られる。まあこればかりは作り置きというわけにはいかないので仕方なかった(具材はもちろん作り置きしたけど)。

次に活かせるかはさておき(この経験値が必要な状態なんかさっさと無くなればいい)、経験できたのは良かったですね。
BARの感覚でやれると思ったら想定以上に大変でした。

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