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私は機関手

今夜私は、


私という列車の
機関手なんだなと思った。

転轍機を動かすことは出来ない。
ただただ真っ直ぐ進むだけだ。

あのまま、


あっちの道を進んでいたら、
出会うはずの人がいた。

列車には、乗客が沢山いる。

途中で降りた人もいる。
乗車しなかった人もいる。

沿線で見送るだけの人もいた。

人生の登り坂になると、
列車の重さにあえいでしまう。
沿線には、見物客もいない。

乗客から機関車は見えない。
機関手がいることも
知らないかもしれない。

機関手の私を、乗客は知らない。


でも、
列車の名前は知っている。
「こだま1号」

運転するのは蒸気機関車。
モクモク煙を吐くから、
沿線住民には迷惑がられる。でも、
子どもたちは喜んでくれる。

トンネルに入ると乗客は、
あわてて窓を閉め始める。
閉めそこなうと、
吹き込む煙を浴びる。
周りは、眉をひそめる。

こんな古い機関車だけど、


ファンだって少なくない。

私は誇りを持って運転する。
誇りはあるけれど、
今のままで良いのかと、
自問自答することもある。

山の景色は楽しめないが、
海を眺めて走るのは好きだ。

線路は大概、平地を走る。
乗客は機関車の事など忘れ、
沿線の景色を楽しむ。

私自身は知られていない。


時々それを、淋しく感じる。

こんなに頑張っているのに、

それは仕事だから、
頑張るのは当たり前。

それはそうだけれど、
ねぎらって欲しい時もある。

機関手だって人間だ。

悲しいことも、
苦しいことも抱えてる。

それでも休まず、仕事する。

ほめてもらいたい、
そう望んでは、
いけないのだろうか。



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