これもマッツ・ミケルセン主演『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王』2012年デンマーク・アカデミー賞作品賞候補 2020.6.10
18世紀後半のデンマーク王室、王妃の「不義密通」というスキャンダルを描いた歴史ドラマです。『物語 北欧の歴史』(中公新書)という本を読むと、「デンマーク人は当然のことながらこの国王と王妃の話が出ると非常に不快がる。デンマーク人との話ではこの国王のことには触れないほうがよいだろう」と書かれています。そんな、タブーにふれるテーマだから、話題になったのでしょうね。
18世紀後半。デンマークと、海をへだてたイギリスは親戚王室です。若い国王クリスチャン7世に、15歳になるイギリス国王の孫娘カロリーネが嫁ぎます。この国王がおかしかった。先ほどの『物語 北欧の歴史』では「デンマーク国王中もっとも痛ましい国王」、悲劇の狂王とよんでいます。新婚初夜はなんとかすませたものの、王は城下の売春宿にいりびたり、そのうち、ドイツに旅にでてしまいます。旅行中病が悪化し、ストルーエンセという医者を雇います。彼とはウマがあいます。帰国すると宮廷医師にばってきし、信頼しきるようになります。ストルーエンセは、国王の威信をかりて、政治まで口出しをするようになります。それだけでなく、なんと、王妃と恋におちてしまうのです。
ただ、史実でもそうだったようですが、立場を利用して私腹を肥やす悪人ではなく、フランスの啓蒙思想家ヴォルテールの影響を受けた理想主義者でした。国王に変わり、次々と改革策を打ち出すのですが、あまりに急進的で無理があり、王妃とのスキャンダルを暴かれ、最期は断頭台の露と消えます。八つ裂きになった、といわれますが、映画はそこまでは描いていません。
ストルーエンセを演じるのが、おなじみのマッツ・ミケルセン。王妃カロリーネ役はアリシア・ヴィキャンデル。この作品のあと、『リリーのすべて』に起用され、米アカデミー賞助演女優賞を受賞、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』ではアクションスターとして、ハリウッド映画に主演しています。映画は、2012年のデンマーク・アカデミー賞では作品賞候補。マッツは主演男優賞候補のみ、作品賞も逸しますが、ニコライ・アーセルは監督賞、狂王クリスチャン7世を演じたミケル・フォルスガードは助演男優賞、その義母でストルーエンセ追い落としの黒幕、皇太后を演じたトリーヌ・ディルホムは助演女優賞を受賞しています。そのトリーヌ・ディルホムは、先週日本でも封切られた『罪と女王』の主演です。怖い役がお似合いです。
映画は王妃カロリーネの独白で始まり、終わります。彼女はドイツに追放されるのですが、狂王とのあいだに生まれた皇太子が良くできた子で、彼は長じて…、というハッピーエンド。めでたしめでたしです。
2013年4月27日日本公開
原題:En kongelig affare
製作年 2012年
製作国 デンマーク
配給 アルバトロス・フィルム
上映時間 137分
監督・脚本 ニコライ・アーセル
製作総指揮 ラース・フォン・トリアー他
出演 マッツ・ミケルセン/アリシア・ビカンダー/ミケル・ボー・フォルスガード/トリーヌ・ディルホム
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