一縷の光のような怒り・綾野剛 後編
※この記事は感想がメインなため、全体的にネタバレを含んでいます。
前編↓
「怒り」の綾野剛の美しさと魅力
前編の感想にも綴ったが、映画「怒り」に映る綾野剛の美しさは格別だと思う。
怪しげなネオンの光に照らされる直人の肌、雨の中そっと優馬と寄り添う直人、長く愛用している草臥れたシャツから覗く鎖骨。
どれをとっても大西直人という人物を構成する上で欠かせない魅力だが、なぜ魅力的に見えるか。
演者が綾野剛だから。
まあそれを言ってしまえば元も子もないので、今回は言葉にしてしまえば陳腐ではあるが、持てる語彙力を総動員して考えてみようと思う。
まず結果として以下のことが「怒り」の大西直人の魅力に繋がっているのではと感じた。最初から最後まで素晴らしいことは承知の上で、私が感じた幾つかの点を挙げていく。
デコルテが綺麗
比較的胸元の開いた服から覗くチラリズム
右頬のほくろ
ヨレヨレの服
肉感のある肌/中肉中背
透き通るような白い肌
体育座り
声
常に幸薄げな表情
八の字眉
どこにでもいそうな雰囲気
etc
挙げればキリがない…!
もう全部!全部素晴らしいよほんと!!!
全部について語りたいのは山々だが、今回は三つに絞って考えていきたい。
①デコルテが綺麗
これはどの綾野剛作品についても、共通する魅力部分だと思う。綾野剛にハマった人間なら多くの者が思うことである。
デコルテめちゃ美しい。
彼は首が長くすっきりしていて、尚且つ鎖骨が美しい形をしている。(と思っている)
もちろん贔屓目もあるかもしれない。
比較的胸元の開いた服から覗くチラリズム
透き通るような白い肌
また上記の2項目も通ずるものがあると思う。
綾野剛は基本的なベース肌が透明感溢れる白い雪のような肌だと、私は考える。
最近の言葉で言えばブルーベース、ブルベ肌ではないだろうか。
私は美容に精通しているわけでも、何か資格を持っているわけでもないが、何となく見ていて彼はブルベ肌だなあと思うことが何度かあった。
そんな白い綺麗な肌と華奢に見えるデコルテ+胸元の開いた服の相性の良さは折り紙付きだろう。
大西直人は終始胸元の開いた服を着ている。さまざまな角度で映し出される鎖骨、胸元、首筋。見ているこっちまでもドキドキしてくるほど、匂い立つ色香があると思う。
綾野剛は私が見てきた(あまり多くはないが)俳優さんの中でも、比較的脱ぐ俳優さんだと感じることがある。亜人然り、花腐し然り、ヤクザと家族然り結構な頻度で脱いでいる気がするのだ。
上半身裸だったり、全部脱いでいたりといった綾野剛もいいが、服を着ている上でのチラリズム、怒りでは胸元チラリだがそれもすごくグッとくる。デコルテと言えば影裏とLifeも素敵だ。
②肉感のある肌/中肉中背
これは個人的に感じたものだが、綾野剛は細身の体型の印象が強い。
Lifeや孤独な惑星あたりの2010年前後の作品は、特にその傾向が強いと思う。細いというよりも薄いのだ。これも綾野剛の持つ骨格がなせる技ではないだろうか。
しかし横から見た時の線の細さ、薄さが「怒り」ではあまり感じられなかった。もちろん細い。けれどもLifeと比べてもらったら一目瞭然だろう。
映画「怒り」の直人には、肉感があった。
輪郭もより丸みを帯びていて、ふっくらとした頬が愛くるしい。全体的なフォルムも丸っとしていて可愛らしい。語彙力のないヲタクだ。
序盤で体育座りをしていた直人の姿、ホスピスで優馬と彼の母の前で黒子を擦る横顔、小言を言われながらオレンジを切る直人。
どの姿も他の作品に比べ、顔付きや腕周りがふっくらとしている(と思う)。
そしてこの肉感が平均的な男を醸し出しているのではないか。
私はそう考察する。全編を通して、どれをとっても平凡な容姿に見えないだろうか。
けれどもその平均さが、雨の中肌を合わせる直人の肌感、質感、全てを構成する上で相乗効果となり、”直人”という人物の魅力を引き出しているように思う。
③声
綾野剛を語る上で声色は外せない。作品によって声を使い分けているのは、彼の作品をいくつか見てきた方ならわかるはずだ。
対比として2017年に上映された、佐藤健主演の映画「亜人」を挙げたい。
冷酷な佐藤を演じる綾野剛の声色は、低く重低音で声に密を感じる。
ここ注目ポイント!!
声に!密を!感じる!
何と表現すればいいのかわからないが、声が密集している感じがある。
「怒り」の直人の声はというと、声が分散していると表現したい。俗にいうウィスパーヴォイスの一歩手前くらいではないだろうか。それに加えて亜人の佐藤と比べると甘めの声だ。優しく包み込んでくれるような、包容力のある声を持つ。
直人は囁くような声でもないが、空気を多く含んだ声色に聞こえる。特に東京編終盤の、直人と優馬が窓辺にもたれて会話をするシーンが印象的だ。
「一緒は無理でも、隣ならいいよな」
この台詞である。
夕焼けに照らされた直人の横顔と、綾野剛の持つ色素の薄いヘーゼルナッツの如き瞳が神秘的だ。そんな綾野剛から発せられるこの台詞に、落ちる涙を禁じ得なかった。
この時の直人の声は、誰に聞かせるでもなく呟くように言っている。
この瞬間、私の涙腺は崩壊した。
どこか遠い場所を見つめる瞳と自分の死期を悟った猫のような、そんな達観した表情が相まって、この映画の中で忘れられない台詞ナンバーワンである。
そして私は綾野剛が発するこの台詞の「り」の発音が非常に好きである。隣ならいいよなの「り」だ。どこかおぼつかない、舌足らずのような、彼特有の甘めの発音が好きだ。
ここ最近の作品ではとんと見かけなくなったが、数年前の作品を見ればハッキリと違いがわかる。滑舌の練習をされたのかもしれない。
映画「怒り」は2016年公開の作品だが、2024年に公開された「カラオケ行こ!」では際立って「らりるれろ」の発音が気になるということは無かった。
少し寂しく思う気持ちもあるが、二通りの綾野剛の声が聞けると考えたならそれはそれで乙なものである。
綾野剛と妻夫木聡の演技への情熱
ご存知の方も多いかもしれないが映画「怒り」の撮影中に、妻夫木聡と綾野剛は同居をしている。
同居を、している。
記事や雑誌のコメントによると、どちらからともなく誘ったらしい。二人で物件を探し結局ホテルに落ち着いたらしいが、同居中は互いのことを役名で呼んでいたという。
また道端でキスもしていたらしい。
妻夫木さん曰く同居最後の日は、綾野さんからだったのだそうだ。二人で部屋に戻る途中、綾野剛がコンビニに行くと言ってそれっきり。最後のシーンに合わせ、綾野剛自ら実行したと記事にあった。
いやはや、どこまで観客を泣かせればいいのか。
映画を観た後にこの話を知ったのだが、映画で緩んだ涙腺は止まってはくれなかった。残された妻夫木さんの心情たるや想像に難くない。
なかなか思っていても、できる事じゃないと私は考える。二人のベクトル、熱量が同じ水位にあって初めて実現可能な役作りではないだろうか。そんな彼らが一つの方向を見つめ、この「怒り」という難しい役どころに臨んでくれたことは、一観客として尊敬の念に堪えない。
終わりに
まずここまで読んでくださった方にBIGLOVEを。
そして私のように映画「カラオケ行こ!」で綾野剛に興味が湧いた方は、ぜひ「怒り」を観てほしい。全体を通して重く辛い作品ではあるし、同性愛の表現もある。忌避感がある人もいるだろう。
けれどももし、もし頭の片隅にでも置いていただけて、ふとした瞬間に思い出してくれたなら。
配信サービスでも、レンタルビデオ屋でも、なんでもいい。手を止め足を止め、ほんの少しこの映画に時間をくれないだろうか。
綾野剛はもちろんのこと、妻夫木聡含め他の出演者も圧巻の演技なのだ。
「カラオケ行こ!」とはまた違う表情の綾野剛がそこには”いる”。
もしかしたら、貴方の忘れられない作品になるかもしれない。かたや記憶の波にさらわれる作品になるかもしれない。けれどもこのノートが、何かしらのキッカケになれば喜びはひとしおだ。
以上。
転げ落ちるように綾野剛に魅せられた、通りすがりの人間の感想ある。
2024/04/24
まあこの感想ノートに辿り着いた人は割と観てると思うんですけどね!皆さんはどうでした?私?私は一生忘れられないです!直人ーーーーー!!!
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