観光DXは観光地の『稼ぐ力』を向上させるため
前回の「観光DXについて考える」において、DX=「デジタル化による変容」という直訳から、「観光DX」の定義を、「観光に関して、デジタル技術により創出されたある状態について、『その状態になる前には、もう戻りたくない』あるいは『戻れない』状況」ととらえました。
そして、その具体的な事例として福井県の「駐車場の混雑情報配信」をとりあげました。
今回は、より包括的に観光DXがカバーする具体的なアクションをとりまとめます。参照するのは今年(2023年)4月に発表された観光庁の「観光白書」です。これを読み解くと、以下の2つの疑問点の観光庁としての回答が明示されています。
「観光DXの推進とは、具体的にどのようなアクションを意味するのか」
「なんのために観光DXを推進させるのか」
後者の回答はシンプルで「観光地の『稼ぐ力』を向上させるため」です。構造的に観光産業が持つ生産性の低さを改善させ、観光産業従事者の待遇改善と併せ、地域活性化につなげるためには観光DXが必要と「観光白書」では語られています。
そして、観光DXの推進がカバーする具体的なアクションとして、「観光分野におけるデジタル実装」というタイトルで、以下の4つを「ポストコロナに向けた観光庁の主な施策」の三本柱のひとつとしてあげています。
①顧客予約管理システム(PMS)による効率化
②観光地のデジタルサイネージや観光アプリを活用した混雑回避・人流分散
③旅行者のキャッシュレス決済データ等を用いたマーケティング(CRM)による再来訪促進・消費拡大
④観光地域づくり法人(DMO)を中核としてデジタル人材を登用・育成し、DXを主導
前回の福井県の事例は上記の②にあたります。混雑を回避できた旅行者が「また来たい」と思ったり、口コミで「便利だった」と情報発信したりすることで、結果、当該観光地への旅行者の増加⇒福井県の「稼ぐ力」の向上が期待できる事例です。
それぞれの事例には、地域の自治体やDMO関係者の思いがあり、ご苦労があり、またそれを支える事業者(ITシステムベンダー・ITコンサルタント等を含む)のノウハウの蓄積があります。
神楽番頭のNOTEでは引き続き、観光DXの成功事例を取りあげ、関係者への直接インタビューを試みます。そして、その事例の別の地域への横展開の可能性についても探っていきたいと考えています。