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ビルとテッドの時空旅行 ラストでエクセレントになれなかった理由言語化しました

本作においての失敗は構成する要素が70分で処理できていない
それどころか全てが薄味すぎるフルコースを運ばれているような気分になる映画だ。

書き出しがぶっきらぼうになり大変申し訳ない。
本作の出来にあまりにも憤りそして、Twitterの評価も何故か高い状態に、私はこれを投稿するしかないと考えた次第だ。

過去作の評価

ビルとテッドシリーズは、1989年ビルとテッドの大冒険 続編となるビルとテッドの地獄旅行公開された。
ビルとテッドの大冒険は、ロックスターになる事を夢見ているカリフォルニアの高校生ビルとテッドは、歴史の先生から今度の研究発表の成績次第での落第を宣告されてしまう。

そんな2人の前にルーファスと名乗る謎の男が現れ、電話ボックス型のタイムマシンを使って過去への旅に2人を出す。

こうしてビルとテッドは様々な時代を巡り、多くの歴史上の人物と出会うという奇想天外な冒険を繰り広げる

地獄旅行では無事落第を回避するもビルとテッドはロックで全世界を救済し英雄となる夢を抱いていたが、それを快く思わない未来の悪の権化デ・ノモロスは2人そっくりのロボットを送り込み、2人を殺してしまう。

地獄に行ったビルとテッドは“死神”グリム・リーパーをボードゲームで打ち負かし、天国に行って火星人の協力を得てから生き返り、自分たちもロボットを造り、反撃を開始する。


本作はカルト映画としてじわじわと人気であり、映画ライターの高橋ヨシキさんが事あるごとにイベントで地獄旅行のラストを感動するシーンとして何度か流していることでも知られている。
キアヌリーヴスのマトリックス以前のハマり役として映画通の中では知られており大変面白いコメディ作品である。

私自身はビルトテッドシリーズは今年になってみた程度の新参のファンではあるが、2作目のラストで泣いてしまったほど心打たれた。
こんな2人だが、世界を変えるほどの男になれるのかもしれない。
まさに、ヒップホップユニットCreepy Nutsの楽曲「かつて天才だった俺たちへ」を聞いたような高揚感を得た。

https://m.youtube.com/watch?v=_dAzUOzWvrk

ビルトテッドの時空旅行あらすじ

本作は2作目であるビルとテッドの地獄旅行から 30年後の設定で地獄旅行の時点で赤ん坊だった子供たちもかつての彼らぐらいの年齢であろうか。

相変わらず二人ともエクセレントな関係を続け音楽活動も行なっているものの全然ダメ

自分たちは、良好だと思っていた夫婦関係も冷え切っており未だ世界を救う曲ができずくすぶっているどんずまり状態。

そこに未来からの使者再び彼らを迎えにやってきた。
しかしなぜか怒られムード 彼らが世界を救う曲を作らなかったせいであと77分30秒で世界滅亡という事態に陥っていた

未来側もなぜラスト77分まで彼らに声をかけなかったんだよ というツッコミは置いておき、早速楽曲制作に入るがやはり即諦めて未来の自分たちならば作れてるんじゃね?という神アイデアを思いつき、いつもの電話ボックス型のタイムマシンを借りパクして未来へ 

未来に希望を持つってそういう意味じゃねえだろ というツッコミは置いておき ところが何年たっても曲はできてなどいなかった。各所であの時頑張らなかったからこうなっているんだと未来の自分たちにdisられつつ時間旅行を続ける。
そして娘たちも行動を開始する。父親たちに聞いていたタイムトラベルの光景を目撃したことから父親たちが万全の状態で演奏するため様々な時間から世界最強のバックバンドアベンジャーズを招集する。

本作の褒めポイント

本作の評価できるポイントから先に述べておこう。

未来へのタイムトラベルシーンはトータルで見れば後述する不快感を除けばコメディとして楽しい。主人公2人の娘たちはかつての2人のようなアホで互いにエクセレントな関係性はむしろ主人公たちよりも魅力的だ。
そして最後の演奏シーンも素晴らしい。音楽の力で世界の滅亡を止めるという某昭和ノスタルジー全開漫画の実写映画最終章的展開(日が暮れてどこからかカレーの匂いがしていることは間違いない)も、唐突ながらも説得力のある展開で見事クリアしてみせた。
全時代の人々が同じ音楽に包まれることで平和が訪れるという描写をなんとかやり遂げ即興で作曲するのも打ち込みで即時解決という現代らしいアプローチで難なくクリアしてみせたのは素晴らしい。ただ残念ながら演出でカバーしているものの前作ラストのGod Gave Rock 'n' Roll to You IIが演奏されるシーンを越えられていないのだけは残念ではある

https://www.youtube.com/watch?v=1cEdqWZi13I

さて本作の残念ポイントを挙げていく。

本作が好きな方や参考までに批判を見たいという方以外はブラウザバックして頂いてかまわない。


多すぎた構成要素薄まる味のフルコース

本作においての失敗は構成する要素が残映画の残り時間77分で処理できていない点だ。
一言で言い表すとすれば、全てが超薄味すぎるフルコースを運ばれているような気分になる映画だ。
過去作要素などお楽しみポイントは多いのだが中身がない。
ざっくりだが要素は以下の通り

1中年ビルとテッドの挫折と葛藤 
2娘たちというニュージェネレーションの魅力
3曲を手に入れるためのタイムトラベル
4バックバンド招集のためのタイムトラベル 
5バックバンド同士のわちゃわちゃ
6彼らを殺せばワンチャン世界救えるんじゃね というとんでも陰謀論で未来から送り込まれる謎のフリーザロボ
7死神を登場させるためにロボットに殺される両チーム 
8地獄での死神との再会と和解
9地獄からの帰還
10ラストの世界を救う演奏


当然29年ぶりのカルト映画の新作とため ファンからしても製作者からしても見たい要素
やりたい要素は多かったと思いますがしかし、如何せん詰め込みすぎた本作。
特に死神を出すために作られたとしか思えないキャラも登場することが、この問題を象徴する。
彼らを殺害せんとするとするロボットの新キャラ でデニス・ケレイブ・マッコイ(以降デニス)だ。

主人公2人が曲を手に入れに行ったのち、未来人がビルとテッドを殺せば未来を救えるかもというトンデモ理論というか陰謀論というか勘で送り込まれる。彼らの殺害はなんだかんだで成功するが、結局そんなことをしても世界は救えなかったわけだ。
これによって彼らが死に地獄へ落ちたことで死神と再会しブルースブラザーズ的な展開を経て地獄を脱出する。
彼が登場した時点で、彼が2人を殺して地獄へ行くのだろう。そして地獄で死神と再会するのだろうという展開が見え見えである。その上ただでさえ時間がない飲みも関わらずのノソノソと主人公チームに動向するのだが、デニスには死神程の愛嬌もないためコメディ的な笑いにも欠ける。その上ビルとテッドを殺し世界を救うという究極のトロッコ理論で彼らを殺すという戦略に打って出たのもエクセレントな未来人にあるまじき行為なのではという作品ない矛盾すら抱えている。まあデノモロス(2作目で登場する未来世界の悪党 タイムマシンを利用しぶるとテッドの発言が世界のあり方を決定づける日に遡り二人をそっくりロボに殺害させ自身に都合の良い未来に書き換えようとした人物)のようなイレギュラーもいたしそれほどあの二人が世界を救わないことに怒りを燃やしていたという可能性もあるが。
というように、構成要素が互いに殺し合っているとまではいかないが、70分程度で消費できる量をはるかに越えてしまっていたためこのような無理や齟齬が生まれているのは間違いない。

その結果薄まっている要素で一番大きい要素(煮詰められていないように見える要素と言い換えることもできるだろう)が中年ビルテッドだ。

 

中年ビルとテッドの自意識

冒頭のどんずまり感はおそらくどんなに頑張っても結果が出ないという普遍性がタイムトラベルが始まるまでは共感できる。
ロックバンドワイルドスタリオンズは、伝説のライブの後、時代とともにあっという間に飽きられてしまい妻になんとか養ってもらっている状態。しかし未来の使者から言われた、世界を救う今日を作るという使命と有名になりたいという自意識から未だ音楽の道を諦めきれない彼らにはかつて世界を救う筈だった存在としてターミネーター3のジョンコナーを想像すればわかりやすい。もちろん彼らの青春時代からの夢だ 捨てられないのも無理はない

しかしズルが始まると彼らの作中での年齢も相まって社会的責任から逃げ一時しのぎで全てを乗り切ろうとしているダメな大人にしか見えない。 正直見ていて辛い。
確かに1作目の世界史の試験がヤバイよ ならば多少ズルをしても「そういうことしたした」
「夏休みの宿題を登校日に全力で写したりしたなあ」と微笑ましい気持ちにもなるが今作のそれは全く違うのだ。彼らは人生において一世一代の場面に出くわしていルわけで
これに失敗すれば自分たちの音楽人生どころか世界が滅亡というミッションを背負った中年が、プレッシャーからの逃避を行うのはまだ理解できないこともない。
 そこから自分たちで作るしかないと目覚めると思うじゃないですか。全く目覚めるなんてことはなかった。少しは努力しても良いですし、彼らが作ってきた曲の中にヒントがあってなんてこともなく楽曲を作ったりしない。
過去にタイムトラベルして偉人と曲を作ったりもしない。

目覚めるどころか世界を救うためだし、

未来で自分たちが作ったのだからパクリじゃねえし

と言い訳を続けるばかりか5年後 10年後と
未来世界の自分たちがどんどんダメ人間になっていくのを見て憤慨しています。
それはいまのお前たちがアラフィフでのび太真っ盛りなせいだよと僕自身が憤慨していることはさておき
中年になっても努力というものを知らない彼らに 「大人になれない大人」の恐ろしさを叩きつけられ心底辛い気持ちにさせられた。この映画は50代付近の方々に社会の厳しさを伝える映画だったんでしょうか。ラストを見た人はそうではないことがわかるでしょう。

 

史上最高のバンドしかし高まらぬグルーヴ

2つ目は娘たちの冒険の方が割と親たちのダメダメ感もといクズ感もなくハツラツとしている分まだ見ていられるのだがこちらも先ほどの問題点が適用される。
2人のバックバンドとなる助っ人をタイムマシンで探しにいく。
彼女らは音楽で次々とモーツァルトやジミヘンらを仲間に率いて大冒険を繰り広げる。

この2人はビルテットと同様に仲良しでお父さんのピンチを助けなきゃーという無邪気さが前作の2人を見ているような感覚となりニコニコするのですが、このタイムトラベルの構造はまさに第1作と同じプロットなばかりか映画の残り尺77分で行うという構成な前述の要素方過多の状況のため仲間にするスピードがとんでもなく早い上に、各時代での大冒険や歴史上の偉人が現代にいくことで起こるコメディ(ナポレオンがウォータースライダーにどハマり みんなでショッピングモールで大暴れ)や時代問わず仲良くなっていく過程などが抜けているため事務的なものと言わざるを得ないところが非常に残念だ。

そして最後に普通に1作目を見ていた方で今作に未来世界で全く登場しなかった未来のオブジェクトがあったのに気づいた方はおられたでしょうか 

そう銅像だ。
未来世界でビルとテッドの功績をたたえた銅像が登場していない。

消された銅像未来の英雄は誰のもの?

当然意図したものではないと思われるが、これによりラストに非常に問題を抱えた映画であることが当然のように思い出される。

そう、少しだけ言及したが、ラストの曲は彼らが曲を作ったわけでもなければ、最後の最後に少しギターを添えただけ。果たしてこれが世界を救い英雄として後世に称えられ銅像まで作られた男たちに相応しい活躍か?

そう言われればはっきり言って違うことは自明だろう。彼らの伝えたいメッセージとは一体なんだ。信じていれば娘がなんとかしてくれるか?きっと自分たちが冴えないのは未来からの使者が来てくれないからと言ったところか。
全2作らしいビルとテッドの2人をただただ見たかったファンの期待にしか答えるつもりのない志の低さすら垣間見える。努力のようなものに不誠実な映画になってしまった。
 
未来人もそろそろ彼らを騙したり甘やかすのをやめ真実を話すべきなのだろう。
本当に称えられるべきは残念ながらお二人ではないですよ。

ビルとテッドは世界を救った英雄の父親たちでしかなく

未来にも伝えられる名言を最初に口にした2人でしかない。

これで未来世界でビルとテッドが称えられるなら、それこそとんだお笑いである
彼らは事あるごとにズルをして自分たちに都合が良い未来にし娘達の功績を自分たちのものとして享受するまさに2作目の悪党デノモロスのような人生を送っているではないか。
タイムトラベル映画の定番的なドツボに見事ハマり過去2作の矛盾を多く孕んでしまった本作だがどうせ大丈夫。未来は不確実だしパラレルワールドだし


最後に勝ったやつが全てを思うままにできるのだから。そう牢屋の鍵を手に入れたあの時のように

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