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リスボンから見るイギリス食文化

ブラジルに行って日本の良さを知る

この言葉を思い出させたのはリスボン4日間の旅行の終盤、レストランの料理。

旅の中で特に印象に残ったのが、エビクリームコロッケとポルトガル伝統の味、スープ。
この二つの料理を口にした瞬間、不思議と日本の懐かしい味を感じ、イギリスで1年間暮らしてきた私にとって、これは驚くべき体験であり、今回1番の衝撃であった。
忘れかけていたこの旨味や深みのある味が、なぜポルトガルではこんなにも強く感じられたのか、その疑問が、イギリス食文化について改めて考えるきっかけとなる。

旨味と日本の懐かしさ

たとえば、エビクリームコロッケのクリーミーさと海鮮の旨味は、日本のカニクリームコロッケを彷彿させるし、ポルトガルの伝統的なスープであるカルド・ヴェルデには、シンプルながらも深みのある味わいがあり、これも出汁を使った日本の味に通じるものを感じる。

この懐かしさは単なる偶然なのか、それとも、ポルトガルと日本の食文化には何か共通点があるのか気になる。

実際に、ポルトガルはかつて日本と交流を持っていた国であり、その影響が料理にも残っているのかもしれない。特に、日本人が親しむ旨味を大事にする文化が、ポルトガル料理にも感じられる。

イギリスで感じなかった「深み」の理由は

一方、1年間イギリスで暮らし、さまざまな料理を試してきたが、正直に言って、ポルトガルで感じたような味の深みをイギリスではあまり感じることがない。これは、イギリスの食材の調達の難しさや、料理の調理法の違いに関係しているのだろうか。
イギリスは多国籍な料理が楽しめる一方で、伝統的なイギリス料理はシンプルで素材そのものの味を重視するため、日本人が慣れ親しんでいる旨味の濃い料理とは異なる印象を受ける。

さらに、イギリスでは、戦後の食糧不足の影響もあって、料理が質素であるという歴史的背景もあるらしいが、近年は改善されている。

しかしイギリス、ポルトガル間には、単に料理の味や素材の違い以上の要因があるように思う。

ポルトガルでは、街のどこでも気軽に美味しい料理を楽しむことができた。
これは、ポルトガルの料理に対する情熱や、食材の豊富さ、料理の歴史が反映された結果かもしれない。
一方、イギリスでは、特定のレストランや国際料理を選ばない限り、一般的な食事体験はどこか淡白に感じられることが多い気がする。

これは、イギリスが多文化社会であり、様々な国からの料理が集まる一方で、素材や調味料の豊かさに限界があることも影響しているはず。
また、イギリスのレストランでの食事は、ポルトガルや日本のような食を中心にした楽しみ方が少なく、食事そのものが日常の一部として扱われている感覚もあった。

そんな印象であったが、ポルトガルでの旅を通じて、イギリスの食文化に対する見方は少し変わる。

時には美味しくないと言われるイギリスの食文化も、その多様性にこそ魅力があるはずだ。
世界中の料理が集まり、様々な食文化が共存することは料理そのものの深みではなく、異なる文化との融合によって新しい味わいを生み出しているのかもしれない。

例えば、友人と何度か食事に行くとベジタリアン料理によく豆腐が代用されていることに気づく。

肉を欲している私からすると豆腐では物足りないが、肉を食べない人にとって改善された料理かもしれない。

出汁や味付けに魚介や肉の旨みを取り入れるポルトガル料理はベジタリアン向けではないが、私たち日本人にとってはまさに求める美味さだ。

酒豪からしたらノンアルコールビールなんて飲めたもんじゃないかもしれないが、一滴も飲めない私からすると楽しめる存在である。

このように一方から見ると否定的な印象でも、もう一方から見るとそこに価値がある。

イギリス、特にロンドンは世界中から集まる文化、人種で構成されていて、遠い離れた一アジアの国日本から来たとしても、いくらでも日本料理用の材料は手に入るし、レストランも存在する。

お金の問題はさておき

この豊富な選択肢と自分達は常に選ぶ側であることを再認識できた今、これから出会うイギリス料理が楽しみで仕方ない。

いや、イギリスで食べるネパール料理かもしれないし、インド料理かもしれないし、ギリシャ料理かもしれないし、日本料理の可能性だってある。


どうしてイギリスでこれといった郷土料理とで会えないのだろう
どうしてどこに行っても美味しいとは感じられないのだろう
諦めかけていたこの疑問と初めてイギリスの外に出たタイミングで向き合えたことはとても嬉しい出来事になった。

2024.09.24




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