デキる担当者は営業活動を3フェーズに分けている|3年目のカベ
あなたの営業活動は「科学的」ですか?
この問いに自信を持ってYESと答えられる銀行員は多くないでしょう。
財務・金融の知識は研修で教え込まれるものの、肝心の営業手法については、「現場で身に付けるもの」と言われて放り出され、「ガラパゴス営業」になっていませんか?
ここでは、銀行の営業(法人・個人富裕層)を体系的に身に付けていただく上でベースとなる考え方と具体例を解説します。
普段の活動に照らし合わせてみてください。
▷スポーツに例えると
まずはたとえ話から入りましょう。みなさんの中にはスポーツ経験や文化系でも一生懸命取り組んできた方も多いと思いのではないでしょうか。そうした経験に例えると、この後の話がスッと入ってくると思います。
サッカーを例にとります。
あなたはいま自陣でボールを奪いました。
ゴールを決めるにはどうしますか?いきなりゴールに向けてロングボールを蹴るでしょうか?
もちろん、そうやってこぼれ球を拾うという作戦もありますが、確度は低そうです(試合終了直前に負けているチームが追い込まれて取る戦術ですね)。
まずはバイタルエリアとよばれるゾーンに、「いかに有利にボールを運ぶか」を考えます。
例えると「久保健英に前を向かせてボールを持たせる」ようなイメージです。
バイタルエリアから先は、様々なパターンの攻撃が展開できます。
サイドをさらにエグるもよし、ポストプレーもよし、ミドルシュートも打てるでしょう。
また、そこまでいくと、ディフェンスの選手たちも攻撃参加して人的リソースをかけて点を取りにいきます。
1本目のシュートが外れても、こぼれ球を全員が拾いにいって、セカンドチャンスが生まれます。
営業活動もこれと同じです。
00|4つの「不」
営業活動の場合は、グラウンドに引いてある白線の代わりに、長く使われている「4つの『不』」という境界線があります。これは、どんな営業活動にも共通する、あなたが突破しなければならない壁を表現したものです。
それは「不信」「不要」「不適」「不急」です。
不信:担当者や銀行が信用できない、という壁
不要:当社には必要ない、という(食わず嫌い的な)壁
不適:提案は当社(わたし)には合わない、という壁
不急:今すぐ実行・採用する必要はない、という壁
営業活動とは、上記の4つの壁を突破することとイコールです。
では、それをいつ、どのように突破すればいいのでしょうか?
あなたの普段の営業を以下の3つのフェーズに分解して考えてみてください。
01|日常活動(リレーション)フェーズ
02|案件獲得(ソリューション)フェーズ
03|契約・実行・フォローフェーズ
01|日常活動(リレーション)フェーズ
このフェーズでは、4つの不の「不信」と「不要」を突破を目指します。
端的に言うと、「あなたから提案があった場合は、当社のことを本当に考えた良い提案のはずだ」と相手に思ってもらえるレベルの信頼関係を築くことに向けて活動します。
抽象的ですね。そこで、このフェーズでは『顧客の第一想起をとること』をゴールにして行動するとアクションが取りやすいと言われています。
第一想起とは、何か企業としてアクションを起こそうとするとき、情報収集をするとき、その他困ったら「まずはあなたを頼る」というポジションのことです。
特に、あなたの行動・言動・知識・顧客理解は、顧客が最も信頼に足る人物として磨かれていますか?
不安な人は以下を参考にしてみてください。
▷ベース行動のチェックポイント
行動のチェックポイント
✓ クイックレスポンスをする
✓ 独善的でなく顧客にとって有益な情報提供をする
✓ 相手の職位によって対応を変えない
言動のチェックポイント
✓ 当社のヒト・モノへの関心を示す
✓ 問合せに対しては3手先まで先回りして考えて対応する
✓ 決めつけず、押し付けない
知識のチェックポイント
✓ 教科書的ではなく実務的な知識を駆使している
✓ 顧客が興味を持っているであろう知識を常に収集している
✓ 難解な話でもかみ砕いて説明できる
顧客理解のチェックポイント
✓ 経営者から沿革、理念と今後を聞いている
✓ 商流図を作成して共有している
✓ 固有名詞(大口先・商品名など)で話ができる
▷具体的なリレーション構築活動例
では、上記を踏まえた上で、どんな活動があるか簡単に整理しておきます。これらを、1社(1人)ごとに検討してみてください。
情報提供
✓ 未体験の情報(海外・M&Aプロセスなど)
✓ 時事情報(補助金・助成金、業界トレンド、相場)
✓ 他社での成功事例(販路拡大・コスト削減・採用・節税など)
✓ ビジネスマッチング先
情報収集
✓ 実務における不合理性(コスト削減の余地はないか?)
✓ 事業拡大におけるネック
✓ 社内関係性(案件獲得へのネックはないか?)
✓ 商品開発や新規事業計画
✓ 他行競合情報
また、このフェーズで、収集しておくべき情報についてはSPIN営業術が有用ですので、少し解説しておきます。
▷SPIN営業術とは
英国の ニール・ラッカムが発表した「SPIN Selling(1988)」で提唱された営業方法です。
SPIN営業は、Situation(状況質問)▶Problem(問題質問)▶Implication(示唆質問)▶Need payoff(解決質問)の順に4つの質問を顧客に投げかけ、顧客自らに自身の潜在ニーズに気づいてもらう手法です。
①状況質問:〇〇はいかがですか?
まず顧客の立場、現状について共通の発射台をつくることが目的です。業務状況や、業務の遂行方法についての質問を行いましょう。
②問題質問:ということは、ひょっとして〇〇に課題を感じていませんか?
状況質問の回答を踏まえて、「ここに問題があるかもしれない」と仮説を立てたうえで質問を行います。
③示唆質問:このままだとどうなってしまいますか?
示唆質問は、問題を解決しないことによって起こり得る損失に対して解決策を講じなければならない!と認識してもらうためのものです。
④解決質問:もし、〇〇の問題が解決したとしたらいかがでしょうか?
その問題を実際に(自行のソリューションによって)解決できたらどうなるか、についてイメージしてもらうための質問です。
詳しく知りたい方は、こちらをお読みください。
さて、リレーション構築が進んできたら、案件獲得フェーズに移行します。
▷フェーズ移行トリガーと具体的なフレーズ
まずは、どのタイミングで案件獲得フェーズに移ればいいかが分からない方もいると思いますので、そのトリガーについて整理しておきます。
もう少し具体的に書くと「顧客が提案を受け入れる準備ができたタイミングはいつか?」ということですが、まさか「準備できましたか?」と聞く訳にもいきません。
ここで意識してほしいのが、「顧客シグナル」と「テスト(クロージング)」という概念です。
顧客シグナルとは、顧客が提案待ちの状態になっているシグナル(信号)のことです。以下のようなことを言われた記憶はありませんか?
顧客シグナルの例
✓ 「何か、いい方法ありますか?」
✓ 「今日は何か、提案持ってきた?」
✓ 「で、どうすればいいの?」
✓ 「何かお返ししないとね。」
また、なかなか自分から上記のように言ってこない顧客もいるので、あなたから動く場合に活用してもらいたいのが、テスト(クロージング)です。
テスト(クロージング)の例
✓ 「〇〇がノーリスク・ノーコストで解決できるとしたらやりますか?」
✓ 「もし〇〇がクリアできたら、ご検討いただけますか?」
✓ 「もしご検討されるとすると、どのような決裁プロセスになりますか?」
このように、英語で言うと「If~」の構文になることがほとんどです。
これらを駆使して、いよいよトリガーを引く場合、言葉に詰まっていませんか?ここで、あなたの定番キーフレーズがあるとフェーズ移行がしやすくなります。いくつか例を挙げますので、言い回しごと覚えて使ってください。
キーフレーズ例
✓ 「そういうことであれば、一度〇〇の条件をお持ちしてもよろしいでしょうか?」
✓ 「もし、ご興味あれば稟議を取っておきますが、いかがでしょうか?」
✓ 「詳しいご案内をさせていただきますので、近々に改めてご予定いただいてよろしいでしょうか?」
02|案件獲得(ソリューション)フェーズ
さて、無事にフェーズを移行できました。
ここでは「不適」「不急」の突破を目指します。
細かい話をすると、「不適」までは確実に突破(シロクロをつける)し、「不急」については3割程度突破できれば十分です。なぜなら、「不急」を突破するためには、様々な外部要因があり、コントロールしきれないと考えておくべきだからです。
▷シンプル・イズ・ベスト
このフェーズでは、工数をかけず、直線的にゴール(=契約・実行)を狙います。様々な手を繰り出していたリレーション構築フェーズとはその点で異なります。
準備に時間をかけすぎることなく、勘所をしっかり押さえてテンポよくいきましょう。
提案が拡散しないように、論点を1~3つに絞った状態で話します。
リレーション構築さえしっかり出来ていれば、今後、何度でもチャンスは来ます。そういう意味では、決め切ることにこだわり過ぎないことも重要です。
▷クロージングのポイント
普通のコミュニケーション能力があれば、ここまでのことがしっかり出来ていれば、3割程度は案件獲得できているでしょう。
であれば、銀行の営業担当としては全体のトップ20~30%には入っているはずなので、営業としてのキャリアを極めるつもりがない方は、ここで十分です。
しかし、もし、あなたが営業としてのキャリアを極めていきたいのであれば、クロージング率を5~7割まで引き上げるテクニックがあります。
別noteでご紹介しますので、よろしければご参照ください。
(ただいま準備中です)
03|契約・実行・フォローフェーズ
ではいよいよ契約・実行・フォローフェーズです。
単なる書類のデリバリーや資金移動、約定、商品導入だと思っているなら、それは大きな間違いです。
ここでは、そうした事務的な面は完璧に実施することは当然のこと。(ヘタを打つと「不信」からやり直しです。)
実は、「販売した瞬間は、販売のチャンス」というのは業種問わず、昔から言い伝えられてきた営業のポイントなのです。
相手は、あなたからの提案を受け入れ、まさに実行し、貸金なら入金、運用なら証書などに形を成しています。
このとき、実行したことに対し「肯定的な言動」を2~3回繰り返し伝えましょう。顧客は大きな決断をして昂っているプラス少し不安になっているかもしれません。まずは、満足度を向上させましょう。
そして、以下の2点を確認しておいてください。
✓ 同じソリューション(プロダクト)の追加販売ニーズ
✓ 別のソリューション(プロダクト)の販売ニーズ
フェーズとしてはまた01日常行動に戻るわけですが、この2つに当たりがついた状態で戻ると、進めやすさが大きく変わってきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
営業は「科学」です。これらのフェーズを活用した行動管理手法などもご案内していきたいと思いますので、引き続きご愛読ください。
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