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ピアノの音

風に揺れる木の葉の隙間から光が溢れるように
どこかから聞こえたピアノの音

辺りを見回すとト音記号がデザインされた
綺麗なアパートの上階から聞こえている

どんな人がピアノを弾いているのだろう
そんなふうに思いながらも
そのピアノの音が街の騒音に飲まれるように
僕の意識も日常に飲まれていく

それからその場所を通るたびに
ピアノの音を探すようになった
音楽のことはドレミファソラシドくらいしか
わからないけど
いつも聞こえるそのメロディが好きになっていた

いつの日か彼か彼女かも分からないその人の
ピアノの演奏を直接聞いてみたいと思うようになった
調べようもないのだけれど

でもある日
ドレミファソラシドのソの音が滲んでいた
そんな気がした

その後ピアノの音が聞こえることはなくなった

しばらくはそのピアノの音を耳が探したけれど
僕の意識もまた日常に飲まれていく

ただピアノを見るたびに見たこともないその人の
残像と記憶のメロディが鳴るようになった

ドレミファソラシドのソの音が滲んでいた訳も知らないまま

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