![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141973767/rectangle_large_type_2_87f1ec48b986a6e0cf011d702fd2a0e6.png?width=1200)
Photo by
yaneura_itoko
ピアノの音
風に揺れる木の葉の隙間から光が溢れるように
どこかから聞こえたピアノの音
辺りを見回すとト音記号がデザインされた
綺麗なアパートの上階から聞こえている
どんな人がピアノを弾いているのだろう
そんなふうに思いながらも
そのピアノの音が街の騒音に飲まれるように
僕の意識も日常に飲まれていく
それからその場所を通るたびに
ピアノの音を探すようになった
音楽のことはドレミファソラシドくらいしか
わからないけど
いつも聞こえるそのメロディが好きになっていた
いつの日か彼か彼女かも分からないその人の
ピアノの演奏を直接聞いてみたいと思うようになった
調べようもないのだけれど
でもある日
ドレミファソラシドのソの音が滲んでいた
そんな気がした
その後ピアノの音が聞こえることはなくなった
しばらくはそのピアノの音を耳が探したけれど
僕の意識もまた日常に飲まれていく
ただピアノを見るたびに見たこともないその人の
残像と記憶のメロディが鳴るようになった
ドレミファソラシドのソの音が滲んでいた訳も知らないまま
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?