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雨音が包む照れ笑い

君と初めて二人きりになったのは
帰り道を濡らす梅雨の雨が
憂鬱な気持ちとは裏腹に
気持ちよさそうに跳ね返っていた6月の日

君の持つ傘にぽつぽつと音がする
それとは正反対のしんしんとした二人の無言
私は君に触れるか触れないかの距離で
気のせいかもしれない君の体温を感じていた

もっと小さい傘だったら良いのにと思いながら
ただ二人だけという事実が嬉しくて
ただ二人だけという時間が嬉しくて

もう少しで君の家との分かれ道
『ありがとう』の言葉を準備する
あと少しで君の家との分かれ道
声がちゃんと出るか心配だ

そんな心配をよそに君の足は
私の家に迷いなく進む

『家まで送るよ』

もう少し続きそうな無言の時間は
君と私の照れ笑いを
雨音が包む特別な時間になった

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